お盆が過ぎても、まだまだ高い気温と強い紫外線に悩まされる日本の夏。紫外線対策をしていたつもりでも、お肌の“シミ”が気になり始めた方も多いのでは? 実はシミの種類によって原因や治療法が異なります。シミの特徴を知ることで、将来のシミを予防したり、今あるシミへの適切な対策につなげたりすることができます。代表的なシミの種類と、それぞれの原因・対策について分かりやすくご紹介します。
2015年愛媛大学医学部医学科卒、同年愛媛県立中央病院に入職。20年湘南美容クリニック入職、21年には湘南美容皮フ科内科クリニック六本木院 院長就任。翌年、痩身エキスパートドクター就任。25年からは湘南美容クリニック新宿本院副院長に就任に加え、痩身エキスパートドクターに。26年より皮膚科教育担当としても活躍。日本美容外科学会(JSAS)正会員、日本美容皮膚科学会正会員、日本抗加齢医学会正会員。
●シミはなぜできる?メラニンとターンオーバーの仕組み
シミとは、肌の一部にメラニン色素が蓄積し、周囲よりも濃く見える状態のことです。メラニン色素は、紫外線などから肌を守るために、皮膚の奥にある「メラノサイト」という細胞でつくられます。通常は、肌のターンオーバー(新陳代謝)によって古い角質と共に自然に排出されますが、紫外線などの影響でメラニンが過剰につくられたり、ターンオーバーが乱れたりすると、肌に残ってシミとして目立ちやすくなります。
●30代からシミが気になるのはなぜ?
30代頃からシミが目立ち始めるのは、紫外線ダメージの蓄積に加え、加齢によって肌のターンオーバーが乱れやすくなるためです。若い頃から蓄積してきた紫外線ダメージが時間をかけて表面化し、メラニンが排出されにくくなり、シミとして目立つようになるのです。
●女性ホルモンと肝斑の関係は?
さらに、30代は妊娠・出産などによって女性ホルモンのバランスが大きく変化しやすい年代でもあります。シミの中でも「肝斑(かんぱん)」は、女性ホルモンの影響を受けやすいと考えられており、妊娠・出産などで女性ホルモンの変動が起こりやすい30代や、ホルモンバランスが大きく揺らぐ更年期の時期に、肝斑が目立ち始めることがあります。一方で、肝斑は他のシミと違って更年期を過ぎて閉経すると、自然と薄くなったりするケースもあります。
また肝斑は紫外線の他、摩擦や刺激によって悪化する場合があるため、洗顔やスキンケアでは肌を強くこすらないことが大切です。シミが気になるからといって、ゴシゴシ洗ったり、自己判断で過度なケアを重ねたりすると、かえって炎症や色素沈着を招く可能性も。
シミには様々な種類があり、それぞれ原因や適した対処法が異なるため、まずは自分のシミの特徴を正しく知ることが適切なケアへの第一歩です。
シミにはいくつかの種類があり、それぞれ原因や特徴が異なります。そのため、「シミ対策」用の化粧品でも、種類によっては十分な効果が得られないことがあります。適切な予防やケアを行うためにも、まずは自分のシミの特徴を知ることが大切です。
●老人性色素斑…紫外線の蓄積などでできる代表的なシミ
・原因
長年蓄積した紫外線ダメージが主な原因。
・特徴
数mm〜数cmほどの大きさで輪郭(境界)がはっきりしている。顔やデコルテ、手の甲、前腕など、紫外線が当たりやすい部位にできやすい。でき始めは薄い茶色だが、次第に濃くはっきりしてくる。
・ケアや予防方法
日焼け止めの使用を徹底する。美白化粧品も予防目的であれば有効。シミの状態によっては、レーザー治療や液体窒素、IPL光治療(フォトフェイシャル)などで改善が期待できる場合も。
●炎症後色素沈着…ニキビや傷・摩擦などの炎症後にできるシミ
・原因
ニキビや虫刺され、湿疹・かぶれ、やけどや傷、繰り返す摩擦などで肌に炎症が起きた後にできる。
・特徴
赤茶色~茶色のシミが多く、ニキビ跡の他、ムダ毛を抜いた後の炎症による黒ずみや、シミ取りレーザーをした後に数カ月間、色素沈着が生じることがある。
表皮にできた色素沈着の場合は、一般的に肌のターンオーバーによって時間と共に薄くなる。その一方、炎症が強い場合や傷が大きかったり深い場合は、ターンオーバーができない真皮まで色素沈着が及ぶため、長期間シミが残ったり、消えにくくなったりすることがある。
・ケアや予防法
比較的、美白化粧品が効果を発揮しやすいシミ。ターンオーバーを促す目的で角質ケアが有効な場合もあるが、スクラブなど刺激の強いセルフピーリングは、かえって炎症を悪化させる恐れもある。ピーリングを行う場合は、医療機関に相談するのがおすすめ。炎症が長引くと改善しにくくなることもあるので、早めに適切な炎症の治療を行うことが大事。
●雀卵斑(そばかす)…遺伝的な要因が大きいシミ
・原因
遺伝的体質の要因が大きいシミ。
・特徴
幼少期から現れ始めることが多く、鼻を中心に両頬やまぶた、額などに小さな薄茶色のシミが点状に散らばる。夏は濃く、冬は薄くなる傾向がある。
・ケアや予防法
遺伝的な要因が大きいため、美白化粧品だけで消すことは難しい。レーザー治療やIPL光治療が有効な場合もあるが、再発することもある。
●肝斑…女性ホルモンや紫外線・摩擦などが関係するシミ
・原因
女性ホルモンの影響が大きいシミと考えられているが、紫外線や摩擦による刺激、皮膚の老化など、複数の要因によって引き起こされる。
・特徴
境界がはっきりした点状のシミとは異なり、もやもやと広がる薄茶色~褐色のシミが左右対称に現れる。頬骨のあたりや口元などにできやすい。老人性色素斑やADM(後天性真皮メラノサイトーシス)など、他のシミとの見分けが難しい場合も多く、実際には肝斑と他のシミが混在するケースもある。
・ケアや予防法
トラネキサム酸の内服薬や外用薬が効果的。肝斑は刺激によって悪化しやすいため、一般的なシミ取りで用いられる強いレーザー治療は適さない。一方で、レーザートーニングのような低出力レーザーや、極細の針で高周波を照射するニードルRFなど、肌状態の改善を目的とした治療が選択されることもある。
●脂漏性(しろうせい)角化症…盛り上がりやざらつきが特徴のシミ
・原因
加齢や紫外線、摩擦などが影響して生じる。老人性色素斑から生じることもあるが、それだけが原因ではなく、老人性色素斑のない部位に現れることもある。
・特徴
表面が盛り上がり、イボのように見えるシミ。イボのように明らかに盛り上がっていない場合でも触るとザラザラしている。顔の外側など、紫外線をよく浴びる部位や手の甲、腕の他、背中など体幹にもできることがある。
・ケアや予防法
皮膚そのものが変化しているため、美白化粧品などのセルフケアで改善することは難しい。医療機関では、レーザー治療や液体窒素による凍結療法、電気メスによる切除などが行われる。
●ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)…頬などにできる灰色や茶色のシミ
・原因
真皮内でメラニンが増えることで生じると考えられているが、発症する詳しい原因はまだ明らかになっていない。
・特徴
20歳以降に現れることが多い、茶色や灰色で3〜5mm程度の斑点状のシミ。頬の高い位置を中心に現れやすく、肝斑や老人性色素斑、そばかすなどと見分けがつきにくいこともある。また、肝斑や老人性色素斑などが同時に存在するケースもある。
・ケアや治療法
ADMは真皮にあるメラニンが関係しているため、美白化粧品などのセルフケアだけで改善することは難しい。改善を目指す場合は、真皮層まで届くQスイッチレーザーやピコレーザーなどのシミ治療用レーザーが行われる。
<代表的なシミ 6種類>
シミの種類 |
原因 |
特徴 |
ケアや予防法 |
老人性色素斑 |
紫外線ダメージの蓄積 |
輪郭がはっきりした茶色のシミ。顔や手の甲などにできやすい |
日焼け止めで紫外線対策。レーザーやIPLなどで治療できる場合も |
炎症後色素沈着 |
ニキビや傷、摩擦などによる炎症 |
赤茶色~茶色のシミ。時間とともに薄くなることもある |
炎症を早めに治療。美白化粧品の効果は感じやすい |
そばかす |
遺伝的な体質 |
幼少期から現れ、鼻を中心に頬などに小さなシミが点状に散らばる |
美白化粧品での改善は難しい。レーザーやIPLで治療できる場合も |
肝斑 |
女性ホルモン、紫外線、摩擦など |
頬などに左右対称に、もやっと広がる薄茶色~褐色のシミ |
トラネキサム酸が効果的 |
脂漏性角化症 |
加齢、紫外線、摩擦など |
盛り上がりやザラつきがあり、イボのように見える |
セルフケアでの改善は難しい。レーザーや液体窒素などで治療 |
ADM |
詳しい原因は不明 |
頬などに灰色~茶色の斑点が現れ、他のシミと見分けにくい |
美白化粧品での改善は難しい。レーザー治療が中心 |
●シミ対策の基本は毎日の紫外線対策
シミ対策では、紫外線から肌を守ることが何より大切です。日焼け止めを適切な量で毎日使用することが、今あるシミの悪化や、新しいシミの発生を防ぐことにつながります。
<日焼け止めの「SPF」と「PA」の違いと選び方>
日焼け止めには「SPF」と「PA」という表示があります。それぞれ防ぐ紫外線の種類が異なるため、意味を理解して選びましょう。
・SPF
肌に赤みや炎症(日焼け)を引き起こし、シミやそばかすの原因となるUV-B(紫外線B波)を防ぐ効果を示す指標です。「SPF50」は、一定条件下で日焼けが始まるまでの時間を、何も塗らない場合と比べて50倍遅らせる目安とされています。
・PA
肌の奥まで届き、シワやたるみなど光老化の原因となるUV-A(紫外線A波)を防ぐ効果の目安です。「PA+」~「PA++++」で表示され、「+」の数が多いほど防御効果が高くなります。
<日焼け止めの効果を最大化させる塗り方・塗り直し方>
・日焼け止めはシーンに合わせて選ぶ
日焼け止めは、生活シーンに合わせてSPFやPAを選ぶことが大切です。日常生活であればSPF30程度でも十分な場合がありますが、屋外でのレジャーやスポーツなど、強い紫外線を浴びる場面ではSPF50・SPF50+など、防御力の高いタイプを選ぶとよいでしょう。
・十分な効果を得るには「使用量」が重要
SPFやPAの効果は、1㎠あたり2mgの日焼け止めを塗ることを前提に測定されています。顔全体では、ローションタイプは500円玉大、クリームタイプはパール2粒程度が1回の使用量の目安です。伸びがよい製品は塗る量が少なくなりがちですが、製品に記載された使用量通りに塗ることで効果が期待できます。
・塗り直しをこまめに行い、他の紫外線対策も組み合わせる
日焼け止めは汗や皮脂、衣服やマスクとの摩擦などで落ちやすくなります。暑い季節に長時間外出する場合は、2時間程度を目安にこまめに塗り直しましょう。また、日傘や帽子、アームカバーなどで物理的に紫外線を防止すると、より効果的です。紫外線は一年中降り注いでいるため、夏だけでなく冬も継続して対策することが大切です。
・室内でも紫外線対策を
紫外線にはUV-AとUV-Bがあります。特にUV-Aは波長が長く、窓ガラスを通過して室内にも届くため、日中に窓際で過ごす時間が長い人は、室内でも日焼け止めを使用することがおすすめです。
●美白化粧品はシミ予防にどう役立つ?
美白化粧品は、メラニンの生成を抑え、シミやそばかすを防ぐことを目的としたスキンケアです。シミの原因となるメラニンは、1年を通してつくられているため、紫外線が強い季節だけでなく、年間を通して継続して使用することをおすすめします。
既にできたシミへの効果には限界があるため、新たなシミを予防するためのケアとして取り入れましょう。
<代表的な美白成分と働き>
美白化粧品の働きには主に以下の3つのタイプがあります。代表的な成分と共にお伝えします。
①メラノサイトに情報伝達物質が届かないようにするタイプ
紫外線を浴びると出る「メラニンをつくれ」という情報伝達物質を、メラノサイトに届かないようにする。
・トラネキサム酸(※1) など
②メラニンの生成を防ぐタイプ
メラニンをつくる際に必要な酵素「チロシナーゼ」の働きを抑えて、メラニンの生成を防ぐ。
・ビタミンC誘導体
・アルブチン
・コウジ酸
・ハイドロキノン(※2)
・グルタチオンなど
③メラニンを別の物質に還元したり、ターンオーバーを促すタイプ
既につくられたメラニンを別の無色の物質に還元したり、ターンオーバーを促してメラニンが垢として排出されるのを助けたりする。
・ビタミンC誘導体
・ナイアシンアミド
・L-システイン など
※1)トラネキサム酸:市販薬と処方薬の成分は同じですが、服用量や安全管理が異なります。市販薬は1日750mg程度を目安とする製品が多く、医療機関では最大2000mgとした上で症状に応じた処方がされています。またトラネキサム酸には血栓症のリスクがあるため、市販薬では2〜3カ月程度で休薬が推奨されています。一方、医療機関では医師の管理のもと、必要に応じて継続の可否を判断します。
※2)ハイドロキノン:高濃度の物は医療機関で処方されることがあります。また、濃度によっては刺激を感じたり、赤みやかぶれが生じたりすることもあるため、使用する際は用法・用量を守りましょう。
<美白化粧品を使う時のポイントと注意点>
美白化粧品は、「シミを消したい」という思いから強く塗り込んでしまいがちですが、摩擦は肌への刺激となり、肝斑や炎症後色素沈着などを悪化させる原因になることがあります。優しくなじませるように使用しましょう。
いずれの成分を使用した場合も、使用中に赤みやかぶれなどの肌トラブルが現れたら、いったん使用を中止し、必要に応じて医療機関へ相談してください。
●シミを悪化させないために肌への摩擦を減らす
肌への摩擦は、シミや色素沈着を引き起こしたり、悪化させたりする原因になることがあります。洗顔は泡で洗うことを意識し、スキンケアの際は、肌を強くこすらず優しく触れることを心がけましょう。
<摩擦につながりやすい例>
・ゴシゴシと強く洗顔する
・コットンやタオルで強くこする
・スキンケア用品を力強く塗り込む
●食事・睡眠・禁煙など生活習慣を改善して、お肌を整えよう
スキンケアと同時に、生活習慣による「インナーケア」もお肌を健康な状態に保つには大切です。
<食事で肌の健康をサポート>
食事だけでシミを改善・予防することは難しいものの、バランスのよい食事は、肌を健康に保つための土台づくりにつながります。タンパク質やビタミンA・B・C・Eなどは肌のコンディションを整える上で大切な栄養素です。
積極的に摂りたい栄養素と食品
・タンパク質…豚肉・サケ・牛乳・納豆・卵など
・ビタミンA…レバー・ウナギ・にんじん・ほうれん草など
・ビタミンB群…豚肉・玄米や全粒粉のパン・マグロ・カツオなど
・ビタミンC…レモン・ブロッコリー・じゃがいも・ピーマンなど
・ビタミンE…かぼちゃ・ナッツ類・魚の肝や魚卵など
<十分な睡眠で肌の回復を促そう>
睡眠は、紫外線などによるダメージから肌を回復させ、健やかな状態を保つために欠かせません。肌本来の働きを支えるために十分な睡眠を心がけましょう。
<喫煙は肌老化の一因に>
喫煙は、活性酸素の増加や血流の低下、ビタミンの消費などにより、肌の老化を進める一因になると考えられています。シミだけでなく、シワやたるみなどの肌老化を防ぐためにも、禁煙を心がけることが大切です。
できてしまったシミは、セルフケアだけで改善することが難しい場合があります。気になるシミがある時は、自己判断せず、医療機関でシミの種類を正しく診断してもらい、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
<シミをケア・治療する前に知っておきたい注意点>
●シミは〝見た目″だけでは種類を判別しにくい
シミにはこのようにいくつかの種類がありますが、見た目が似ているものも少なくありません。しかも、数種類のシミが同時に存在することも多いため、自己判断は難しく、経験豊富な医師でも、見た目だけでは判断が難しい場合もあります。そのため、「シミだと思っていたら肝斑だった」「肝斑だけだと思っていたら、老人性色素斑など別のシミも混在していた」などといったケースもあります。
●肝斑がある場合はシミの治療方法が異なる
肝斑は、一般的なシミ取りレーザーなどの治療が刺激となり、症状が悪化することがあります。そのため、肝斑が混在している場合は、一度に全てを治療するのではなく、まずは肝斑を改善・落ち着かせてから、他のシミ治療へ進むことが一般的です。
●レーザーによるシミ治療をする場合は紫外線にも注意
レーザー治療は1年を通して受けることができますが、紫外線を浴びる機会が多い人は、秋から冬にかけての治療がおすすめです。それは治療後に紫外線を浴びると、炎症後色素沈着が起こりやすくなったり、改善までに時間がかかったりすることがあるためです。
また、日焼けした肌では、IPL光治療などが肌そのものに反応し、やけどなどのリスクが高まることもあります。
一方で、日焼け止めや帽子などで十分な紫外線対策ができる場合は、夏でも治療を受けられるケースがあります。治療のタイミングは、ライフスタイルや肌の状態に合わせて医師と相談しましょう。
<医療機関で行われる主なシミ治療の例>
・レーザー治療
・IPL光治療
・ケミカルピーリング
・イオン導入
・トラネキサム酸などの内服薬
・美白外用薬(ハイドロキノンなど)
シミには様々な種類があり、それぞれ原因や適した治療法が異なります。既にできてしまったシミは、その種類に合った治療を受けることが大切です。一方で、新しいシミを増やさないためには、毎日の紫外線対策や摩擦を避けるスキンケア、美白化粧品などによる予防を続けることが欠かせません。
「できたシミは適切に治療し、新しいシミは予防する」。この2つを意識することが、シミの少ない健やかな肌を保つための第一歩です。