毛包炎(毛嚢炎)

毛包炎(毛嚢炎)

毛包炎(もうほうえん)とは、毛穴の奥にある毛根を包む部分(毛包)に起こる炎症のことで、毛穴が赤く盛り上がり、その中央には膿をもった水疱ができます。毛包は毛嚢(もうのう)とも呼ばれることから毛嚢炎ともいいます。

毛包のイメージイラスト

発症の原因は菌の感染で、傷からの菌の侵入に加え、免疫機能や皮膚のバリア機能の低下なども発症につながります。症状が軽い場合は、皮膚を清潔に保つことで自然に治りますが、痛みが強かったり治りにくかったりする場合は早めに皮膚科を受診しましょう。

監修プロフィール
巣鴨千石皮ふ科院長 こにし・まあや 小西 真絢 先生

日本皮膚科学会認定専門医。杏林大学医学部医学科を卒業後、東京医科歯科大学皮膚科に入局。その後、土浦協同病院や都立墨東病院などの皮膚科勤務を経て、2017年、生まれ育った巣鴨・千石エリアの地域医療への貢献を目指し「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。「目に見える異変は何でも相談できるホームドクター」を目指し、一人ひとりに寄り添った治療を心がけている。

毛包炎(毛嚢炎)について知る


毛包炎(毛嚢炎)の原因

毛包炎は、主に傷から菌が侵入し、毛包で炎症を起こして発症します。また、傷以外にも発症のリスクを高める要因があります。

●傷からの菌の感染
毛包炎の原因は菌の感染で、ひげそりやムダ毛の処理による傷などから毛穴に侵入した菌が、毛根を包んでいる毛包(毛嚢)に炎症を起こします。
炎症を起こす菌には次のようなものがあります。
・黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌
多くの場合は、細菌の黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌によって生じます。これらは皮膚などに生息する常在菌で、通常は無害なもの。中でも表皮ブドウ球菌は、皮膚を弱酸性の状態に保ったり、バリア機能を高めたりするため、「美肌菌」とも呼ばれています。
・マラセチア菌
真菌(カビ)のマラセチア菌が原因になることもあります。マラセチア菌は皮脂を分解する常在菌で、健康な人にとっては無害なものです。
・緑膿菌(りょくのうきん)
緑膿菌は湿った場所を好む細菌で、水回りに生息しており、日常生活において特に注意すべき菌ではありません。しかし、不衛生な入浴施設やプールでは、異常繁殖した緑膿菌に感染して毛包炎を起こす場合があります。この場合の毛包炎を温浴毛包炎(おんよくもうほうえん)と呼びます。

●傷以外にも発症につながる要因が
皮膚に目立った傷がない場合でも、次のことが発症のリスクを高めます。
・皮膚のダメージ
マスクや衣類による摩擦、医療脱毛におけるレーザー照射などで皮膚がダメージを受けると、バリア機能が低下して菌が侵入しやすくなります。
・免疫機能の低下
糖尿病の合併症やステロイド外用薬の使用、ストレス、睡眠不足、疲労などで免疫機能が低下していると、菌に抵抗する力も弱まります。
・不衛生な状態
皮膚を不衛生な状態にしておくと、菌が皮膚で異常繁殖したり毛穴が詰まったりするリスクが高まります。
・アトピー性皮膚炎や乾燥肌
アトピー性皮膚炎がある人は、皮膚が乾燥しバリア機能が低下しているため、毛包炎を発症しやすくなります。乾燥肌の人も注意が必要です。
・オイリー肌や高温多湿の環境
マラセチア菌は皮脂や高温多湿な環境を好みます。そのため、皮脂の分泌が過剰なオイリー肌の人、梅雨や夏など温度や湿度が高い気象状況、汗をかいたまま放置するなどといった条件で増殖しやすくなります。


毛包炎(毛嚢炎)の症状

●毛穴のある場所が赤く盛り上がり、その中央には膿をもった水疱ができる
毛包炎(毛嚢炎)は毛穴のある場所がポツポツと赤く盛り上がり(丘疹:きゅうしん)、その中央に膿をもった水疱(膿疱:のうほう)ができます。1つの毛包にできることも、同時に複数の毛包にできることもあります。基本的に軽い痛みを伴うことはありますが、かゆみはあまり感じません。
ただし、悪化すると痛みが強くなったり違和感が生じたりします。水疱がしこりになって痛みや腫れ、圧迫感がある状態を「せつ」と呼び、「せつ」が複数の毛包へと広がってつながり、より強い痛みや熱さを生じるようになると「よう」と呼ばれます。「せつ」は「おでき」「めんちょう」と呼ばれることもあります。

毛包炎(毛嚢炎)と「せつ」「よう」のイメージイラスト

●毛包炎は毛穴のある場所であればどこにでもできる
毛穴のある場所であれば全身のどこでも発症しますが、特にできやすいのが次のような場所です。
・皮脂の分泌が多い場所…頭、顔、胸、背中など
・衣類などでこすれやすい場所…首の後ろ、わき、デリケートゾーン、お尻、太ももなど
・蒸れやすい場所…頭、わき、デリケートゾーン、お尻など
マラセチア菌による毛包炎は、皮脂腺が多く汗をかきやすい胸や背中に生じやすい傾向があります。また、毛包炎は上記以外にもひげやムダ毛を処理した場所、ステロイド外用薬を塗っている場所などにも生じます。

●治癒後はどうなる?
毛包炎は慢性疾患ではありませんが、繰り返し起こる場合があります。また、治癒後に色素沈着や跡が残ることがあるので、患部はできるだけ刺激せず、悪化した場合は早めに皮膚科を受診して治療を受けましょう。毛包炎は頭皮にもできるため、発症により毛髪が抜けてしまう場合があります。通常は元に戻りますが、症状を悪化させてしまうと、まれに薄毛になってしまうことも。

●毛包炎と似た症状の疾患との違い
・ニキビ
毛包炎と同じく毛穴にでき、見た目も似ていますが、詰まった毛穴の中でアクネ菌が繁殖して起こることや、顔や胸、背中以外には生じないこと、発症は思春期に多いことなどの違いがあります。

詰まった毛穴の中でアクネ菌が繁殖して起こるニキビと、正常な肌のイメージイラスト

・粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤とは、何らかの原因で皮膚の下に袋状の組織ができ、その中に角質や皮脂がたまって大きくなっていく良性の腫瘍です。毛穴が詰まったところにもできます。毛包炎とは異なり、硬いしこりができて自然には治りません。
・接触皮膚炎やあせも、とびひなど
皮膚に丘疹や水疱ができたり、痛みやかゆみが生じたりするものには、接触皮膚炎やあせも、とびひなどもありますが、いずれも毛穴にできるものではありません。


毛包炎(毛嚢炎)の治療・対処法

●軽度の場合は自然治癒することも多い
毛包炎(毛嚢炎)の症状が軽度の場合、患部を清潔に保てば1週間ほどで自然と治癒します。その際、患部を触ったり、潰したりしないようにしましょう。ひげが生えている場所にできた場合、ひげそりはできるだけ控えてください。

●痛みや腫れがある、なかなか治らない場合は皮膚科を受診する
色素沈着や跡が残ることもあるので、毛包炎(毛嚢炎)の痛みや腫れが強い、範囲が広がっている、なかなか治らないといった場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
皮膚科では、視診や問診、場合によっては抗原検査を行い、原因菌や症状に合わせた外用の抗菌薬や抗真菌薬を処方します。外用薬だけでは効果が薄い場合には内服薬も処方されます。膿が多くたまっていたり、「せつ」「よう」に進行していたりする場合は、切開して膿を出すこともあります。
まれに黄色ブドウ球菌の1種であるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が原因の毛包炎があります。この菌は抗菌薬が効きにくいため、治療してもなかなか治らない場合はMRSAが疑われ、細菌培養検査を行って鑑別した上で治療薬を見直します。

●毛包炎に市販薬を使用する場合の注意点
毛包炎(毛嚢炎)の治療薬は原因となる菌や症状に合わせる必要があるため、市販薬を使う場合は薬剤師または登録販売者に相談しましょう。使用して1週間を目安に症状が改善しない場合は、皮膚科を受診してください。


毛包炎(毛嚢炎)の予防法

●皮膚を清潔に保ち、ダメージを与えない
・日々の入浴や洗顔、洗髪で、皮膚の汚れや余分な皮脂を落とす
洗浄力の強い石けんやシャンプーを使ったりタオルで強くこすったり、すすぎ残しがあったりすると、皮膚がダメージを受け、バリア機能が低下してしまいます。特に毛包炎を繰り返している人は、抗菌効果のある洗浄剤を使い、よく泡立てて優しく洗うようにしましょう。
また、乾燥は皮膚にダメージを与えるため、ローションやクリームなどによる保湿ケアも忘れずに行いましょう。その際も皮膚をこすらないようにしてください。
・皮膚を傷つけないように留意する
ひげそりやムダ毛の処理は、できるだけ皮膚を傷つけないように注意して行いましょう。特に男性は、女性に比べて皮膚のバリア機能が低下しやすく、生えてくる毛も太いため、毛包炎のリスクが高い傾向があります。皮膚のことを考えると、日々のひげそりはカミソリよりも電気シェーバーで行うのがおすすめです。電気シェーバーはこまめに洗い、定期的に刃を交換するようにしましょう。ひげそりやムダ毛の処理の後も保湿ケアを行って、皮膚の水分量をキープしてください。

髭剃りをする男性のイメージ写真

・汗をかいたら放置しない
汗はほとんどが水分ですが、ミネラルや老廃物なども含まれるため、放置すると菌が繁殖しやすくなります。汗をかいたら放置せずに洗い流すようにし、可能であれば汗ばんだ衣類は着替えることをおすすめします。洗い流すのが難しい場合は、皮膚を刺激しないように、濡れたタオルやアルコールを含まないウェットティッシュを使い、皮膚をこするのではなく押さえるようにして汗を取り除くとよいでしょう。
・衣類は刺激が少なく蒸れない素材を選ぶ
衣類は、肌触りがよく刺激の少ない素材の物がおすすめです。気温や湿度が高い季節は、通気性のよい衣類を選んでください。冬に愛用している人も多い機能性インナーは、素材によっては汗を吸わず蒸れの原因になります。下に吸湿性の高い綿のインナーを重ねると、蒸れの予防になります。
・温浴施設やプールでは利用後にシャワーを
緑膿菌は不衛生な温浴施設(温泉や銭湯、サウナなど)やプールで感染し、毛包炎を引き起こします。施設を利用した際は、最後にシャワーで全身を洗い流すとよいでしょう。

●免疫機能を低下させない
免疫機能を低下させないことも、毛包炎の予防には役立ちます。難しいことではなく、次のような健康維持全般に役立つ基本的な生活習慣を意識するとよいでしょう。
・規則正しい生活
・十分な睡眠
・バランスのとれた食事
・適度な運動
・疲労やストレスをため込まない

●皮膚の健康に役立つ栄養素を摂取する
基本的にバランスのとれた食事を心がけていれば問題ありませんが、毛包炎を繰り返したり、皮膚のトラブルが気になったりする場合は、次のビタミンを意識して摂取してみましょう。
・ビタミンB2
細胞の再生を助けて皮膚を健康に保つ働きがあります。レバー、豚肉、牛肉、ウナギ、サバ、卵、牛乳、アーモンド、納豆、まいたけなどに含まれます。
・ビタミンB6
皮膚の材料になるアミノ酸の代謝において、重要な役割を果たすビタミンです。カツオやマグロなどの青魚や肉、レバーなどの動物性食品に多く含まれます。
・ビタミンC
皮膚に張りをもたせたり傷を修復したりする、コラーゲンの合成に不可欠なビタミンです。パセリ、ピーマン、ブロッコリー、いちご、みかん、キウイフルーツなどに含まれます。

ビタミンについてはこちらでも詳しく紹介しています。
特集『健康な毎日を支えるビタミン・ミネラルガイド』


毛包炎(毛嚢炎)Q&A

Q. 毛包炎になりやすい人にはどのような特徴がありますか?

A. 皮膚のバリア機能や免疫機能の低下、アトピー性皮膚炎の人、乾燥肌やオイリー肌の人、汗をたくさんかく仕事の人など様々です

次の項目に該当する人は、毛包炎のリスクが高いといえます。毛包炎は慢性疾患ではありませんが、中には繰り返し発症する人も。特にマラセチア菌による毛包炎は何年も続く人が多く見られます。
・皮膚へのダメージやアトピー性皮膚炎、乾燥などで、皮膚のバリア機能が低下している人
・病気や薬の使用、生活習慣から免疫機能が低下している人
・皮脂の分泌が多いオイリー肌の人や、仕事などでたくさん汗をかく人
・毛が太く毛穴が大きい男性
意外なところでは、海のレジャーや仕事でウェットスーツを着用する機会が多い人も注意が必要です。水着の上に直接着るため、皮膚への刺激や蒸れが生じ、毛包炎を起こしやすくなります。熱や湿気がこもりやすい衣類を常用している人も同様です。

Q. 毛包炎は人にうつることはありますか?

A. 基本的には人から人にうつることはありません。ただしMRSAには注意!

毛包炎の原因となる菌は、人間の皮膚や生活環境の中に生息する常在菌であり、基本的に人から人へうつることはありません。ただし、MRSAは接触感染をします。MRSAは抗菌薬が効きにくい上に、免疫機能が低下している人が感染すると重症化することも。身近にMRSAを原因とする毛包炎の人がいる場合は、タオルの共有を控え、その人が触れた物やその人と接触した後の手指は消毒するなど、感染予防に努めてください。

MRSAは接触感染するため、感染予防をするイメージ写真

Q. 毛包炎の時にやってはいけないことはありますか?

A. 患部を刺激しないようにしましょう

患部を触ったり、潰したりしないようにしましょう。特に潰して膿を出してしまうと、周囲に菌が付着し症状が広がる恐れがあるので、もし潰れてしまったらガーゼなどを当てて保護するようにしてください。また、皮膚の洗浄や保湿の際も、強くこすったりはせず、優しくケアしましょう。熱いお湯や長時間の入浴は炎症を悪化させる場合があるため、入浴する場合はぬるめのシャワーで済ませることをおすすめします。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト