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大人の百日咳|症状,子どもとの違い,治療法,予防接種について

百日咳とは、百日咳菌という細菌が呼吸器に付着することで発症する感染症で、非常に感染しやすく、感染すると激しい咳発作を起こします。生後2カ月から5種混合の百日咳ワクチンを接種できますが、ワクチンの効果は一生続くわけではありません。また、子どもは重症化しやすく、大人は気づかぬうちに自然と治まってしまう場合もあり、大人から子どもへの感染が問題となっています。ここでは、百日咳の経過と症状、大人と子どもの症状の違い、治療法、予防法についてご紹介します。

監修プロフィール
こどもとおとなのクリニック パウルーム 院長 くろき・はるお 黒木 春郎先生

千葉大学医学部卒業。医学博士。千葉大学医学部臨床教授。公認心理師。千葉大学医学部関連病院勤務を経て、1998年千葉大学医学研究院小児病態学教官。2005年外房こどもクリニック開業(千葉県いすみ市)を経て、08年医療法人社団嗣業の会理事長、23年より「図書室のなかのクリニック」をコンセプトにした、こどもとおとなのクリニック パウルームを東京都港区に開業。日本小児科学会専門医・指導医。日本感染症学会専門医・指導医・評議員。日本遠隔医療学会幹事。著書に『駆け抜けた17年』(幻冬舎)、『プライマリケアで診る小児感染症 7講』(中外医学社)、共著『最新感染症ガイド R-Book 2018-2021』(日本小児医事出版社)ほか多数。

Q1 百日咳はどんな咳が出る?

A1 百日咳は痰を伴わない咳が出ます

咳には痰を伴う咳と、痰を伴わない咳があります。百日咳は、痰を伴わない咳が出ます。痰はウイルスや細菌などの病原体や、ほこりなどの異物を排出する役割をもち、健康な時でも毎日約100cc出ています。普段は知らずに飲み込んでいますが、かぜや気管支炎にかかると痰の量が増え、異物を外に吐き出すために咳が出ます。

呼吸器の仕組み。鼻腔から喉頭までを上気道と呼び、上気道が炎症を起こすと、痰を伴わない激しい咳や鼻水、鼻づまり、のどの痛みなどが現れる。下気道、喉頭から下を下気道と呼び、下気道が炎症を起こすと、痰を伴う咳、息切れ、胸痛などの症状が現れる。痰を伴う咳にはかぜ、副鼻腔炎、気管支炎などがあり、痰を伴わない咳には百日咳、上気道の炎症などがある。

Q2 百日咳ってどんな病気?

A2 百日咳菌による感染症で子どもは重症化しがち

百日咳とは、百日咳菌という細菌による呼吸器の感染症で、百日咳菌のもつ様々な毒素が激しい咳発作を起こします。百日咳菌は非常に感染しやすい細菌で、くしゃみや咳をした時に飛び散る飛沫で広がります。
子どもは母親から百日咳の抗体を受け継いでいません。そのため、ワクチン未接種の乳幼児が百日咳にかかると激しい咳による呼吸困難や二次感染による肺炎の併発など、症状が重くなる確率が高くなります。まれに一時的な呼吸停止(無呼吸)によって死に至ることや脳への感染によって脳炎を起こし、脳の損傷や、知能の発達に遅れが見られる精神遅滞などの重大な障害を引き起こす危険性もあります。
1990年代に、百日咳のワクチンを含む3種混合ワクチンが生後3カ月から接種できるようになり(現在は5種混合で生後2カ月から接種可能)、子どもの百日咳は減少しました。しかし、ワクチンを接種してもその効果は一生ではないため、大人になってから百日咳に感染するケースが目立ち始めています。百日咳は、子どもだけでなく、誰もが感染の可能性があることを知っておきましょう。

百日咳の原因は百日咳菌。百日咳菌が持つ毒素により、激しい咳が連続する咳発作が起きる。
百日咳の主な感染経路は飛沫感染。患者の咳やくしゃみなどで飛び散った飛沫によって感染する。

Q3 子どもが百日咳にかかるとどんな症状が現れるの?

A3 短く激しい咳が連続して起こります

百日咳菌に感染すると、通常7日間ほどの潜伏期間を経て、次のような経過で症状が現れます。なお、大人は子どもよりも症状が軽く治まる傾向にあります。

●カタル期(約2週間)
鼻水や咳など、軽いかぜのような症状が現れ、次第に咳の回数が増える。カタル期の初期が最も感染力が強い。

●痙咳期(けいがいき:2~3週間)
短く激しいコンコンという咳が連続して起こった後、ヒューという音を伴いながら苦しそうに息を吸う咳発作を繰り返す。

痙咳期に起こる咳発作には、次のような特徴が見られます。

・夜間に咳が多く出る。
・咳発作以外は症状が現れない。
・熱がない。
・咳のし過ぎで嘔吐する。
・顔面紅潮、目の充血、鼻血を伴う。
・息苦しさで皮膚が青くなる。

●回復期(2~3週間)
2~3週間かけて咳発作は次第に治まります。冷たい空気に触れた時などに咳発作が起こる場合もあります。治療しなければ、咳が治まるまでに通常2~3カ月かかるといわれており、咳が100日ほども続くことから、「百日咳」と呼ばれています。

百日咳の経過と症状。全経過は2~3カ月。感染から発症までの期間、潜伏期は7~10日間。カタル期(約2週間)には、鼻水や咳が現れ、この時期は感染力が非常に強い。痙咳(けいがい)期(2~3週間)には、コンコン、ヒューという特有の咳発作が起こる。咳発作の特徴は、夜間に咳が出る、熱がない、咳の後に嘔吐を伴う。回復期は2~3週間で、次第に咳発作は治まる。

Q4 なぜ大人も百日咳に気をつけなければいけないの?

A4 周囲の子どもへの感染源になることと、大人も咳が長引くからです

百日咳ワクチンの予防効果は、3~5年で徐々に弱まり、10~12年後には完全に消滅します。そのため子どもの頃に接種したワクチンの効果が消滅した時期に、百日咳に感染する患者が増えています。2025年には、10代以上の感染者数が全体の約70%(※)となりました。
また、大人の百日咳では激しい咳発作が見られないのが特徴で、大人が感染しても単なる咳として放置しやすく、重症化しやすいワクチン未接種の乳幼児に感染を広げてしまうことが問題となっています。また、大人自身も咳が長引くことはよくありません。

(※)出典:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトホームページ「百日咳 2025年11月現在」

Q5 5種混合ワクチンとは?

A5 ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、ヒブ(Hib感染症)を予防するワクチンです

ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、ヒブ(Hib感染症)を予防するワクチンで、予防接種法により受けることがすすめられています。接種は全4回。生後2~7カ月の間に3回接種した後、3回目の接種から6~18カ月の間隔で4回目の接種をします。4回の接種が完了しないと予防効果は期待できません。生後2カ月を過ぎたら、できるだけ早く予防接種を開始しましょう。

5種混合ワクチンとは ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、ヒブ(Hib感染症)を予防するワクチンのこと。

Q6 百日咳の治療はどのようなことをするの?

A6 抗生物質や、十分な水分・休養をとります

百日咳の治療は、一般的に抗生物質を服用します。抗生物質の効果は、百日咳菌が多いカタル期に高く、すでに菌がいなくなりつつある痙咳期には限定的です。百日咳は痙咳期になってから診断がつくことが多いため、抗生物質の効果は限定的な場合も多いですが、周囲への感染を防ぐためにも医師の指示に従って内服しましょう。
服薬以外には、痰を出しやすくするために水分をしっかり補給することや、咳により体力を消耗するため、十分な休養と栄養を摂ることも重要です。
乳児が重症化して呼吸困難を起こした場合は、入院が必要になります。気管チューブ挿入による機械呼吸や、酸素の補給や点滴を行う場合もあります。

百日咳にかかったら、抗生物質の継続服用、十分な水分補給をする。

Q7 妊娠中の百日咳の治療は? ワクチンは受けられる?

A7 妊娠中でもワクチン接種は可能です

妊娠中に百日咳にかかった場合、抗生物質による治療は、妊娠期間や経過などによって、有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ処方されます。
百日咳を予防するために、妊娠中でも接種できるワクチンがあります。早めに産婦人科医に相談しましょう。

妊娠中でもワクチン接種は可能。

Q8 大人の症状は子どもと違うの?

A8 呼吸困難を伴わない原因不明の咳が続きます

大人の百日咳の特徴は、子どもの百日咳に見られる呼吸困難を伴う咳発作がないことです。また、症状の重さや咳が続く期間などにも個人差があります。例えば、強い咳が続いて肋骨を骨折する場合がある一方で、咳の症状が軽く自然と治まる場合もあります。
しかし、咳の症状がどんなに軽くても、百日咳は発症から約2週間のカタル期が最も感染力が強いことに変わりはありません。そのため、単なる咳として放置したり、受診が遅れると、家庭内に広がったり、周囲の子どもへの感染の危険性を高めてしまうことになるのです。
熱を伴わない原因不明の咳が2週間以上続く大人の約2割に、百日咳の疑いがあることも分かっています。大人が軽い咳として放置し診断に至らないことが、流行を広げる原因の1つにもなっているため、咳が長引き、次のような症状がある場合には決して放置せず、百日咳を疑って早めに受診しましょう。最近ではPCR検査により、迅速な診断も可能になっています。

・2週間以上咳が続いている。
・嘔吐を伴う強い咳が続く。
・咳をし出すと止まらない。
・周囲に、熱を伴わない長引く咳をしている人がいる。

百日咳かなと思ったら、大人が受診する目安は、咳が2週間以上続く、嘔吐を伴う、咳をしだすと止まらない、周囲に咳をしている人がいる、熱がない。

Q9 家族内での感染例は?

A9 親が子どもへの感染源になることがあります

10カ月の男の子が夜間の咳き込みで受診し、百日咳と診断されました。問診により2週間前から父親が咳をしていたことが分かり、父親が子どもへの感染源であることが判明。父親には激しい咳発作がなかったため、百日咳だと気づかなかったのです。その2週間後、今度は母親が軽い咳をし始め自然に治りましたが、やはり百日咳と診断されました。大人の場合、たとえ軽い咳であっても、長引いたら百日咳を疑って受診しましょう。それが早期発見と、周囲への感染拡大防止につながります。

家庭内の感染例

Q10 どうすれば予防できるの?

A10 予防接種と、手洗い、うがいの徹底が大切

予防策として最もすすめられるのは、予防接種です。まずは自身の予防接種状況を確認しましょう。未接種の場合は、受診し医師に相談してください。
アメリカでは大人の百日咳の予防として、2006年より、11~13歳を対象とした百日咳ワクチンの追加接種が始まりました。日本においても、11歳以上、13歳未満の者に接種が認められている3種混合ワクチンがあります。成人・妊婦への接種も可能です。
百日咳の飛沫・接触感染を防ぐためにも、かぜ予防と同様に、手洗い・うがいの他、マスクの着用を心がけましょう。

百日咳の感染予防対策は、手洗い、うがい、マスク。

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