今年の花粉症は新型コロナウイルスとのダブルパンチ!「これだけは押さえておきたい、今年の花粉症対策」

今年の花粉症は新型コロナウイルスとのダブルパンチ!「これだけは押さえておきたい、今年の花粉症対策」

今や国民病とも言われている「花粉症」。地域差はありますが、東京都ではスギ花粉症の有病率は48.8%と推定されており、都内に住む人は2人に1人が花粉症に悩んでいる計算になります。
これだけ多くの人が症状を抱える花粉症に加えて、2021年の春は新型コロナウイルスが重なり、例年とは全く違うレベルでの花粉症対策が求められていると、花粉症のエキスパートである日本医科大学の大久保公裕教授は警鐘を鳴らします。
コロナ禍の今、押さえておきたい花粉症対策について詳しくお伝えします。
(インタビューは2021年1月29日に行い、内容はその時の状況に基づいています。)

監修プロフィール
日本医科大学大学院 医学研究科 教授 おおくぼ・きみひろ 大久保 公裕 先生

日本医科大学大学院 医学研究科 頭頸部感覚器科学分野 教授、日本医科大学付属病院 耳鼻咽喉科 部長、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会理事、奥田記念花粉症学等学術顕彰財団理事長、日本アレルギー協会理事、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会代議員。1984年日本医科大学卒業。同大学院修了後、アメリカ国立衛生研究所(NIH)に留学。日本医科大学耳鼻咽喉科准教授を経て、2010年より現職。医学博士。花粉症治療の第一人者として知られ、『ササッとわかる最新「花粉症」治療法』(講談社)、『花粉症は治せる!舌下免疫療法がわかる本』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

コロナ禍での花粉症は、もはや「個人的な病気」ではない

スギ花粉

今年のスギ花粉の飛散量は、非常に少なかった昨年と比べて関東で1.8倍、関西で1.5倍になると予測されています。これは例年と比較すると、平年並みか、やや少ないという状況。これだけを見ると、比較的過ごしやすい年であるようにも感じられますが、実は、今年は新型コロナウイルスが重なったことで、花粉症の人はかなり警戒して対策をしなければならない状況になったと大久保先生は話します。

「花粉症は、有病率は高いものの、少なくとも今までは“自己完結する病気”でした。しかし今年は、無意識に目や鼻をこすったり、マスクを外して鼻をかんだりして新型コロナウイルスに感染してしまったり、逆に、もしも花粉症の人がコロナに感染しても無症状の場合、自分でも気づかないうちに、花粉症に伴うくしゃみなどで感染を広げてしまう恐れが出てきたのです。個人的な病気だった花粉症が、今年は新型コロナウイルスの市中感染リスクを高める“社会性”をもってしまったというのが、例年とはまったく違う点なのです」。

今年は「対策のステップアップ」で、花粉症の症状を完全に抑えよう

今年は「対策のステップアップ」で、花粉症の症状を完全に抑えよう

大久保先生は、花粉症が原因で新型コロナウイルスの感染を拡大させないためにも、今年は花粉症を抱える一人ひとりが対策をステップアップし、症状を完全に抑える水準にまでセルフマネジメントをすることが重要だと提言します。

「花粉症のレベルは、軽症から重症の人までさまざまです。今までマスクと眼鏡だけでしのいでいた軽症の人は、手に入れやすい市販薬を常に携帯し、花粉症の兆候が出たらすぐに症状を抑えてほしい。また、市販薬を時々使うレベルだった人は、兆候が出たら毎日継続して薬をのめるように工夫してほしい。さらに市販薬をのんでも症状が出るレベルの人は、市販薬から医療機関の受診にステップアップをしてほしい。“毎年のことだから”と放置してやり過ごすのではなく、今年は症状を確実に抑え込む水準にまで、治療のレベルを上げるセルフマネジメントが必要なのです」。

花粉の飛散を抑えるために、換気は「加湿」をしながら行って

花粉の飛散を抑えるために、換気は「加湿」をしながら行って

さらに今年は、新型コロナウイルス対策として、各所で換気が行われているのも花粉症の人にとってはつらい状況です。換気をしつつ、花粉症を防ぐ環境に整えるカギは「湿度」にあると大久保先生は話します。

「花粉の大きさは30ミクロン(1mmの1/30)、せきやくしゃみで排出される飛沫の大きさは5ミクロン(1mmの1/200)程度。どちらも小さくて軽いので飛散しやすいのですが、水分を吸って重くなると飛びません。花粉は雨の日には飛散しませんし、飛沫も水分で落ちます。つまり、換気をしていても室内が加湿されていれば、花粉や新型コロナウイルスの飛沫が抑えられる可能性があります。換気をする際は、加湿をしながらサーキュレーターなどを回して行うとよいでしょう。また、花粉を室内に入れないためには、換気の際に網戸やレースのカーテンを閉めておくだけでも一定の効果があります」。

外出先や電車の中などでは、湿度や花粉の侵入をコントロールすることが難しいため、症状を抑える対策が必須となりますが、同時に携帯用アルコールとポケットティッシュを常備し、やむを得ず目や鼻に触れたり、鼻をかんだりする前後には必ず手指を消毒して、自分のティッシュを使うようにしましょう。それが自らの安全だけでなく、せきやくしゃみに敏感になっている周囲の人の安心感にもつながるのだと大久保先生は話します。今年は“対策の見える化”も、周囲の人に対するエチケットのひとつだと考えて、準備しておきましょう。

花粉症と新型コロナウイルス感染症を見分けるポイントとは?

花粉症と新型コロナウイルス感染症を見分けるポイントとは?

花粉症は、くしゃみ、鼻水、のどの痛み、嗅覚障害、味覚障害、微熱、頭痛、倦怠感など、新型コロナウイルス感染症と似た症状も現われます。今年は、「自分の症状は花粉症なのか、コロナなのか?」と迷ってしまうこともあるでしょう。花粉症か新型コロナウイルス感染症なのか、症状を見分けるポイントはあるのでしょうか。

大久保先生によれば、元々アレルギー性鼻炎をもっていて鼻の症状が現れた人が、実は新型コロナウイルスに感染して症状が出ていた……という事例も報告されており、確実な自己判断は難しいとしながらも、花粉症と新型コロナウイルス感染症の大きな違いとなるのは以下の2点だと言います。

(1)体温が37.5℃以上あるかないか
花粉症でも微熱は出ますが、熱が37.5℃以上の場合は、新型コロナウイルスの可能性が疑われます。

(2)嗅覚障害・味覚障害は、「鼻づまり」があるかどうか
花粉症は、鼻づまりがあることで、嗅覚障害や味覚障害、頭痛やだるさなどの症状が引き起こされます。一方で、新型コロナウイルス感染症の嗅覚障害・味覚障害は、鼻がつまっていないのに起きるのが特徴。ここが大きく違うポイントです。

花粉症なのか、新型コロナか分からない時はどうする?

花粉症なのか、新型コロナか分からない時はどうする?

花粉症か新型コロナかの自己判断は難しいですが、たとえ毎年、花粉症の症状が出ている人であっても、熱が37.5℃以上あり、鼻やのどの症状がある場合には、まずは「発熱者外来」を受診すべきだと大久保先生は話します。

また、発熱がない場合は、花粉症のかかりつけ医を受診して症状を伝え、新型コロナウイルスとの重なりがないかどうか調べてもらいましょう。例年の花粉症の時期には出ていない症状があれば、事前に電話等でかかりつけ医にしっかりと症状を伝え、指示を仰ぐことが大切です。また、対面での受診が不安な場合は、オンライン診療や電話診療を活用することも一案です。

花粉症持ちの人が、新型コロナウイルスワクチンを受ける際に大切なこと

花粉症持ちの人が、新型コロナウイルスワクチンを受ける際に大切なこと

新型コロナウイルスのワクチン接種が始まろうとしている今、花粉症などのアレルギーがあるとワクチンを接種するのが心配……という人もいるかもしれません。しかし、大久保先生は新型コロナウイルスの有病率を下げる最終手段である治療薬がない限りは、感染を拡大しないために、ワクチンを受けられる人は接種するのが基本だと言います。

「ワクチン接種の際は、花粉症などアレルギー体質がある方は、問診で必ず伝えるようにしてください。これは他のワクチンでも同様に言えることですが、まったくアレルギーがない人よりも、皮膚のかゆみや腫れなどの副反応が強くなる可能性もあるので、問診で医師としっかり相談しながら接種を行うことが大切です」。

いかがでしたか?花粉症によって新型コロナウイルスの感染拡大リスクを高めないよう、今年は一人ひとりが症状をしっかり抑えるセルフマネジメントをしていきましょう。


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