今、大人のぜんそくが増えています。長引く咳(せき)に要注意

わずらわしい咳に長く悩まされている・・・なんてことはありませんか?

かぜをひいたりして咳が出やすいこの時期ですが、咳にはかぜ以外の病気が潜んでいる可能性も・・・。もし長期間、咳が続いているようなら、放置してはいけません。長引く咳の原因や対処法を知っておきましょう。

監修プロフィール
山王病院アレルギー内科 あだち・みつる 足立 満 先生

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授。医学博士。1971年昭和大学医学部卒業後、同大学医学部第一内科学入局。山梨赤十字病院内科部長を経て、80年昭和大学医学部第一内科専任講師、その後同助教授、同主任教授に。89年ロンドン大学Royal Postgraduate Medical School 臨床薬理学教室に留学。日本大学医学部呼吸器内科学客員教授を経て、現職。

Q1 熱やのどの痛みなどのかぜ症状は回復しているのに、咳だけが治らないのですが・・・

A1 咳が3週間以上続く場合は、かぜ以外の疾患の可能性が。

咳には、痰(たん)を伴う湿った咳の湿性咳嗽(しっせいがいそう)と、痰を伴わない乾いた咳の乾性咳嗽があります。
そもそも咳は、体の防御反応であり、外部からウイルスや細菌、ホコリなどの異物が気道に入り込んだのを排除しようとして起こります。また痰は、気道から分泌される粘液で、侵入した異物を包み込んで取り除いてくれるものです。
咳やそれに伴う痰は、こうした重要な役割を担っているため、直ちに止めなければいけないものではありませんが、3週間以上続く場合は注意が必要です。
一般にかぜの咳であれば、3週間も経てば必ずよくなります。それが、3週間経っても咳が一向に治まらず、回復の兆しもない場合は、かぜ以外の疾患の可能性があるのです。このような時は、まず、かかりつけの医師に診断を仰ぎましょう。診療を受けても症状が改善しない場合は、かかりつけの医師と相談の上、アレルギー科か呼吸器科を受診することをおすすめします。
3週間以上続く咳の疾患の内訳は、咳ぜんそくが約4割、ぜんそくが約3割で、両者を合わせると7割強を占めることになります。続いてアレルギー体質の人に起こる咳のアトピー咳嗽、COPD(シーオーピーディー)、かぜの後に咳だけが残る感染後咳嗽が比較的多く見られます。その他にも、非結核性抗酸菌症や結核、がんなど、様々な病気が潜んでいる可能性もあるので、長引く咳は放置しないようにしましょう。

長引く咳
3週間以上長引く咳の原因疾患

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COPDは「慢性閉塞性肺疾患」ともいわれています。慢性的な肺の機能低下が原因で起こり、かつては「肺気腫」「慢性気管支炎」とも呼ばれていました。ぜんそくの症状と類似点が非常に多く、見分けがつきにくい病気です。主に50歳以上で20年以上の喫煙歴がある人に見られ、喫煙が最大のリスク因子です。

Q2 「ぜんそく」とはどのような病気?

A2 炎症により気道が狭くなり、発作を伴う病気です。

ぜんそくとは、正式には「気管支ぜんそく」と呼ばれ、空気の通り道である気道に、慢性的な炎症が起きて、気道径が狭くなる病気です。気道の粘膜上皮に常に炎症があるので、ほんの少しの刺激にも気道が過剰に反応して、咳込んだり、呼吸困難、喘鳴(ぜんめい)などの発作を引き起こしてしまいます。
一般的に「咳ぜんそく」といわれているのは、1カ月以上続く空咳を主な症状とし、喘鳴や呼吸困難は起きません。気管支ぜんそくよりも症状は比較的軽いですが、激しい咳込みが起きることも。ぜんそくの前段階と考えられ、放置していると3、4割はぜんそくに移行していきます。咳が長引いている場合は、まずは咳ぜんそくを疑い、本格的なぜんそくへの移行を防ぐことが大切です。
近年、気管支ぜんそくは、大人の有症率が上昇し、患者数は子どもより大人のほうが多くなりました。成人ぜんそくの内訳は、小児ぜんそくからの持ち上がりが2割で、残りの8割は大人になってから発症。40〜80代でも、年齢に関係なく発症するのです。吸入ステロイド薬の普及でぜんそく死は激減したもの、成人ぜんそくの患者数は、過去30年間で3倍に増加しています。
ここまでぜんそくが増えた背景の1つには、アレルギー反応を起こすダニや花粉、カビ、ホコリなどのアレルゲンの増加が挙げられます。

健康な人の気道とぜんそく患者の気道
咳ぜんそくから気管支ぜんそくへ

Q3 ぜんそくの原因を詳しく教えて

A3 体内へのアレルゲン侵入やウイルス感染が主な原因です。

ぜんそくの多くは、ダニ、カビ、ペットのフケなど様々なアレルゲンの侵入や、かぜなどのウイルス感染がきっかけで発症し、大きくは「アトピー型ぜんそく」「非アトピー型ぜんそく」の2つのタイプに分けられます。いずれのぜんそくも半分から3分の2程度は、白血球の一種である好酸球の増加が関係しています。血液中の好酸球が増加して、気道の粘膜上皮に集結し、破壊します。そのため、気道が荒れて過敏になり、少しの刺激で発作が起こりやすくなるのです。アトピー型ぜんそくの場合でもかぜなどのウイルス感染により、症状が悪化することがあります。

ぜんそくの原因

Q4 どのような人がぜんそくになりやすいの?

A4 アレルギー体質の人は、ぜんそくになりやすい傾向が。

アレルギー性鼻炎をもつ人は、ぜんそくを発症しやすくなります。ぜんそく患者の67%は、ダニや花粉などのアレルギー性鼻炎をもっています。さらにアレルギー性鼻炎の症状が出ると、ぜんそくが悪化し、コントロールできなくなるのです。これを防ぐためにも、花粉症などのアレルギー性鼻炎の治療を並行して行うことが大切です。
そもそも、アレルギー性鼻炎は上気道の鼻、ぜんそくは下気道の気管支のアレルギー疾患。上気道と下気道は1つの気道でつながっているため、当然干渉し合うのです。普段患者さんを診ていても、花粉飛散時期にぜんそくを悪化させる人は多く、花粉症とぜんそくは、大いに関係していると感じます。花粉症の人は花粉が飛散し始めたら、抗アレルギー薬を服用し、花粉症対策を行いましょう。

同じ軌道内で干渉し合う

column:早めの花粉症対策を

最近、医療で使われている抗アレルギー成分は、ドラッグストアなどで購入できる市販薬にも配合されています。眠くならない、1日1回でOK、水なしでのめるなど、様々な特徴があり、ライフスタイルに合わせて選べるようになっています。花粉の季節が到来する前に、準備しておきましょう。

Q5 ぜんそくは自然に治るもの?

A5 治りません。放置しておくと悪化することもあります。

ぜんそくは放っておいても治ることはなく、大半の人は一生付き合っていかなければいけません。しかし、気道の炎症を鎮める吸入ステロイド薬や、気管支拡張薬などの基本の治療を続けていけば、発作を起こさず、健康な人と変わらない日常生活を送ることができます。一方で、治療せず放置していると、気道の過敏性が増し、重症化しやすくなってしまいます。
ぜんそくにしても咳ぜんそくにしても、突然激しい咳が出る可能性があります。あくまでもぜんそくは病気なので、発作時は医師に指定されている発作時の吸入薬を使うこと。たいていは「短時間作用性β2刺激薬」をもらっているはずなので、医師の指示どおりに吸入しましょう。

ぜんそくは自然になおらない

Q6 ぜんそくを防ぐためには?

A6 ぜんそく発症の原因への対策が必須です。

一番は、咳の原因となるかぜやインフルエンザなどのウイルスやアレルゲンを避けるよう、マスクを着用し、手洗いやうがいをしっかり行うこと。室内にダニや花粉などのアレルゲンを増やさないよう、こまめに掃除機をかけたり、寝具を乾燥、洗濯したりすることも大切です。
また、気道の刺激は避けたいもの。喫煙は絶対にNGですが、その他にも冷気を吸い込むことや強い匂いを嗅ぐことも、なるべく避けるようにしましょう。こうした刺激に対してはマスクの着用が有効です。
ストレスや過労も、気道を過敏にさせる要因となるので、無理をせず、睡眠や休息を十分とり、生活リズムを整えましょう。

気道を刺激するもの

column:咳を誘発する食べ物に注意

ほうれん草やタケノコ、山芋などのアクの強い食べ物には、ヒスタミンやアセチルコリンなどの気道を収縮する成分が多く含まれています。人によっては、気道への刺激になるので控えめにしてください。唐辛子などの香辛料や炭酸飲料、熱い・冷たい食べ物も、人によっては気道を刺激するので、摂り過ぎに気をつけましょう。


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