生活習慣病を防ぐ正しい食習慣

生活習慣病は、偏った食事や運動不足などの生活習慣を長年続けることが原因で発症します。放置しておくと、動脈硬化を進行させ、やがて命にかかわる脳卒中や心筋梗塞を引き起こします。生活習慣病の初期段階であれば重症化を防ぐことができるため、栄養バランスの偏りやエネルギーの過剰摂取を改善するなど、早めに対策しましょう。

生活習慣病とは?

生活習慣病は、偏った食事や運動不足などの生活習慣を長年続けることが原因で発症する病気の総称です。代表的なものに肥満症、糖尿病、脂質異常症、高血圧症があり、これらの生活習慣病は、重篤な疾患につながる動脈硬化を引き起こします。けれども動脈硬化の初期は自覚症状が現れにくく、治療せずに放置すると知らず知らずのうちに重症化して、寝たきりや認知症、死亡の原因となる脳卒中や心筋梗塞のような病気を引き起こします。

2020年度の日本人の死因(※)の上位10位以内には、第2位に心筋梗塞などの心疾患(15.0%)、第4位に脳卒中などの脳血管疾患(7.5%)、第8位に腎不全(2.0%)と、動脈硬化によって発症する病気が多く入っています。動脈硬化の進行が、寿命や健康寿命を縮める原因であることが分かります。
※厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より

動脈硬化の進行

なぜ生活習慣病予防が大切なの?

生活習慣病の怖さの1つには、動脈硬化を引き起こすことがあります。動脈硬化とは、血管が硬くなったり、プラーク(脂などの塊)などにより狭くなったりして、血液の流れが悪くなった状態です。進行すると、命にかかわる心筋梗塞や脳卒中などを発症します。
動脈硬化の進行には、次の生活習慣病が関係しています。

●内臓脂肪型肥満・・・お腹の臓器の間に脂肪が蓄積した状態。内臓脂肪の脂肪細胞から動脈硬化を促す物質が分泌される。

動脈硬化を促す生活習慣病

●糖尿病・・・血液中の糖が増えた状態。糖は血管の内側を傷つける原因となる活性酸素の発生を促す。傷ついた血管壁にコレステロールなどがたまると、血管内が細くなり、詰まりやすくなる。

糖尿病

●脂質異常症・・・血液中の中性脂肪やコレステロールが、増え過ぎたり減り過ぎたりした状態。血管壁にコレステロールが蓄積すると、プラークができるため、動脈硬化を招く。

脂質異常症

●高血圧症・・・血管壁にかかる圧力が高い状態。それにより血管壁が傷つき、コレステロールなどがたまりやすくなる。また、血圧に耐えようと血管壁が厚くなるため動脈硬化を招く。

高血圧症

内臓脂肪型肥満は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こし、最終的に動脈硬化の発症リスクを高めます。内臓脂肪型肥満に加えて高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上を併発した状態を「メタボリックシンドローム(通称メタボ)」といい、予防が重要視されています。
動脈硬化は自覚症状が乏しく気づきにくいため発見が遅れ、受診した時にはすでに重症化しているケースが少なくありません。ただし、肥満症、糖尿病、脂質異常症、高血圧症の初期段階で治療すれば重症化を防ぐことができるため、早めに対策を講じることが重要です。

メタボの基準が男女で異なるワケは?

メタボの診断基準の1つである腹囲が男女で異なる理由は脂肪のつき方にあります。同じ腹囲でも、女性は皮下脂肪が、男性は内臓脂肪がつきやすいことが分かっています。したがって、動脈硬化のリスクとなる内臓脂肪型肥満の診断には、女性は大きめに基準をとる必要があります。女性は腹囲で内臓脂肪型肥満を判断するのが難しいため、血液検査などでも生活習慣病リスクを調べると安心です。

メタボ基準の男女の差

「偏った食事」「不規則な生活」「運動不足」などが、生活習慣病の原因に

生活習慣病の原因には、食習慣の乱れ、不規則な生活、ストレス、飲酒・喫煙、運動不足など様々あります。中でも動脈硬化を引き起こす原因となる肥満症(特に内臓脂肪型肥満)、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の主な原因は、食事によるエネルギーの過剰摂取や栄養バランスの偏りなどの食習慣の乱れです。
生活習慣病の発症に影響する食習慣には、次のようなものがあります。

●朝ごはんを抜く……次の食事で食べ過ぎることが多く、かえってカロリーオーバーの原因になる。
●食事の時間が不規則・・・夜食や間食の機会が多くなりやすいため、カロリーオーバーの原因になる。
●外食が多い・・・単品メニューが多いため栄養バランスの乱れにつながる。野菜が少ないなどの問題も。
●早食いをする・・・満腹を感じる前に食べ過ぎてカロリーの過剰摂取につながる。
●間食・夜食を食べる・・・カロリー過多の原因に。特に夜は食後にエネルギーを消費しないため脂肪として蓄えられて、肥満の原因に。
●濃い味つけや揚げ物を好む・・・塩分や脂質を多く含むため、高血圧や脂質異常を招く。

若い人も生活習慣病になるの?

生活習慣病というと、これまでは50~60代で発症するケースがほとんどでした。しかし近年では、発症年齢の低年齢化が進んでいます。その背景には、食生活の欧米化や運動不足などライフスタイルの変化から、特に男性の30~40代に増えている肥満があります。内臓脂肪型肥満の子どもも少なくありません。子どもの肥満は成人後に生活習慣病を発症する場合もあるため、幼少期から正しい食習慣を身につけることが大切です。

女性は皮下脂肪がつきやすいのに対して、男性は内臓脂肪がつきやすい傾向にあります。内臓脂肪の蓄積は体に悪影響を及ぼす物質の分泌を促し、動脈硬化につながる次のような症状を引き起こします。

●高血糖を招く・・・血糖値を下げるインスリンの働きを妨げ、高血糖を招く。
●血中の脂質濃度を高める・・・内臓脂肪から分泌される物質の働きで血液中の中性脂肪が増える。
●高血圧になる・・・血管を収縮させる物質が増えるため血圧が高くなる。

正しい食習慣を

食事摂取量の目安は「日本人の食事摂取基準」で確認しよう

国が定めた「日本人の食事摂取基準」には、健康の維持・増進のために必要なエネルギーと栄養素の摂取量が提示されています。摂取不足の回避を目的とした「推定平均必要量」、過剰摂取による健康被害の回避を目的とした「耐容上限量」と並び、生活習慣病の予防を目的とした「目標量」が設定されており、各栄養素の詳しい摂取量は、厚生労働省HPより確認できます。

健康維持にかかわる栄養素の指標

「塩分」「脂質」摂り過ぎに注意し、「食物繊維」「カリウム」は不足に気をつけよう

塩分と脂質は、どちらも摂り過ぎると生活習慣病の発症リスクを高め、動脈硬化を促します。

●塩分・・・多く含まれるのは干物、アサリなどの魚介類や、ハム、食パン、カップラーメンなどの加工食品など。
●脂質・・・特に動物性脂肪は脂質異常症の要因に。肉類(特に脂身)、生クリームやアイスクリーム、チーズなどの乳製品なども摂り過ぎに要注意。

摂り過ぎには注意が必要な栄養素や食材

一方、不足に注意が必要なのが食物繊維とカリウムです。 食物繊維には糖の吸収を抑える働き、カリウムには血圧を下げる働きがあるため、動脈硬化の予防になります。ただし、腎臓疾患のある人はカリウムの摂取量を制限する必要があるため、主治医に相談するようにしましょう。

●食物繊維・・・豆類、穀類、野菜に多く含まれる。
●カリウム・・・海藻類や穀類、果物に多く含まれる。

玄米は、食物繊維とカリウムの両者を豊富に含む、生活習慣病予防に最適な食材です。噛む回数も増えるため、肥満予防になります。玄米だけで食べづらい場合は、白米に混ぜるなどして調整するとよいでしょう。

意識して摂るべき栄養素や食材

摂取量は、栄養素を点数化して把握しよう

女子栄養大学が確立し、栄養クリニックで行われている「4群点数法」という食事指導法があります。これは、病気になる前の予防を目的としたもので、年齢を問わず簡単に実施できるのが利点です。
栄養素が似ている食品を第一群~第四群の4グループに分けて点数化。1点当たりの摂取量を明確にし、性・年代別の必要点数を目安に摂取します。基本は第一群から順に「3点+3点+3点+□点」。意識的に体重を減らしたい人は、第四群の摂取量を減らすことで、栄養バランスを保ちながら減量することができます。

4群点数法の計算方法

また、高齢者では摂取エネルギー不足により低栄養に陥る場合があります。低栄養は免疫力の低下や転倒時の骨折により寝たきりを招くなど、健康寿命を短縮させる要因となります。肉や大豆製品、魚からタンパク質を摂り、筋肉量を増やしましょう。

高齢者の摂取エネルギー不足

栄養状態は、BMIの数値や血液検査で確認しよう

食習慣が正しいかどうかの判断には、自分で計算できる体格指数(BMIの数値)と、医療機関で行う検査(血圧測定、血液検査、尿検査)があります。

●BMI・・・体重と身長から算出する。摂取エネルギーと消費エネルギーの収支として現れる。年齢別に目標とするBMI値が定められており、数値内にあれば健康的な体格と判断できる。

年齢別BMIの目標値

●検査・・・採血や検尿で血液中や尿中の構成成分量を調べ、栄養状態や病気のなりやすさ(リスク)を診断する。健診や人間ドックの検査項目に含まれる他、薬局・薬店や通信販売で購入できる検査キットもある。

検査結果が出たら、基準値と自分の検査の値を比較します。基準値とは、健康と判断できる値のことです。この時、基準値以下または以上、基準値外であればどれくらい外れているかを確認しましょう。また、ギリギリ基準値内の人も注意が必要です。放っておくと基準値外になる可能性があるため、早めの対策をしましょう。

食事の摂り方のポイントは、22時以降の食事を控えること

私たちが、1日24時間の流れに沿って起床から就寝を繰り返すように、体の中にも時計のような周期があります。これを日内変動といい、日内変動によって栄養の効果が変わったり、反対に摂る栄養によって日内変動が乱れたりします。こうした日内変動を取り入れた栄養学を「時間栄養学」といいます。
時間栄養学では、22時~4時は栄養が脂肪として蓄えられやすい時間、14時~16時は栄養が分解されエネルギーに変換されやすい時間とされています。ですから、夕食は22時までに済ませることで、過剰な脂肪の蓄積を防ぐことができます。

ただし、仕事や予定があり、22時までに食事を済ませられない時もあるでしょう。そういう時におすすめなのが「分食」。脂肪として蓄えられやすい炭水化物や脂質を含むメニューを職場や外出先などでなるべく早い時間に摂り、帰宅してからサラダやスープなど脂肪になりにくい食品を摂る方法です。

日内変動と栄養効果

検査値が気になる人は、保健機能食品を活用するのも一案です

すでに血圧が高めの人、コレステロール値が気になる人、血糖値が高めの人のセルフケアとして、保健機能食品の活用があります。保健機能食品とは、健康の維持や増進に働く健康食品の中で、国が定める一定の条件を満たした物。保健機能食品は、3つに分類されます。

●特定保健用食品・・・通称「トクホ」。健康に働くことが、国の審査で認められた食品。コレステロール値や血糖値が高めの人に働く機能性が認定されている。
●特定栄養機能食品・・・国が定めた一定の規格量内のビタミンやミネラルなどの栄養成分を含む食品。決められた表現を守れば国への届け出は不要。
●特定機能性表示食品・・・トクホとは異なり国の審査は不要で、事業者の責任で健康への機能を表示した食品。ただし科学的な根拠をもった機能に限る。

使用する場合は、自分の健康状態に適した製品を選びましょう。薬局・薬店の薬剤師などの専門家に相談すると安心です。

生活習慣は、意識をすればいつからでも変えることができます。気づいた今こそが、「生活習慣病」の対策を始めるチャンスです。まずは、正しい食習慣から始めてみましょう。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

監修プロフィール
女子栄養大学名誉教授、女子栄養大学臨床栄養医学研究室教授/栄養クリニック所長 たなか・あきら 田中 明 先生

医学博士、糖尿病専門医、糖尿病研修指導医、元東京医科歯科大学医学部臨床教授、元日本健康栄養食品協会学術委員。1976年東京医科歯科大学医学部医学科卒業後、東京都立府中病院内科(糖尿病)医長、東京医科歯科大学第3内科講師などを経て、2007年より現職。栄養クリニックでは生活習慣病の診察と予防教育を行う他、各種健康雑誌、テレビ番組などで監修を行う。著書多数。

監修プロフィール
女子栄養大学名誉教授、女子栄養大学臨床栄養医学研究室教授/栄養クリニック所長 たなか・あきら 田中 明 先生

医学博士、糖尿病専門医、糖尿病研修指導医、元東京医科歯科大学医学部臨床教授、元日本健康栄養食品協会学術委員。1976年東京医科歯科大学医学部医学科卒業後、東京都立府中病院内科(糖尿病)医長、東京医科歯科大学第3内科講師などを経て、2007年より現職。栄養クリニックでは生活習慣病の診察と予防教育を行う他、各種健康雑誌、テレビ番組などで監修を行う。著書多数。

健康情報サイト