いびきは睡眠の質を低下させ、健康だけでなく美容にも悪影響を及ぼします。いびきの原因に応じた適切なケアをして、早めに改善しましょう。
筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。医学博士。社会医学系専門医協会指導医・専門医、日本睡眠学会専門医。2013年RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック設立。
自分では気づきにくい「いびき」。友人やパートナーから指摘されて恥ずかしい思いをした、という人も多いのではないでしょうか。また女性は、指摘を受けても「まさか自分が……」と認めない傾向もあるようですが、さてあなたは……? まずは次をチェックしてみましょう。
「いびき」とは、何らかの理由で気道が狭まり、口から息を大きく吸い込んだ時に、のどが振動して出る音のことです。ガラス窓の隙間に風が吹き込むとピューピュー音がするように、狭い気道を空気が通る時に、のどの組織が共鳴して音が出るのです。
もともと睡眠中は、体がリラックスしてのどの筋肉も緩み、気道がやや狭まります。その上、仰向けになると重力で上あごの奥にある軟口蓋や舌の付け根が落ち込み、気道を塞ぎやすくなります。気道を狭める原因には、加齢や肥満、あごの形、口呼吸などがあり、原因によってケアの仕方も異なります。気づきにくいものの、男性の約57%、女性の約40%がいびきをかくともいわれます。自覚がある人もない人も、まずは自分がいびきの原因をもっているかどうか、確認してみましょう。
仰向けになると、重力で軟口蓋や舌の付け根が落ち込み気道が狭まる。酸素を取り込もうと口から息を吸い込み、狭い気道が振動していびきが発生する。
いびきは、睡眠中の無呼吸と低呼吸の有無と回数によって、「単純いびき症」「上気道抵抗症候群」「睡眠時無呼吸症候群」に分けられます(下表参照)。
疲れている時や寝入り端、お酒を飲んだ時、鼻が詰まっている時などは、誰でもいびきをかきやすくなります。このような「単純いびき症」であれば基本的に問題はありませんが、夜中によく目が覚めたり、日中に眠気や疲労を感じたりする場合は注意が必要です。
そもそもいびきは自覚しにくい上、いびきの種類を自分で線引きするのはさらに困難です。時々でもいびきをかくということは、何らかの形で空気の通り道を邪魔しているものがあるということ。その先には低呼吸が起こる可能性があり、さらに日常的にいびきをかく人は、無呼吸が起こっている可能性が非常に高いと考えられます。
今ではスマートフォンやスマートウォッチと連動した睡眠アプリが多数あり、睡眠時間だけでなく、いびきの音や呼吸の状態、中途覚醒なども記録することができます。「自分がいびきをかいているかどうかを知りたい」という人は、活用してみてはいかがでしょう。
いびきによる無呼吸・低呼吸があると、体中が酸欠状態になるだけでなく、呼吸を再開するために脳が頻繁に中途覚醒するので熟睡できません。重症になると1時間に50回以上覚醒することもあり、約1分に1回のペースで起きていれば熟睡できないのは当然です。
無呼吸のまま息が戻らず死亡することはまずありませんが、無呼吸や低呼吸は心臓や脳、ホルモン分泌、自律神経などに悪影響を与え、高血圧や糖尿病、心筋梗塞・脳卒中、不妊、更年期障害、認知症などのリスクを高めることが分かっています。
まさに、いびきは万病の元。400万人から500万人とされる睡眠時無呼吸症候群の潜在患者のうち、治療を受けているのはわずか40万人です。現在は、自宅での簡易検査を行う医療機関が増えています。自覚がある人はもちろん、自覚がなくても、男女共に有病率が急増する40歳を過ぎたら気軽に受診してみましょう。必要があれば、かかりつけ医から専門の医療機関を紹介されます。
いびきが気になったら、「いびき外来」や「睡眠呼吸センター」などの専門外来を受診しましょう。近くにない場合は、鼻づまりがある人は「耳鼻咽喉科」、その他の人は「呼吸器科」や「内科」にまずは相談を。
いびきの相談をすると、まずは問診の上、自宅での簡易検査を行い、異常があれば専門の医療機関に1泊2日の入院をして精密検査を行います。
検査の結果、睡眠中の無呼吸・低呼吸が1時間に5回以上あると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠中の無呼吸や低呼吸が1時間に5〜15回未満は軽症、15〜30回未満は中等症、30回以上は重症とされ、症状の程度に合わせて次の治療を行います。
いびきを改善して熟睡できるようになると、ほほ・口元のたるみや口臭の原因となる「口呼吸」が改善されると共に、睡眠中に「成長ホルモン」がしっかり分泌されるように。成長ホルモンには脂肪を分解し、肌や髪などの新陳代謝を促す働きがあるため、ダイエットやアンチエイジングにもつながります。
いびきの改善法には、次のものがあります。いびきのタイプに応じたケアを行いましょう。
いびきが気になったら、「舌まわし体操」をして舌の筋肉を鍛えましょう。簡単な体操ですが、たるみがちな口周りの筋肉も引き締まり、二重あごやほうれい線の解消にも役立ちます。
最近は、いびきの健康リスクを知り受診する人が増えています。気軽に相談してください。