マスクは「口呼吸」にご用心!かぜなどの感染症にかかりやすくなるかも!?

コロナ禍でマスク着用での生活が当たり前になっています。飛沫を防ぐために必要なマスクですが、息苦しさや話しづらさ、頭痛、肌荒れなどのトラブルに悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。実は、マスクの着用ではもう一つ、口呼吸になりやすいという問題が指摘されています。口呼吸が慢性化してしまうと、かぜやインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるなど、様々な健康上のリスクが生じるといわれます。こうした「マスクの下の口呼吸」について、口と舌の体操「あいうべ体操」の考案者で、鼻呼吸の啓発に取り組んでいる「みらいクリニック」院長の今井一彰先生にお話をうかがいました。
(インタビューは2021年12月10日に行い、内容はその時の状況に基づいています。)

口呼吸はあらゆる健康上のリスクを高めてしまう

口呼吸はあらゆる健康上のリスクを高めてしまう

口から息を吸ったり吐いたりすることを「口呼吸」といいます。この口呼吸は、鼻で行う「鼻呼吸」とどのような違いがあるのでしょうか。

「私たちの本来の呼吸は鼻呼吸です。鼻呼吸では、吸い込んだ空気は鼻毛や粘膜の繊毛、粘液によってウイルスや細菌、塵などが取り除かれ、加温・加湿されて肺に送られます。一方、口呼吸では、鼻のフィルター機能や加温・加湿機能が働かないため、ウイルスや細菌などを含んだ乾いた冷たい空気がそのまま肺に送られます。このことだけでも、鼻呼吸と口呼吸のどちらが健康によいかは明らかです」と語る今井先生。

もう少し詳しく見てみましょう。のどには「ワルダイエルのリンパ輪(りん)」と呼ばれるリンパ組織が存在しています。ここは鼻や口を通った空気が一番始めに当たる部分で、ウイルスや細菌などの外敵とたたかう免疫システムの最前線です。口呼吸はこのリンパ組織への感染リスクを上げてしまい、全身に様々なトラブルを引き起こすと考えられます。

また、口呼吸は口の中が乾燥してしまい、感染のリスクを上げてしまいます。口呼吸だと空気をしっかり加湿することができず、鼻呼吸の時と比べて、気管支入り口の湿度は約20%も低くなります。人は1日に約2万回も呼吸をしているため、湿度20%の差による影響はとても大きいのです。
口呼吸を防ぐよう口を閉じて、鼻呼吸を意識することが大切です。

 

●口呼吸は「ワルダイエルのリンパ輪」の感染リスクを上げる

のどのリンパ組織「ワルダイエルのリンパ輪」

のどの周囲をぐるりと囲むように口蓋扁桃(こうがいへんとう)、舌(ぜつ)扁桃、咽頭(いんとう)扁桃、耳管(じかん)扁桃というリンパ組織があり、これらを「ワルダイエルのリンパ輪」と呼んでいます。口呼吸の習慣があると、特にこの中の口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)に細菌やウイルス感染から慢性の炎症が起こり、全身に様々なトラブルが引き起こされます。

●口呼吸が発症に関係していると考えられる病気・症状の一例
・アレルギーの病気……アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎 など
・呼吸器の病気……かぜ、インフルエンザ、気管支炎、気管支ぜんそく など
・お腹の病気……便秘、下痢、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎 など
・口の中の病気……ドライマウス、口内炎、歯周病、虫歯、歯列不正 など
・心の病気……うつ病、パニック障害、不眠症、全身倦怠感 など

口呼吸と病気

口呼吸が発症に関係すると考えられる病気は、かぜ、インフルエンザといった感染症から、アトピー性皮膚炎や花粉症などアレルギーの病気、虫歯、歯周病、下痢、便秘、うつ病など心の病気まで多岐にわたります。こうした病気や不調に悩む人が、口呼吸から鼻呼吸に戻すことで、長年の症状が改善するケースが少なくないといいます。

自覚のない“習慣性の口呼吸”の人が増えている

「日本人のおよそ8割は口呼吸の傾向がある」と今井先生は指摘します。生まれたばかりの赤ちゃんは鼻だけで呼吸していますが、成長するにつれて様々な原因で口呼吸を始めるようになります。例えば花粉症などの鼻炎やかぜによる鼻づまり、マスクの着用、ため息、おしゃべりなどがきっかけになり得ますが、特別な原因のない“習慣性の口呼吸”の人もかなり多いといいます。

「ただ単に楽だから口呼吸になっている。口呼吸は筋肉をあまり使わないので、鼻呼吸よりも楽なのです。しかも、鼻呼吸の人が急に口呼吸になると、口が渇いたり気管が渇いたりして『何かつらいな』とか『苦しいな』とか感じるものですが、習慣性の口呼吸の方は、気管の粘膜細胞なども変化してしまい、その状態に慣れてしまっているので、つらいという感覚もあまりありません。ですから口呼吸でありながら、自分で気づいていないケースは多いと思います」。

自分が口呼吸になっていないかどうか、次の項目をチェックしてみましょう。

●口呼吸チェック
次のうち、1つでも当てはまれば「口呼吸」をしている可能性があります。

  • いつも口を開けている
  • 口を閉じるとあごに梅干し状の膨らみとシワができる
  • 食べる時、くちゃくちゃ音を立てる
  • 朝、起きた時に喉がヒリヒリする
  • 唇がよく乾く
  • いびきや歯ぎしりがある
  • 口臭が強い
  • たばこを吸っている
  • 激しいスポーツをしている
  • アレルギー性鼻炎や花粉症などの鼻疾患がある

苦しいから楽に流れる⁉マスクで口呼吸になる原因とは

苦しいから楽に流れる⁉マスクで口呼吸になる原因とは

ウイルス感染から守るために、あるいは花粉症や大気汚染などへの対策として着用するマスクも、口呼吸になるきっかけの1つです。マスクをしていると口呼吸になりやすい理由は主に4つ挙げられます。

(1)気道抵抗が上がって鼻呼吸をしにくくなる
「気道抵抗」とは、鼻から肺までの気道に流れる空気の抵抗力のこと。鼻はフィルターの役割を持っているので、空気が通過する時には抵抗が生じますが、マスクを着用するとその繊維が空気の通りを邪魔して、さらに気道抵抗が高まります。そのため鼻だけで呼吸するのが苦しくなり、楽な口呼吸になってしまうのです。

(2)こもった熱を体の外に逃がそうとする
夏場など暑い時期は、マスクをつけて鼻呼吸していると熱がこもりがちに。口から吐く息は熱や水分を逃がすため、体の熱を下げるという反射的な行動で口呼吸になりやすくなります。

(3)口周りの筋肉が衰える
マスクをつけていると表情豊かに話す機会が減り、顔の筋肉をあまり使わなくなります。そのため口周りの筋肉も衰えて、口を開けがちに。特に高齢者や小さな子どもはもともと筋力が弱く、口呼吸になりやすい傾向があります。

(4)人の視線を意識しなくなる
口元がマスクによって隠されているので人の視線を意識しなくなり、つい緊張が緩んでポカンと口を開けてしまいます。

マスクをつけている時こそ、“口を閉じる”意識を持とう

マスクをつけている時こそ、“口を閉じる”意識を持とう

マスクが口呼吸のリスク要因といっても、着用しなければならない状況は、まだ続きそうです。それではマスクをつける時、口呼吸にならないためにはどうしたらよいのでしょうか。

「多くは無意識に行っていることなので、意識づけするしかありません。マスクをしている時の口の状態を自分なりに時々思い返してみるとか、マスクをしている時こそ口を閉じようというような意識を持つことが大切です」。
ただし、リモートワークなどであまり人と会わない場合や、話さないで済む場合は、マスクの下で口にテープを貼り、物理的に閉じてしまう方法もあります。これは鼻呼吸の習慣づけとして通常は就寝時に行いますが、起きている時に行ってもよいそうです。人と会わない、しゃべらないというコロナ禍ならではの状況を逆手に取った方法といえるでしょう。

●口呼吸になりにくいマスクの選び方
現在は多くの人が、ウイルスからの防御機能が高いといわれる不織布のマスクをつけています。マスクを選ぶ際はこうした材質にこだわるだけでなく、口呼吸になりにくい形状のものを選ぶことも大切です。口元とマスクとの間がぴったりと密着していると息苦しくなりやすく、夏場は熱がこもったり蒸れたりしやすいため、立体的で顔の形に添ったものや、口元のワイヤー等で呼吸する空間を確保できるものがよいでしょう

口呼吸になりにくいマスク

さっそく今日から実践しよう!口呼吸を鼻呼吸に戻すためのセルフケア

最後に、口呼吸から鼻呼吸に戻すために今井先生おすすめのセルフケアを3つご紹介します。

●あいうべ体操
口周りの筋肉と舌の筋肉を鍛えるトレーニングです。

上あごにつくのが正しい下の位置

「この体操のねらいは、舌を正しい位置に戻すこと。口を閉じている時、舌が上あごにぴったりとついているのが本来の位置ですが、口呼吸の習慣がある人は舌が下がり、舌と上あごの間に空間ができています。舌の筋肉を強化して正しいポジションに導くことで、自然と口呼吸から鼻呼吸に戻り、体の様々な不調が改善します。また、唾液腺が刺激されて唾液の分泌が盛んになることも、免疫の強化や虫歯の予防に一役買ってくれます。即効性もあり、やっているうちに顔やデコルテのあたりがポカポカと温かくなってきますよ」。

小学校でこの「あいうべ体操」を実践したところ、インフルエンザにかかる児童が激減したという報告(※)もあり、感染症の予防効果も実証されているといいます。
※福岡県の太宰府南小学校では、2012年10月から「あいうべ体操」を取り入れたところ、前年(2011年)2月のインフルエンザ発症者数が1日平均1.6人だったのに対し、2013年2月には0.2人に減少。ほかにも各地の小学校から同様の実例報告が上がっている。

「あいうべ体操」のやり方

あ・・・「あー」と大きく、口の形が丸くなるように開きます。(のどの奥を鏡で見る時くらいに大きく口を開ける)

あいうべ体操:あ

い・・・「いー」と口を大きく真横に広げます。(前歯が見え、ほほの筋肉が耳の前に寄る感じまで大きく引く)

あいうべ体操:い

う・・・「うー」と口を強く前に突き出します。(唇を尖らせて思いきり突き出す)

あいうべ体操:う

べ・・・「べー」と舌を突き出して下に伸ばします。(舌先をあごの先まで伸ばすような気持ちで思いきり伸ばす)

あいうべ体操:べ

<ポイント>
・「あーいーうーべー」で1セットを5秒ほどかけ、1日に30~60セット行います。
・声は出しても出さなくてもOK。声を出したほうがより多くの筋肉が鍛えられ、効果的です。
・1日のうちいつ行ってもOKですが、一番のおすすめは入浴時。口を思い切り大きく開けても口の中が乾燥しません。逆に冬場に寒い戸外で行うのは口の中が乾燥しやすいため、すすめられません。

 

●舌(べろ)回し
同じく、舌と口周りの筋肉を鍛えるトレーニングです。

「あいうべ体操はマスクを取らないとできませんが、舌回しならマスクをつけたままでもできますから、外出が多い人などはより習慣づけしやすいかもしれません。口呼吸の改善に役立つだけでなく、唾液が出て口の中の乾燥を防ぐことができますし、マスク生活であまり使わなくなってしまった表情筋も鍛えられます」。

舌(べろ)回し

舌回しのやり方
1.口を閉じ、唇と歯ぐきの間に舌を入れます。
2.舌を歯ぐきに添わせながら、ゆっくりと回します。

<ポイント>
・右回し、左回しをそれぞれ10回でワンセット。1日1セットから始めて2セット、3セットと増やしていってみましょう。

 

●マウステーピング
就寝時に口にテープを貼り、口呼吸を鼻呼吸へと自然に変える方法です。

「テープで口を閉じることで就寝中の口呼吸が抑えられ、口の中が潤います。鼻呼吸になることで感染予防に役立つだけでなく、よく眠れるようになったり、うつっぽい気分が改善したりと、いろいろな不調の改善が期待できます。マウステープの前にあいうべ体操や舌回しを行うと、さらに効果的です」。

マウステーピング

マウステーピングのやり方
1.サージカルテープ(医療用の紙テープ)を用意します。
2.5cmほどに切り、口を閉じて唇の中央に縦に貼ります。
3.朝、目が覚めたら、テープをはがします。

<ポイント>
・テープは幅12mm程度のものがおすすめです。
・テープは強く貼る必要はありません。軽く貼りましょう。
・安全を考慮し、5歳以下の子どもは行わないようにしてください。


「のどを守るためにマスクをつけて寝るという人がいますが、お話ししたようにマスクをつけることで逆に口呼吸を招いてしまうので、おすすめできません。寝室の乾燥が気になってマスクをつけたい場合は、口にテープを貼ったうえで、マスクの上部(鼻の穴が当たる部分)を少し水に湿らせてからつけるか、同じ部分に濡れたガーゼをかぶせて休むと局所的な乾燥を防ぐことができ、楽になります。この方法は寝る時だけでなく、起きている時にも応用できます。また日中は、飲み物で十分に水分を補給することも大切です」。

口呼吸の人が「あいうべ体操」を行った場合、2週間くらい続けると効果が実感できるようになり、マウステーピングの場合は、翌朝にはもう違いが感じられるといいます。マスクの着用を避けられない今こそ、鼻呼吸の大切さに目を向け、心身をより健康に導くチャンスです。口呼吸になりにくいマスクを選び、3つのセルフケアをさっそく今日から実践してみませんか。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

監修プロフィール
みらいクリニック 院長 いまい・かずあき 今井 一彰 先生

1995年山口大学医学部卒業。内科医、日本東洋医学会漢方専門医、NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事。息育、口呼吸問題の第一人者として全国を講演で回る日々。「あいうべ体操」、「ゆびのば体操」の考案者であり、TV、ラジオ等への出演多数。漢方治療の他、上咽頭炎治療(Bスポット)も行う。著書に『健康でいたければ鼻呼吸にしなさい』(河出書房新社)、『免疫力を上げ自律神経を整える舌トレ』(かんき出版)、『世界一簡単な驚きの健康法 マウステーピング』(幻冬舎)など。

監修プロフィール
みらいクリニック 院長 いまい・かずあき 今井 一彰 先生

1995年山口大学医学部卒業。内科医、日本東洋医学会漢方専門医、NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事。息育、口呼吸問題の第一人者として全国を講演で回る日々。「あいうべ体操」、「ゆびのば体操」の考案者であり、TV、ラジオ等への出演多数。漢方治療の他、上咽頭炎治療(Bスポット)も行う。著書に『健康でいたければ鼻呼吸にしなさい』(河出書房新社)、『免疫力を上げ自律神経を整える舌トレ』(かんき出版)、『世界一簡単な驚きの健康法 マウステーピング』(幻冬舎)など。

健康情報サイト