花粉症のセルフメディケーション

花粉症の症状やそのつらさは人それぞれ。自分の状態やライフスタイルに合わせて選択できる市販薬も上手に活用し、これから本格的なシーズンを迎える花粉症を乗り切りましょう。

監修プロフィール
松脇クリニック品川 院長 まつわき・よしのり 松脇 由典 先生

東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。同大学耳鼻咽喉科講座講師などを経て、2016年松脇クリニック品川を開院。長年にわたり鼻科を専門とし、好酸球性副鼻腔炎に対する治療や内視鏡手術を得意とする。日本鼻科学会「嗅覚障害診療ガイドライン」の作成メンバーとしても活躍。

どうして花粉症になるの?花粉症が起こるメカニズム

花粉症は、本来は有害ではない花粉を敵だと判断し、それを排除しようと免疫機能が過剰に反応してしまうアレルギー疾患の1つです。そのメカニズムを知っておくと、治療や薬選びに役立ちます。

花粉が起こるメカニズム

花粉症は、目や鼻以外にも様々な症状が現れます

花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、目のかゆみですが、それ以外にも次のような様々な症状が現れます。

花粉症で現れる症状

<花粉症で現れる症状>
●咳
・・・気道全体の過敏性が高まるため、痰(たん)の絡まない乾いた咳が出やすくなります。
●のどのかゆみ・・・のどの粘膜に花粉が付着し、アレルギー反応が起こることでかゆみが生じます。いがらっぽさを感じることも。
●発熱・・・体内に入った花粉に対するアレルギー反応で熱が出ることも。37度台前半の微熱で、高熱になることはほとんどありません。
●眠気・・・体のアレルギー反応で眠気を引き起こすことも。鼻づまりによる睡眠不足も要因に。
●頭痛・・・粘膜の炎症から、まれに頭痛や頭の重さを感じることも。ただし、痛みを伴う副鼻腔炎に至ることは極めて珍しいです。
●肌荒れ・・・花粉の付着により、まぶたや頬、首などの皮膚が炎症を起こす「花粉皮膚炎」になることも。季節的に乾燥しやすく肌のバリア機能が低下することも一因に。かゆみが出て赤く腫はれ、発疹のようになる人もいます。花粉皮膚炎は花粉症の時季だけのもので、長引く場合はアトピーの可能性があるので、皮膚科の医師に相談を。
●口のかゆみ・・・花粉と抗原性が似ている果物や野菜、例えばスギ花粉ならりんごやさくらんぼを食べると口の中やのどがかゆくなる口腔アレルギー症候群を発症する人もいます。これは季節に関係なく起こり、アナフィラキシーショックのような重篤な症状を起こす危険性もあるため、特定の果物や野菜を食べて異常を感じたらアレルギー専門の医師に必ず相談しましょう。

また、これらの諸症状が原因となり、集中力が低下したりイライラしたりするのも、花粉症の特徴といえるでしょう。

●花粉症とかぜの見分け方
花粉症には、鼻みずやくしゃみなどかぜと重なる症状がありますが、下記の通りそれぞれの現れ方が異なります。花粉症なのかかぜなのか見分ける1つの指標にしてみては?……気道全体の過敏性が高まるため、痰(たん)の絡まない乾いた咳が出やすくなります。

花粉症とかぜの見分け方

花粉症には、「くしゃみ・鼻漏(びろう)型」「鼻閉(びへい)型」「充全型」の3タイプがある

花粉症は自分にとって何が一番つらい症状かという主観を基準に大きく次の3つのタイプに分けられます。タイプやその症状が中等症以上かどうかで、治療法や薬が異なります。

花粉症の3タイプ

<花粉症のタイプ>
●くしゃみ・鼻漏型・・・くしゃみと鼻みずがほぼ同じ程度に発症し、鼻づまりよりも重症な状態。1日平均でくしゃみと鼻をかむ回数が6回以上で、鼻づまりによる口呼吸が全くない場合は、このタイプの中等症以上になります。
●鼻閉型・・・くしゃみ・鼻みずは軽度で、鼻づまりが重症な状態。鼻づまりが強く口呼吸があり、くしゃみや鼻をかむ回数が1日5回以下の場合は、このタイプの中等症以上になります。
●充全型・・・くしゃみ・鼻みず、鼻づまりがいずれも同程度の場合を指します。くしゃみと鼻をかむ回数が1日6回以上で、鼻づまりが強く口呼吸がある場合は、このタイプの中等症以上になります。

自分のタイプや症状の重さを知ることは症状改善への第一歩になるでしょう。

花粉症は、年齢、場所や時間帯によって症状の重さが変わることも

一般的に、免疫機能の高い若い世代はアレルギー反応が強く出るため症状も重くなる傾向があります。それが年齢と共に免疫機能は低下してくるので、アレルギー反応も弱まり、症状は落ち着いてきます。

生活面では花粉との接触をできるだけ避けることが基本ですが、見落としがちなのが、花粉が飛散する時間帯と自分が住んでいる場所の関係。花粉は朝、気温が上がり太陽の光が当たることで飛び始めます。山間部で朝に飛散した花粉は昼頃に市街地へ到達。その後いったん落ち着きますが、気温が下がる夕方になると上空を舞っていた花粉に水滴がつき、地表まで落ちてきます。つまり、山間部での花粉のピークは早朝、市街地でのピークは昼頃と夕方ということです。

このように場所によって花粉が多く飛散する時間帯は異なり、症状の現れ方にも影響します。例えば市街地にお住まいなら、ジョギングなどは早朝に行うなど、対策を工夫しましょう。

●黄砂とPM2.5にも要注意!
花粉と時季を同じくして飛散が増えるのが黄砂とPM2.5。どちらも花粉より小さく、花粉症の症状を悪化させます。環境省の「そらまめ君」( http://soramame.taiki.go.jp/)で飛散の状況をチェックしましょう。

花粉、黄砂、PM2.5の大きさ

花粉症の治療法には、大きく4つの方法があります

花粉症の治療法は、スギ花粉症では4段階に分けられます。どの治療で対応するかは、自分にとって花粉症がどのくらい重篤なものか、生活の質(QOL)をどの程度低下させているかで選択するとよいでしょう。

例えば林業従事者など、花粉が多い場所で集中力を要する仕事をしている人は、より高度な治療を受けることをおすすめします。逆に症状があまりひどくなく日常生活に支障が出ていないのであれば、マスクをしたり、外出を控えたりすることで十分な場合もあります。

<花粉症の治療法>
①投薬療法・・・症状に合わせた薬を使用することで症状を緩和する。
②免疫療法・・・主に行われているのが舌下免疫療法で、舌の下に抗原エキスを含む薬剤を保持し、1、2分後にのみ込むことでアレルギー反応が現れにくい体質をつくる。
③手術療法・・・くしゃみや鼻みずの司令を出す神経を切断する後鼻(こうび)神経切断術を行い、アレルギー反応を抑える。鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)や粘膜が厚くなった肥厚性鼻炎ひ こうせいびえん)などを伴っている場合も、形態改善手術を施して鼻のつまりを治すことができる。
④抗体療法・・・昨シーズンから認められた最新の治療法。抗IgE抗体を月1回注射することで、体内にあるIgE抗体をなくしアレルギー反応を抑える。

花粉症の治療法

花粉症の市販薬は、医療用医薬品と同じ成分を使ったものも増えています

忙しくて医療機関に行く時間がとれない場合や急な症状で何とかしたい時に、ドラッグストアなどで購入できる市販薬は生活者の強い味方。市販薬は効き目が弱いと思われがちですが、近年、病院など医療機関でもらう薬と同じ成分を同じ量で、安全性も十分考慮したうえで配合した「スイッチOTC」が増えています。

花粉症のタイプや重症度について先ほど触れましたが、医療機関でもらう薬もこのタイプと重症度を基準に処方されます。軽症の場合はどのタイプも同じ処方薬ですが、中等症以上になると、「くしゃみ・鼻漏型」と「鼻閉型」「充全型」では使用する薬も違うものに。このうち、全てのタイプに使用することが推奨され、特に軽症の方や初期療法では単独でも効果を示す第2世代抗ヒスタミン薬はスイッチOTCとしても市販されており、自分の症状に合ったものを選んで購入することができます。

一方、中等症以上の「鼻閉型」や「充全型」に処方される抗ロイコトリエン薬は市販薬がまだありませんので、医療機関を受診しましょう。

花粉症の症状と市販薬

箱の裏面や添付文書は確認するようにしましょう。花粉症の薬によく使われている抗ヒスタミン薬には第1世代と第2世代があり、それぞれ効き方が異なるので、この違いを知っておくだけでも、自分に合う薬を賢く選択できます。

●第1世代抗ヒスタミン薬
主な成分名……マレイン酸カルビノキサミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩など.
症状を引き起こす原因物質のヒスタミンが神経に伝わったり、血管に作用したりするのを防ぐ。効き目のキレがよく、既につらい症状が出ている場合に有効。眠気や口の渇きなどの副作用が出る場合もある。

●第2世代抗ヒスタミン薬

主な成分名……ロラタジン、フェキソフェナジン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩など.
医療用医薬品から市販薬になったスイッチOTCが多い。ヒスタミンを放出させない作用もあり、花粉が飛散する早い段階や症状が軽いうちからのむのが効果的。眠気や口の渇きなどの副作用が出にくいのも特徴。

第2世代抗ヒスタミン薬は、第1世代より眠くなりにくいなど、副作用が出にくいことから使用する人が増えています。服用回数が1日1回のものや、服用後の自動車の運転が認められているもの、水なしでのめるものなど様々な種類がありますので、より自分のライフスタイルに合ったものを選びましょう。

同じ薬でも人によって症状の改善や副作用に違いが生じます。選択肢も増えているので、合わない薬は無理に続けず、薬剤師に相談しながら自分に合う薬を探してください。

花粉症の症状に対する市販薬を選ぶポイントは?

箱の裏面や添付文書は確認するようにしましょう。花粉症の薬によく使われている抗ヒスタミン薬には第1世代と第2世代があり、それぞれ効き方が異なるので、この違いを知っておくだけでも、自分に合う薬を賢く選択できます。

●第1世代抗ヒスタミン薬
主な成分名……マレイン酸カルビノキサミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩など

症状を引き起こす原因物質のヒスタミンが神経に伝わったり、血管に作用したりするのを防ぐ。効き目のキレがよく、既につらい症状が出ている場合に有効。眠気や口の渇きなどの副作用が出る場合もある。

●第2世代抗ヒスタミン薬
主な成分名……ロラタジン、フェキソフェナジン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩など

医療用医薬品から市販薬になったスイッチOTCが多い。ヒスタミンを放出させない作用もあり、花粉が飛散する早い段階や症状が軽いうちからのむのが効果的。眠気や口の渇きなどの副作用が出にくいのも特徴。

第2世代抗ヒスタミン薬は、第1世代より眠くなりにくいなど、副作用が出にくいことから使用する人が増えています。服用回数が1日1回のものや、服用後の自動車の運転が認められているもの、水なしでのめるものなど様々な種類がありますので、より自分のライフスタイルに合ったものを選びましょう。

同じ薬でも人によって症状の改善や副作用に違いが生じます。選択肢も増えているので、合わない薬は無理に続けず、薬剤師に相談しながら自分に合う薬を探してください。

市販薬をずっと使い続けても大丈夫?

花粉症の症状に対する薬を効果的に使用するには継続が大切。毎日の服用で症状をブロックする状態が維持できるのです。また、花粉症シーズンの3カ月程度の使用であれば、依存性の心配もありません。

ただし、注意が必要な場合もあります。血管収縮成分の入った点鼻薬は使用頻度が異常に増えてしまうと逆に悪化することも。また、解熱鎮痛剤や咳止め、かぜ薬などと同時に服用すると、成分が重複して副作用が現れることもあります。花粉症の薬に限らずどの薬にも言えることですが、市販薬で症状が改善しない、あるいは使用に不安がある場合は医師や薬剤師に相談すること。そして用法・用量を守り正しく使うことが肝要です。

花粉症の市販薬

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