かぜとコロナの違いは?コロナ禍における、かぜ症状が現れた時の対応

発熱やのどの痛みなどのかぜ様症状が現れた場合、一般的なかぜ(普通感冒)なのか、新型コロナウイルスの感染によるものなのか区別がつきにくく、どのように対応したらよいのか迷ってしまうケースがあります。新型コロナウイルスの検査をすぐに受けられない時や、検査結果が出るまでの間の対症療法、自宅療養中の適切なケアについて、公衆衛生の専門家で厚生労働省アドバイザリーボードのメンバーでもある国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治先生にお話をうかがいました。

(インタビューは2022年3月16日に行い、内容はその時の状況に基づいています。)

監修プロフィール
国際医療福祉 大学医学部 公衆衛生学 教授 わだ・こうじ 和田 耕治 先生

福岡県北九州市出身。2000年産業医科大学医学部卒業。カナダMcGill(マギル)大学産業保健修士・ポストドクトラルフェロー、北里大学大学院博士課程修了。北里大学医学部公衆衛生学准教授、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師等を経て、2018年より現職。専門は公衆衛生、産業保健、健康危機管理、感染症、疫学。著書に『企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル』(東洋経済新報社)。株式会社日本医事新報社 「識者の眼」などに執筆、YouTubeやTwitterでも情報を発信中。

新型コロナウイルスオミクロン株大流行の経験を振り返って

新型コロナウイルスオミクロン株大流行の経験を振り返って

新型コロナウイルス感染症は2019年末の流行開始以降、次々と変異し、アルファ株、デルタ株、オミクロン株などの変異株が登場し、感染拡大を続けています。オミクロン株はこれまでの新型コロナウイルスにも増して感染力が強く、2022年2月上旬には1日の新規感染者数が全国で10万人を超えたこともありました。一方で、オミクロン株はのどの痛みや咳などのかぜ様症状が中心で、肺炎などの重症化のリスクは下がってきたともいわれています。これまでにどのようなことが分かってきたのでしょうか。

「新型コロナウイルスオミクロン株の特徴の1つは、ウイルスを吸い込んで(ばく露)されてから発症までが速くなったことです。これまでの新型コロナウイルスはばく露後に発症するまでの期間が5日程度だったのが、ウイルスの増殖が速くなったことも関係して、2日ほどで発症しています。でも、ワクチン接種をしている方の多くは重症化せず、1日か2日の症状で治ってしまう。ワクチン接種した人では本当に軽い人も若い人には多いようです」と語る和田先生。

新型コロナウイルスのワクチン接種が2回の人は半年が経つと発症を予防する効果や重症化を予防する効果が減弱しています。3回目の接種をすることで、もう一度免疫が高まります。

「オミクロン株になって確かに重症化する人の割合は下がってきてはいるものの、高齢者が新型コロナウイルスに感染した場合のリスクはそれ相応に残っています。新型コロナウイルスの変異株ごとにだんだん弱毒化するという人もいますが、少なくともデルタ株の出現では病原性は高まったのです。また、新型コロナウイルスのワクチン接種をしていない方にはオミクロン株でも脅威です。引き続き警戒も必要なだけに、受けられる人は3回目の接種までしっかりと受け、感染を防ぐ対策をとっていくことが大事です」※1

※1
新型コロナウイルスに感染した場合に重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方です。重症化のリスクとなる基礎疾患等には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満、喫煙などがあります。

新型コロナウイルスを疑う症状が出た人の割合と、その対応

2022年3月に東京都の3,142人を対象に行った調査では、1月~2月の期間に発熱、咳、のどの痛みなどコロナを疑う症状が1日以上あった人は17%、PCR検査を受けた人は8%、さらには、コロナと診断された人は約3%でした。かぜ様症状があっても、実際にPCR検査を受けた人は約47%でした。(データ提供:和田耕治先生)


データ1 この期間に発熱、せき、咽頭痛のいずれかを1日以上経験しましたか?

コロナを疑う症状が出た人の割合と、その対応(この期間に発熱、せき、咽頭痛のいずれかを1日以上経験しましたか?)

データ2 この期間に新型コロナウイルス感染症の症状があり、PCR検査を受けましたか?

コロナを疑う症状が出た人の割合と、その対応(この期間に新型コロナウイルス感染症の症状があり、PCR検査を受けましたか?)

コロナ禍で、かぜのような症状が現れた場合はどのような対応をすべき?

コロナ禍で、風邪のような症状が現れた場合はどのような対応をすべき?

新型コロナウイルスのオミクロン株の症状はかぜの症状と見分けがつきにくいといわれていますが、のどの痛みや微熱などの症状が出た場合は、どのような対応をすればよいでしょうか。

「かぜのような症状が出た時にまずやらなくてはいけないのは、外に出ないこと、人と会わないことです。日本ではどうしても『うつらない(感染しない)』→『うつさない(感染させない)』という順番で語られますが、海外では、『うつさない』→『うつらない』ことで語られます。新型コロナウイルスの感染を広げないために、かぜのような症状がある際には他の人にうつさないことが、オミクロン株では特に重要だと思います」。

かぜなのかコロナなのか分からない段階でも、疑わしい場合は万一を想定して自宅療養が必要ということです。仕事をしている人は出勤を控え、家庭内でも家族との接触をできる限り減らすといった対処が求められます。※2

発熱、のどの痛み、せきといったかぜ様症状に対しては、市販のかぜ薬(総合感冒薬)や解熱鎮痛剤などを服用しても問題ないといいます。

「かぜ薬や解熱鎮痛剤は治療のためではなく、あくまでもつらい症状を抑えて自然な回復を助けるためです。日ごろ使い慣れているものを用法・用量を守って使ってください」。

それでは、すぐに医療機関を受診したほうがよいのはどのようなケースでしょうか。

「呼吸が苦しい、ふらつく、意識が悪いといった場合や、食事が摂れない、水分が1日以上摂れないといった場合です。つらいと思ったら早めに受診することです。土日になると休診の医療機関も多く、なかなか受診が難しいことがありますから、平日に受診するように心がけるとよいでしょう」。

因みに医療機関を受診する際は、まず電話で連絡して状態を説明するのがベストです。そうすることで、他の患者さんと受付を別にするなど医療機関側も適切な準備ができます。発熱外来のある近くの医療機関は、あらかじめ調べておきましょう。

かぜ様症状が現れた場合、新型コロナウイルスの検査は受けるべきなのでしょうか。

「かぜのような症状があれば何らかの手段で新型コロナウイルスの検査を受けていただきたいと思います。一番よいのは受診して医療従事者のいるところで検査をすることです。しかし、なかなか受診できないとか、近くに検査ができる場所がない、人に知られたくないといった場合は、郵送のPCR検査を利用するか、検査キットを購入して自己採取も選択肢になっています。検査キットを症状のある方や濃厚接触者に郵送している自治体もあります」。

※2
新型コロナウイルスに感染した人が他の人に感染させてしまう可能性がある期間は、発症の2日前から発症後 7~10日間程度とされています。かぜ様症状があった方で、検査を受けずに回復した方が職場や学校に復帰するタイミングについてはいろいろな見解がありますが、和田先生は「症状が軽快してから72時間経過」を目安にすることを提案しています。この段階では発症から6~7日程度が経過していることが想定され、ウイルス排出の可能性も下がっていると考えられるためです。

自宅療養に備えて、日頃から用意しておきたいものは?

自宅療養に備えて、日頃から用意しておきたいものは?

自宅療養中は本人だけでなく、同居している家族も濃厚接触者であれば外出は控える必要があります。自治体によっては検査で新型コロナウイルス感染と判明した人に対して食料等の配送を行っていますが、自宅療養開始後すぐには届かない可能性もあるため、いざという時に困らないように、食料品や日用品などを備えておくと安心です。ネットスーパーや宅配(置き配)などを利用する方法もよいでしょう。

なお、食料はインスタント食品やレトルト食品などの他、ゼリー飲料やヨーグルト、果物など食欲がない時や発熱時にも摂りやすい物を常備しておくと役立ちます。かぜ薬等の市販薬は使い慣れている物で、使用期限が切れていないかを確認しておきましょう。

自宅療養のための備品リスト

□3日分以上の食料、水分
□総合感冒薬(かぜ薬)
□解熱鎮痛剤
□トローチ、のど飴、せき止め
□体温計
□抗原検査キット

自宅療養のための備品リスト(3日分以上の食料、水分、総合感冒薬、かぜ薬、解熱鎮痛剤、トローチ、のど飴、せき止め、体温計、抗原検査キット)

新型コロナウイルスの家庭内感染を防ぐコツは、早く“気づく”こと

新型コロナウイルスの家庭内感染を防ぐコツは、早く“気づく”こと

新型コロナウイルスは家庭内で感染するケースも多く、同居する家族がいる場合は、家庭内感染を防ぐことが大変重要です。そのためには、早く“気づく”ことが大切と和田先生は語ります。

「のどの痛みや発熱のかぜ様症状があった時、あるいは家族からそうした訴えがあった時に、『あっ!』と思うことが大事です。ところが多くの方はそこで様子を見てしまう。自分はきっと大丈夫という正常性バイアスに流されてしまうのですね。『あっ!』と思って、例えば食事を別にする、寝室を分けるなどすぐに対策を講じれば、家庭内感染は抑えることができます。気づいた時にすぐに対策することを心がけてください」。

とはいえ、実際は家族間の感染を防ぐのはなかなか難しく、特に小さな子どもがいる場合などは感染を防ぎきれないケースも少なくないでしょう。

「家庭内感染は、感染対策が悪かったというわけではありませんから、引き続き対策を講ずることが大切です」。

新型コロナウイルスの家庭内感染を防ぐポイント

自分や家族に新型コロナウイルス感染が疑われる症状が現れた時は、次のことを心がけましょう。

●できるだけ別室で過ごす(発症から1週間程度は継続)食事を分ける 寝室を分ける
●家の中でもマスクをつける
●こまめに手を洗う
●定期的に換気をする
●タオルなどを共有しない
●感染が疑われる人は最後に入浴する


体験談 新型コロナウイルスの家庭内感染を防いだAさんご一家のケース

2月18日の夕方、学童から帰ってきた小学校1年生の息子が「頭が痛い」と珍しく不調を口にしました。新型コロナウイルスの感染を疑って体温を測ったところ、37.5℃。平熱は36.8℃くらいでしたので、これはもう間違いないと。すぐに仕事中だった夫に電話をし、家へ戻らずに実家で自粛生活をするよう伝えました。翌日、病院で検査を受けたところ、やはり陽性。私は息子を看病しながら10日間を同じ家で過ごしましたが、幸いにも感染せずに済みました。徹底したのがゾーニング。家が3階建てで、トイレが1階と3階の2カ所にあることなど住環境的にもよかったのだと思います。息子は3階のトイレ、私は1階のトイレを使用し、洗面所を使うのは息子だけ。息子にはキッチンには入らないようお願いをする。床にテープを貼って、「○○くんが入っていいのは、ここまでね」などと遊び感覚で行いました。もちろん、マスクは常時着用。食事も一人ずつ順番に食べ、さらに黙食も徹底しました。一緒に話しながら食事ができないのでせつない気持ちになりましたが、息子が「おいしい」を言えない代わりに「おいしかったスタンプ」を作ってくれて(涙)。息子は発熱した翌日は40℃くらいまで体温が上がり、気が気ではありませんでしたが、その翌日には熱も引き、すっかり元気になりました。

新型コロナウイルスの家庭内感染を防いだAさんご一家のケース(お子さんが作ったおいしかったスタンプ)

私たちはこれから、新型コロナウイルスとどう向き合ったらよい?

最後に和田先生に、これから私たちが新型コロナウイルスとどう向き合っていけばよいのかをお聞きしました。

「今後の予測はやはり難しいというのが大前提ですが、今後も変異株が出現するだろうという想定をしておくことが、少なくとも新型コロナウイルス対策を考える上では必要だと思っています。次に出てくる変異ウイルスのことを考えると、やはりワクチンがだんだん効きにくくなる可能性はありますので、自分がコロナに感染するなんてと今までは思っていた人も感染する可能性が出てきます。そのためそれぞれがきちんと感染対策を継続し、備えをしておくことは非常に大事です。

さらにもう一言だけつけ加えると、コロナが収束したら何とかしようという考え方も修正していく必要があると思っています。やるべきことは感染に気をつけながらやるしかありません。気をつけながら、できることを増やしていくことがとても大事だと思います」。

◆新型コロナウイルスに関する最新情報は、厚生労働省HPを参照してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html


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