胃炎・胃もたれ

胃炎・胃もたれ

何らかの原因で胃粘膜に炎症が起こり、傷ついた状態を胃炎といいます。突然、激しい胃の痛みを起こす急性胃炎に対し、慢性胃炎はなんとなく胃の調子が悪い、胃もたれがするという状態がくり返し、あるいは継続的に起こるのが特徴です。ここでは主に、慢性胃炎について解説していきます。

監修プロフィール
江田クリニック院長 えだ・あかし 江田 証 先生

自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。

胃炎・胃もたれについて知る


胃炎・胃もたれの原因・症状

ピロリ菌感染により起こりやすい「慢性胃炎」

慢性胃炎は胃の粘膜に継続的に炎症が起こっている状態で、多くはピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が原因であることが明らかになっています。ピロリ菌は胃の粘膜にすみつく細菌で、ピロリ菌の出す毒素やアンモニアが胃粘膜の表面の細胞を破壊し、胃粘膜の抵抗力を弱めることで胃に炎症を引き起こすと考えられています。

慢性胃炎の症状としては、みぞおち付近の痛み、胃もたれ、早期満腹感、腹部膨満感、食欲不振などが現れます。

ピロリ菌は衛生環境の整っていない所で感染しやすい細菌で、日本では衛生環境が未整備だった時代に生まれた60代以上の人に感染者が多く見られますが、感染者の多くは、慢性的な胃の不調に慣れてしまい、自覚症状がなく、健康診断などの胃の検査で初めて、胃炎と判断されるケースも少なくありません。


慢性胃炎はストレスや不規則な生活、食習慣も関係

胃の健康には日頃のライフスタイルが大きく関係しています。現代人に胃の不調を訴える人が多い背景には、ストレス、不規則な生活、食習慣の変化などがあると考えられています。

胃は特にストレスの影響を受けやすい臓器として知られており、ストレスが原因で胃炎や機能性ディスペプシア(下記参照)といった、胃のトラブルを起こすケースは近年、目立って増えています。香辛料やカフェイン、アルコールなどの刺激物は胃酸の分泌を過剰にし、胃粘膜を傷つけるため、慢性胃炎の一因となります。

胃のトラブルの原因となるストレス

仕事、家庭、人間関係、環境の変化、不規則な生活など様々なストレスを抱える現代人にとって、胃のトラブルは身近な病気。

胃のトラブルの原因となるストレス

胃もたれは「機能性ディスペプシア」の可能性も

検査をしても原因となる病気や炎症が見当たらないのに、胃もたれなどの胃の不快症状が続くケースがあります。こうした状態を「機能性ディスペプシア」といいます。自律神経の働きが乱れると、胃の機能が低下する「運動機能異常」や、胃酸の刺激に敏感になる「内臓知覚過敏」となり、胃の炎症などがない状態でも、みぞおちを中心に様々な不快症状が現れます。代表的な症状としては、胃もたれ、早期満腹感、胃痛(みぞおちの痛みや灼熱感)です。

機能性ディスペプシアの人の多くは、十分な睡眠がとれていない、食事の時間が不規則、野菜の摂取量が不足しているといった生活の乱れが見られることが特徴。症状の改善には薬物療法と共に、生活改善を図ることも重要になってきます。

機能性ディスペプシアの原因と主な症状

①運動機能異常
・早期満腹感……胃の上部が十分に膨らまず、食べた物が少量しかためられない。
・胃もたれ……食べた物を十二指腸に送り出す動きが停滞。食べた物が長時間胃に留まる。

機能性ディスペプシアの原因と主な症状

②内臓知覚過敏
・胃痛……胃が知覚過敏になって、少量の胃酸の刺激にも敏感になる。

機能性ディスペプシアの原因と主な症状

胃炎・胃もたれの対策

胃炎・胃もたれは市販の胃薬を上手に活用しよう

胃炎・胃もたれには、市販薬を活用するのも一案です。胃の不調の多くは、胃酸過多を原因とするものがほとんどです。胃酸を中和したり分泌を抑えたりする薬、幅広い症状に対応する「総合胃腸薬」「漢方胃腸薬」もおすすめです。薬選びに迷ったら、薬剤師に相談しましょう。

胃薬のバリエーション

効果 種類 特長
胃の不快感に幅広く対応する 総合胃腸薬 健胃薬、制酸薬、消化薬、胃粘膜保護薬などの成分を配合し、幅広い胃の症状に対応する。
漢方胃腸薬 生薬を原料とし、胃の本来の働きを取り戻すことにより、胃の様々な不調を改善する。
胃酸を中和する 制酸薬 生薬を原料とし、胃の本来の働きを取り戻すことにより、胃の様々な不調を改善する。
消化を助ける 消化薬 消化を助ける酵素を含み、胃液分泌の不足による不調や食べ過ぎによる不調を改善。
胃の働きを高める 健胃薬 胃液の分泌を促したり、胃のぜん動運動を活発にする作用をもつ。
胃粘膜を保護する 胃粘膜保護薬 胃粘膜を胃酸やペプシンの攻撃から守ると共に、荒れた胃粘膜の修復や再生を促進する
胃酸の分泌を抑える H2ブロッカー 胃酸の過剰な分泌を抑えて胃の粘膜が傷つくことを防ぎ、胃の炎症による不調を改善する。

胃炎の原因となるピロリ菌の検査を受け、感染の場合は除菌を

ピロリ菌は慢性胃炎の他、胃・十二指腸潰瘍、胃がんの発症にも関係しているとされます。症状の有無に関係なく、一度はピロリ菌検査で感染しているかどうかを確認しておくとよいでしょう。

検査で感染が分かった場合は、早めに除菌しましょう。2種類の抗生物質と胃酸分泌抑制薬を1週間服用するのが一般的な除菌方法です。胃炎や胃・十二指腸潰瘍を発症している場合は、保険適用となります。

除菌によって症状が改善するケースが多いことは分かっていますが、胃がんなどの発症リスクがすぐに低下するわけではないので、除菌後も年1回は胃の検査を受けることをおすすめします。

胃がんリスク

胃炎・胃もたれの予防法

ストレスマネジメントを心がけよう

胃炎・胃もたれの原因にはストレスが大きく関係していますが、ストレスフリーの生活を目指すのは非現実的。ストレスを上手にコントロールすることを目指しましょう。

そのベースとして規則正しい生活で自律神経を整えておくことが必要です。規則正しい生活は、食事の時間を一定にすることで実践できます。胃腸の働きにリズムができ、胃腸の機能も高まります。

睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、胃炎・胃もたれの原因となります。十分な睡眠をとるようにしましょう。運動や娯楽など好きなことをする時間をつくり、ストレスを上手に発散することも大切です。


胃酸過多につながる食生活を改めよう

暴飲暴食、脂質の摂り過ぎなど、胃酸過多になる食生活は改めましょう。寝る直前の飲食、香辛料などの刺激物、コーヒーなどカフェイン飲料の摂り過ぎも胃に負担をかけてしまいます。

また、喫煙習慣もNGです。タバコを吸うと胃の血流が悪くなり、胃粘膜の抵抗力や胃の機能低下につながります。

胃に負担をかけないセルフケア

お役立ちコラム

子どもの胃のトラブルの対処法

子どもの場合、ストレスの影響が腹痛や嘔吐などの症状として現れることがよく見られます。特に、弟や妹が生まれた、新学期が始まったというような生活環境の変化があった時に発症しやすくなります。子どもの場合は、実際の病名が明確にならないことがほとんどですが、胃の機能異常などが起きている可能性も考えられます。

保護者は子どもとのスキンシップを大切にして安心感を与えることで、子どものストレスケアに努めましょう。その上で2、3日様子を見て症状が治まらない場合は、小児科を受診するとよいでしょう。

子どもに安心感を与えよう

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