頻尿とは、今までよりもトイレが近いと感じたり、今までよりも尿の回数が明らかに多い症状のことを指します。1日に膀胱から排出される尿の量は約2,000mLですが、膀胱は一度に300mL程度の尿をためて排尿するので、1日7回ほど排尿をするのが普通となります。そのため、一般的には1日の排尿回数が8回以上の場合を頻尿といいますが、水分摂取量や1回の排尿量には個人差があり、一概には線引きできません。
1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。藤田医科大学医学部名誉教授。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。
いわゆる「トイレが近い」という症状の頻尿を招く疾患は数多くありますが、男女共に多くの方が悩んでいるのが「過活動膀胱」です。「過活動膀胱」は、尿が膀胱にたまりきっていないのに膀胱が勝手に収縮し、尿意をもよおしてしまう病気です。
そもそも排尿は、膀胱の筋肉である「排尿筋」が収縮し、尿道がゆるむことで起こりますが、排尿のゴーサインの指令を出すのは脳です。膀胱に尿がたまって尿意を感じても、しばらく我慢できるのは脳がコントロールしているからですが、脳と膀胱・尿道を結ぶ神経に障害が起きたり、骨盤底筋(膀胱や腸、女性の場合は子宮を支える筋肉)がゆるんだりすると、過活動膀胱の症状が出てきてしまいます。
老化現象であることが多く、日本では800万人以上の男女が罹患し40歳以上の約12%、80歳以上になると30%ほどの人に発症する頻度の高い病気です。その多くに「尿もれ(尿失禁)」も見られます。命を左右する病気ではありませんが、トイレに関する不安からQOL(生活の質)の低下につながってしまいます。
頻尿は泌尿器の病気を始め、糖尿病などでも起こります。主に以下のような病気が頻尿の原因になります。
膀胱・尿道の病気もなく、尿量が正常でも、トイレのことが気になって何回も行ってしまうのが「心因性頻尿」です。膀胱は精神的な作用を受けやすい臓器の1つで、緊張や不安など心の状態が影響します。勤務中や授業中、電車やバスの乗車中などに、強い尿意に悩まされることがあります。寝ている時は気にならないため夜間頻尿ではないことが多く、朝起床時の排尿量も正常です。
頻尿は、日中の尿の回数が8回以上ある症状を言います。それまでは何でもなかったのに、急にトイレに行きたくなり、我慢することが難しくなるのが「尿意切迫感」です。トイレまで我慢できずに失禁(切迫性尿失禁)に至ることもあります
夜間頻尿とは、夜間に排尿のために起きなければならない症状です。40歳以上の男女で、約4500万人が夜間1回以上排尿のために起きる夜間頻尿の症状があり、加齢と共に頻度が高くなります。夜間頻尿の原因には多尿(夜間の尿量が多い)、膀胱容量の減少(過活動膀胱に伴う症状)、睡眠障害によるものなどが挙げられます。
頻尿の原因は多岐にわたるため、まずは泌尿器科を受診して原因を検査・診断してもらうことが大切です。病気が見つかればその治療をしていきます。検査をしても病気が見つからない場合は、「過活動膀胱」の可能性があります。
以下のチェックリストを試してみて下さい。質問3が2点以上で、かつ全体の合計点数が3点以上の場合、過活動膀胱の可能性があります。
合計点数が5点以下は軽症、6~11点は中等症、12点以上は重症と考えられます。
過活動膀胱チェックリスト
質問 | 症状 | 頻度 | 点数 |
---|---|---|---|
1 | 朝起きた時から寝る時までに、 何回くらい尿をしましたか |
7回以下 | 0 |
8~14回 | 1 | ||
15回以上 | 2 | ||
2 | 夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい 尿をするために起きましたか |
0回 | 0 |
1回 | 1 | ||
2回 | 2 | ||
3回以上 | 3 | ||
3 | 急に尿がしたくなり、我慢が難しい ことがありましたか |
なし | 0 |
週に1回より少ない | 1 | ||
週に1回以上 | 2 | ||
1日回くらい | 3 | ||
1日2~4回 | 4 | ||
1日5回以上 | 5 | ||
4 | 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿を もらすことがありましたか |
なし | 0 |
週に1回より少ない | 1 | ||
週に1回以上 | 2 | ||
1日1回くらい | 3 | ||
1日2~4回 | 4 | ||
1日5回以上 | 5 | ||
合計点数 | 点 |
「過活動膀胱」の治療の中心は膀胱の過剰な収縮を抑える抗コリン薬で、80%くらいの人が効果を実感します。抗コリン薬以外では、骨盤底筋を鍛える体操や、電気刺激による治療などの方法もあります。
まずは受診して頻尿の原因を探ることが重要ですが、特に原因が見当たらない過活動膀胱の場合、以下のように頻尿を起こしにくいライフスタイルを身につけましょう。
頻尿がある場合、同時に尿もれ(尿失禁)を抱えている人も多くいます。尿もれには、過活動膀胱が影響する「切迫性尿失禁」の他に、更年期以降の女性に多く見られる「腹圧性尿失禁」もあります。腹圧性尿失禁は、せきやくしゃみをした時やお腹に力が入った時に尿がもれてしまうもので、40歳以上の女性の実に4人に3人は経験しているともいわれます。
これらの尿失禁は、加齢によって衰えた骨盤底筋を鍛えることで、ある程度改善できるので「骨盤底筋体操」を毎日実践してみましょう。ポイントは1日40回以上、毎日忘れずに続けることです。「おしっこをした後、10回ずつ」、「テレビのコマーシャルのたびに10回ずつ」など、自分に合った方法を見つけましょう。