うつ病

うつ病

うつ病は「心のかぜ」ともいわれ、憂鬱感を主とした精神症状や睡眠障害、頭痛、食欲不振といった身体症状などが現れる病気です。うつ病で病院を受診する患者数は、2017年に127万人を超えていて、働き盛りといわれる30代後半以降、患者数が多い傾向にあります。うつ病は様々な原因が重なり合って発症するといわれており、繰り返すことも少なくありません。働き盛りを襲う深刻な社会問題にもなってきています。

監修プロフィール
順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授 ほりえ・しげお 堀江 重郎 先生

日本Men’s Health医学会理事長。日本抗加齢医学会理事長。泌尿器がんの根治手術と男性医学を専門とし、全ての男性を元気にする医学を研究している。

うつ病について知る


うつ病の原因

うつ病は様々な原因が複雑に絡み合って発症する

うつ病は、何か特定の原因によって発症するというより、様々な要因が複合的に影響し合って発症する病気です。それまでの経験や体調、生活環境、その時感じているストレスなど、多くの原因が複雑に絡み合い、うつ病を引き起こしています。家族や親しい人の死や別離、病気や経済的不安、人間関係のトラブルといったつらい体験がきっかけになることが多いですが、中には昇進や進学など、一般的に好ましいとされる変化によって発症することもあります。

うつ病の原因

性格や考え方も、うつ病の発症に関係する

同じような経験をしても、誰もがうつ病になるわけではありません。うつ病になるかどうかについては、その人自身の性格や考え方もかかわってくるといわれています。うつ病と性格の関連は長い間研究されており、うつ病になりやすい性格の特徴として、次のようなものが挙げられています。

  • うつ病になりやすい性格①:きまじめでしっかりしている(メランコリー親和型)
     きまじめできちょうめん、しっかりしていて周囲への気遣いも忘れない、そうした性格はメランコリー親和型と呼ばれ、うつ病になりやすい傾向がある。社会的には評価されるものの、その反面、他人の評価が気になったり、完璧主義で弱音を吐かなかったりするため、一人で抱え込み、うつ病になってしまうことがある。
  • うつ病になりやすい性格②:こだわりが強い
     こだわりが強い人は、全てを完璧にやろうとする傾向が強く、はたから見るとどうでもよいと思うことでも切り捨てられず、全て漏れなくやり遂げようとすることがある。その結果、自分でも苦しくなってしまい、それをきっかけにうつ病を発症することがある。

ホルモンバランスの変化がうつ病発症のきっかけになることも

体内で起こる生理的な変化が心の状態に影響を与え、うつ病を発症させることもあります。例えば女性の場合、月経の開始や妊娠・出産、閉経によって、ホルモンバランスが大きく変化します。それがうつ病発症のきっかけになることも少なくありません。また最近では男性にも、男性ホルモン(テストステロン)の減少によって起こる更年期のような症状=LOH(ロー)症候群によって、うつ病を発症することが分かっています。

男女共にホルモンの分泌が変わる40代後半~50代頃には注意が必要といえるでしょう。


うつ病の症状

うつ病は病気、「うつ」は気分

気分が落ち込み、やる気が出ない状態というのは、多かれ少なかれ誰もが経験しているはず。けれども、そうした気分の浮き沈みと、うつ病は似ているものの、同じではありません。数値などの明確な基準を示して違いを説明することは難しいですが、おおまかには「症状の強さ」「持続する期間の長さ」「生活への支障の出方」などで判断をすることになります。

  うつ病 うつな気分
症状の強さ 強い
(生きていることにつらさを感じる)
弱い
(つらいが生活はできる)
日常生活への支障 大きい 小さい
症状が出たきっかけ はっきりしていない はっきりしている
症状が続いている期間 2週間以上 一過性
人とのコミュニケーション 人と接したくない 人に頼りたくなる
仕事や趣味 意欲がなくなる 気が紛れるのでやりたい
症状の変化 よいことがあっても改善しない よいことがあれば改善が見られる

「何も面白くない」「何をやっても無駄」意欲と感情の喪失

うつ病の場合、何かよいことがあっても気持ちが上向きになることがなくなるなど、心の働きが阻害されます。特に顕著なのが意欲と感情の喪失です。

  • うつ病の症状①:意欲の喪失
     何をしても面白いと思えなくなり、何かをしようという意欲がわかなくなる。仕事や家事だけでなく、食事や入浴などの生活動作ができなくなることも。
  • うつ病の症状②:感情の喪失
     根拠のない絶望感を抱き、何をしても気分が重く、悲しくなる。悪化すると、その悲しみさえ感じられなくなって、生きることの意味を感じられなくなっていく。

その他、理解力、判断力、集中力にも滞りが生じ、ただひたすらに自分を責めたり、悲観的な考えから抜け出せなくなったりします。なお、うつ病を発症した人を周囲から見ると、下記のような変化が感じられることがあります。

うつ病の症状の見え方

  • 口数が減った
  • 声が小さくなった
  • 目線が下を向きがち
  • 表情が硬く、乏しくなった
  • だるそうに見える
  • 周囲への関心が薄くなった

不眠、食欲不振、痛み…体に現われる、うつ病の症状

うつ病になると、心だけでなく体にも変調が現われてくることがあります。体に現われるうつ病の症状としては、以下のようなものがあります。

これらの症状は自律神経失調症と似ているため、そのように診断されることもあります。自律神経失調症の陰にはうつ病や心の病気が潜んでいる場合もあるのです。

うつ病が疑われる症状

  • 眠れない、または眠くてたまらなくなる
  • 食欲がわかず、食べる量が減る
  • 頭や背中、腰、関節などに痛みを感じ、その部位が転々とする
  • 手足がしびれる
  • 息苦しい
  • 口が渇く
  • のどに何かが詰まったような感覚がある
  • 汗をかく
  • のぼせやほてりを感じる

うつ病の対策

「おかしいかな」と思ったら、専門の医療機関を受診しよう

これまでに紹介したようなうつ病のサインや症状を感じたり、「おかしいな」と思うようなことがあったりした場合は、専門の医療機関を受診しましょう。専門の医療機関とは総合病院の精神科、精神科病院、精神科クリニックなどをいいます。

また治療にあたっては医師との相性も重要になります。信頼して何でも話し、頼ることができる医師を選びましょう。医師との相性が合わないと感じたら、替えることはやむを得ません。ただし、あまり頻繁に替え過ぎると、医師との信頼関係を築くのが難しくなってしまうこともあるので注意が必要です。


薬物療法に加えて、心理面での支えも

うつ病の治療法についてはたくさんの研究がされていますが、中心となるのは薬物療法です。抗うつ薬をはじめとした、様々な薬によってうつ病の改善を図ります。うつ病は比較的薬の効果が得られやすいといわれています。とはいえ、ただ薬をのむだけで症状が改善するわけでもありません。同時に精神療法も進め、心理面でもサポートしていくことが必要です。精神療法では、患者さんが抱える問題について共に考えながら、心理的治療を行います。中にはカウンセラーがこの精神療法を担当することもあります。

うつ病の対策

うつ病になりやすい考え方を変える

「ものは考えよう」という言葉があります。例えば同じ出来事に遭遇しても、それをネガティブに捉える人もいれば、ポジティブに捉える人もいます。うつ病になりやすい人には、物事をネガティブに捉えがちな傾向があり、そうした考え方を変えていけば、うつ病の症状も自然と解決されていくでしょう。まさに「ものは考えよう」というのが、この方法の基本的な考え方で、認知療法や認知行動療法と呼ばれています。有効性が高く、薬物療法と同じか、それ以上の効果があるといわれています。


うつ病の予防法

うつ病に陥りやすい思考のクセを知る

さきほども説明したように、うつ病には考え方によってなりやすくも、なりにくくもなります。物事のマイナス面ばかりに目がいくという人は、自分でストレスを生み出してしまい、うつ病になりやすくしてしまっているといえます。こうしたことは考え方のクセのようなもので、自分では気づきにくいかもしれません。しかし、日常の中で自分の考え方に目を向け、自覚していくことで自分の思考のクセを修正することが可能になります。

考え方をノートに記録するなどして、思考のパターンを整理し、修正する作業を繰り返してみましょう。繰り返すうちに、徐々に自分の気分や周囲の状況の変化を感じられるようになるはずです。


生活リズムを整えよう

うつ病とはよく眠れない、食欲がわかないなど、基本的な体のリズムに変調を来した状態ともいえます。従ってそれを防ぐには、体のリズムを整えておくことが大切です。

  • 起床後、日光を浴びて体内時計をリセットする
  • 規則的で十分な睡眠をとる
  • 栄養バランスの整った食事をできるだけ時間を決めて摂る
生活リズムを整えよう

これらのことを心がけ、生活リズムを整えていきましょう。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト