結膜炎

結膜炎

結膜炎の概要

「結膜炎」とは、目の「結膜」に炎症を起こし、目の充血や目やに、目のかゆみなどの症状が現れる疾患です。結膜とは、上下のまぶたの裏側から白目の表面を覆っている半透明の薄い膜で、異物の侵入を防いだり、表面を涙の層で覆って目に潤いを与えたりする働きがあります。結膜は外界にさらされているため刺激を受けやすく、袋状の構造のため異物もたまりやすくなっています。また、血管やリンパ組織が豊富なことから、細菌やウイルスが繁殖しやすい環境です。結膜炎は眼科の中ではポピュラーな疾患の1つですが、ひと口に結膜炎といってもはやり目などのウイルス性結膜炎、細菌性結膜炎、アレルギー性結膜炎など様々な種類があり、原因によって対処法も異なります。中には集団感染を引き起こすものもあるため、周囲に感染を広げないための注意も必要です。
結膜炎の原因、症状、治し方や対処法、予防法を専門医が解説します。

結膜は、城目の表面とまぶたの裏を覆っている半透明の膜のことです。結膜に起こる炎症、全てまとめて結膜炎と呼んでいます。
監修プロフィール
久喜かわしま眼科 副院長 かわしま・もとこ 川島 素子 先生

1998年慶應義塾大学医学部卒業。同大学医学部研修医、東京都済生会向島病院、慶應義塾大学医学部助手を経て2012年より久喜かわしま眼科勤務、18年より現職。日本眼科学会専門医。専門は、角膜、ドライアイ、および眼表面を中心とした前眼部疾患。

結膜炎について知る


結膜炎の原因

結膜炎の原因は主に「ウイルス」「細菌」「アレルギー」の3つ

結膜炎は原因によって、感染性の「ウイルス性結膜炎」と「細菌性結膜炎」、非感染性の「アレルギー性結膜炎」の3種類に分けられます。


ウイルス感染が原因の「ウイルス性結膜炎」

ウイルス性結膜炎は、代表的なものに「流行性角結膜炎(はやり目)」、「咽頭結膜熱(プール熱)」、「急性出血性結膜炎(AHC)」があります。いずれも学校保健安全法に定められた「学校感染症」に該当し、罹患した場合、感染拡大を防ぐため登校が禁止されます。

主な感染経路は接触感染で、結膜炎の人の目やにや涙に存在するウイルスがドアノブや手すり、タオルなどに付着し、そこに手を触れた人が自分の目をこすったりすると感染します。また、咽頭結膜熱(プール熱)では、咳による飛沫感染の恐れもあります。

・流行性角結膜炎(はやり目)
流行性角結膜炎(はやり目)は、アデノウイルス8型、19型、37型、53型等の感染が原因です。感染力が極めて強く、時に大きな流行を引き起こすため「はやり目」とも呼ばれます。夏場に流行し、子どもが感染しやすいことから、学校感染症第3種※1に指定され、感染の恐れがないと医師が認めるまで出席停止となります。

・咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)は、アデノウイルス3型、4型、7型、11型等の感染が原因です。子どもの夏かぜとして流行したり、子どもたちの間でプールを介して流行したりすることから、「プール熱」とも呼ばれます。学校感染症第2種※2で、主な症状が消えて2日後か、感染の恐れがないと医師が認めるまで出席停止となります。

・急性出血性結膜炎(AHC)
急性出血性結膜炎(AHC)は、エンテロウイルス(70型)やコクサッキーウイルス(A24変異型)の感染によって起こり、通年性で季節を問わず見られます。学校感染症第3種※1で、感染の恐れがないと医師が認めるまで出席停止となります。

※1 学校感染症第3種……学校において流行を広げる可能性がある伝染病。
※2 学校感染症第2種……飛沫感染するもので、児童生徒の罹患が多く、学校において流行を広げる可能性が高い伝染病。

ウイルス性結膜炎

細菌感染が原因の「細菌性結膜炎」

原因となる細菌は様々ですが、インフルエンザ菌や黄色ブドウ球菌、肺炎球菌などによるものが一般的です。この他に淋菌やクラミジア菌によるものもあり、これらは性感染症として位置づけられています。

・一般細菌による細菌性結膜炎
一般細菌による細菌性結膜炎のうち、インフルエンザ菌や肺炎球菌によるものは乳幼児や学童に多く、かぜ(普通感冒)に併発して起こることもあります。高齢者は黄色ブドウ球菌が原因のことが多く、慢性化しやすい傾向があります。黄色ブドウ球菌はもともと人間の体に存在する常在菌で、感染力は強くないため人から人へ感染することはまれですが、目にけがをした時や、病気や過労などで体の抵抗力が落ちた時などに感染しやすくなります。抗菌剤を長期間使い過ぎると、細菌に薬が効かなくなる(薬剤耐性)ことがあるので注意が必要です。

・淋菌性結膜炎/クラミジア結膜炎
淋菌性結膜炎は淋菌、クラミジア結膜炎はクラミジア・トラコマティス菌が原因です。成人では、感染者の精液が目に入ったり、感染者の性器に触れた手で目をこすったりすることで発症し、新生児(新生児結膜炎)では、産道通過時の母子感染が原因となります。

細菌性結膜炎

アレルギーが原因の「アレルギー性結膜炎」

アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどのアレルゲン(=アレルギーを引き起こす原因物質)によって起こる結膜炎です。結膜炎の中で最も患者数が多く、そのうち80%以上は花粉が原因といわれます。また、最近では、コンタクトレンズの装用によって起こるアレルギー性結膜炎も増えています。

ウイルス性結膜炎や細菌性結膜炎などの感染性の結膜炎は、ほとんどが急性、一過性であるのに対し、アレルギー性結膜炎は、特定の物質に触れると症状が出て、毎年同じ症状を繰り返したり、症状が長く続いたりするのが特徴です。アレルギー性結膜炎は感染症ではないので、人から人にうつることはありません。

・季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)
季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)は、スギやヒノキ、シラカバ、イネ科のカモガヤ、キク科のヨモギ、ブタクサなどの花粉が原因です。

・通年性アレルギー性結膜炎(ハウスダストアレルギー)
通年性アレルギー性結膜炎はハウスダストが原因です。ハウスダストとは家の中のチリやホコリのことで、その中にはダニ、カビ、細菌、花粉、繊維のクズ、人の垢や皮膚片、フケ、ペットの毛など様々なものが含まれます。

・コンタクトレンズによるアレルギー性結膜炎(巨大乳頭結膜炎)
巨大乳頭結膜炎は、コンタクトレンズに付着した汚れやコンタクトレンズそのものの材質などが原因で起こると考えられています。特に長期装用タイプのソフトコンタクトレンズを使用している人に多く見られます。

アレルギー性結膜炎

結膜炎の症状

ウイルス性、細菌性、アレルギー性それぞれの結膜炎で症状は異なります。ただし、ウイルス性結膜炎と細菌性結膜炎は、目の症状だけでは見分けがつきにくいことがあります。全身の状態をよく観察し、周囲の流行状況なども併せて判断しましょう。


ウイルス性結膜炎の主な症状

・流行性角結膜炎(はやり目)
流行性角結膜炎は(はやり目)、7~14日間の潜伏期間の後、目の充血、多量の目やに、涙の増加、目の異物感(ゴロゴロ感)や痛みなどの症状が現れます。また、耳の前やあごの下のリンパ節の腫れを伴うこともあり、鑑別の1つのポイントとなります。最初は片目のみの発症でも、数日中にもう一方の目にも感染して症状が出るケースも少なくありません。

・咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)は、5~7日間の潜伏期間の後、目の充血、目やに、涙の増加などの目の症状に加え、のどの痛み、39℃前後の発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状を伴うのが特徴です。流行性角結膜炎と同様に、片方の目に発症し、続いてもう一方の目に起こることもよくあります。

・急性出血性結膜炎(AHC)
急性出血性結膜炎(AHC)は、1~3日の潜伏期間の後、結膜から出血しているような強い充血が突然起こるのが特徴です。目やにや目の異物感(ゴロゴロ感)を伴います。


細菌性結膜炎の主な症状

・一般細菌による細菌性結膜炎
細菌性結膜炎の症状は、目が充血し、黄色や緑色、または灰色がかったクリーム状の膿性の目やにが出ます。目の痛みや違和感(ゴロゴロ感)を伴うこともありますが、かゆみはあまりなく、目以外の症状はほとんど見られません。多くは片目に発症しますが、続いてもう一方の目に症状が出ることもあります。

・淋菌性結膜炎/クラミジア結膜炎
淋菌性結膜炎やクラミジア結膜炎の症状は、多量の黄白色クリーム状の膿性の目やにが出ますが、目の痛みやかゆみはほとんどありません。男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎や尿道炎を併発します。尿道炎では、排尿時の痛みや違和感、頻尿、尿道からの膿性の分泌物などが見られることがあります。


アレルギー性結膜炎の主な症状

・花粉やハウスダストによるアレルギー性結膜炎
花粉やハウスダストによるアレルギー性結膜炎の症状は、両目に激しいかゆみが起こり、充血、異物感(目のゴロゴロ感)、涙の増加、まぶたの腫れなどを伴いますが、目やにはあまり多くありません。また、目の左右で症状の現れ方に差があるケースも見られます。自覚症状は人によって様々で、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状や、倦怠感や微熱などの全身症状を伴うこともあります。

・コンタクトレンズによるアレルギー性結膜炎(巨大乳頭結膜炎)
巨大乳頭結膜炎の症状は、目のかゆみや充血、目やに、まぶたの腫れなどの他、まぶたの裏側にブツブツとした乳頭と呼ばれる隆起が幾つもでき、まばたきのたびに乳頭が角膜と接触することで目がゴロゴロしたり、異物感が生じたりすることがあります。乳頭が直径1㎜以上になった場合を巨大乳頭結膜炎と呼び、この状態でコンタクトレンズを装用すると、巨大乳頭にレンズが引っ掛かり、レンズが上にずれやすくなります。

結膜炎の種類

結膜炎の対処法

基本は目薬で対処します。感染力が強いウイルス性結膜炎の場合は、できるだけ他人との接触を避けることも必要です。


ウイルス性結膜炎の対処法

ウイルス性結膜炎の対処法は、ウイルスを根本的に退治する薬はないため、抗体がつくられて症状が落ち着くのを待ちます。その間、細菌感染の合併を防ぐために抗菌薬の点眼や炎症を抑える点眼などを行います。同時に、周囲に感染を広げないために、医師の指示通りに登校や登園を控え、家庭内でのタオルの共用などに注意します(詳しくは次項「結膜炎の予防法」を参照)。大人でも人と接する仕事など職種によっては、自宅での療養がすすめられます。


細菌性結膜炎の対処法

細菌性結膜炎の対処法は、抗菌剤(抗生物質)入りの抗菌目薬で対処します。多くの場合、点眼治療によって症状が治まり、3日~1週間程度でよくなります。

性感染症の場合は、パートナーと一緒に眼科と泌尿器科の受診が必要です。病院では、抗菌剤の目薬や目軟膏、内服薬による治療を行います。


アレルギー性結膜炎の対処法

アレルギー性結膜炎の対処法は、症状を抑える対症療法として、抗アレルギーの目薬で対処します。くしゃみ、鼻水など目以外の症状もある場合は、抗ヒスタミン薬の内服も有効です。目薬も内服薬も、目のかゆみなどの症状が起こっている時だけ使うのではなく、定められた通りに継続して使用することが大切です。花粉症で毎年同じ時期に結膜炎を起こす場合は、本格的な症状の現れる1~2週間前に、目の違和感を覚えた時点で早めに使用を開始する方法もすすめられます。
コンタクトレンズの使用による結膜炎の場合は、すぐにコンタクトレンズの使用を中止し、治るまではメガネに変更します。併せて、症状や重症度に応じて抗アレルギー薬と抗炎症薬を組み合わせて点眼します。


市販薬はタイプを確認して使用する

市販の点眼薬で対処する場合、ウイルス性・細菌性結膜炎と、アレルギー性結膜炎では効果のある成分が異なるため、タイプを確認して使用することが大切です。いずれの場合も用法・用量を守って正しく使用しましょう。

・ウイルス性結膜炎、細菌性結膜炎
ウイルス性結膜炎、細菌性結膜炎の場合は、「抗菌剤・抗炎症剤配合」や「抗菌目薬」と書かれたタイプを選びましょう。抗菌目薬には抗菌剤(抗生物質)、抗炎症剤が配合され、目の充血や痛み、まぶたの腫れなどの症状を緩和し、菌の繁殖を防ぐ作用があります。

・アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎の場合は、「抗アレルギー剤配合」や「アレルギー専用目薬」と書かれたタイプを選びましょう。アレルギー用目薬には抗ヒスタミン剤が配合され、かゆみや充血などの症状を引き起こすヒスタミンの作用を抑え、不快な症状を改善します。

結膜炎の市販薬

3~4日使用しても改善しない場合は眼科を受診

市販薬を3~4日使用しても改善しない場合は眼科を受診し、医師の指示に従いましょう。特に、「目に痛みがある」、「目がかすむ」、「充血や目やにの程度がひどい」といった症状がある場合は、できるだけ早めの受診がすすめられます。周囲で結膜炎が流行している場合もウイルス性結膜炎を疑い、少しでも早めに受診して感染の拡大を防ぎましょう。


結膜炎の予防法

感染性・非感染性、いずれの結膜炎の場合も、むやみに目を触らない、外出後の手洗いを徹底するといった対策が予防の基本となります。


ウイルス性結膜炎の予防法

ウイルス性結膜炎は同居している家族間で感染しやすいです。家族内に感染者が出た場合、次のことを心がけましょう。

・目や目の周りにはできるだけ触らない
・目に触れる前と触れた後は必ず流水で手を洗う
・目を拭く時は清潔なティッシュを使い、すぐ捨てる
・ドアノブなどよく触れる場所をアルコール消毒する
・タオルや寝具を他の人と共有しない。使い捨てのペーパータオルを使うのもおすすめ
・感染者は、お風呂は最後に入るか、シャワーで済ませる
・感染者はプールには入らない
・コンタクトレンズを使用している感染者は、症状が出ている間は使用を控える

ウイルス性結膜炎の予防法

細菌性結膜炎の予防法

細菌性結膜炎とウイルス性結膜炎は、症状だけでは区別がつかないことがあるため、ウイルス性結膜炎の可能性も視野に入れて他人への感染を防ぎましょう。家庭内で感染者が出た場合の心がけは、上記のウイルス性結膜炎と同様です。


アレルギー性結膜炎の予防法

アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどアレルゲンとの接触をできる限り避けることが予防の基本です。できれば一度は病院を受診して血液検査や皮膚テストを受け、不快な症状を引き起こす原因物質を明らかにすると、適切な予防につながります。

・花粉症

花粉の飛散する時期は、次のことを心がけましょう。

・コンタクトレンズの装用を控える
・花粉の飛散の多い日や時間帯の外出を控える
・外出時は、メガネやゴーグル、帽子、マスクなどで防御する
・外出後は、服についた花粉を十分に落とす
・外出後の手洗いを徹底する

・ハウスダストアレルギー

室内の清潔を保つことが大切です。次のことを心がけましょう。

・掃除機をこまめにかける
・空気清浄機を利用する
・換気を行い、通気をよくする
・寝具の天日干しなどでダニの増殖を抑える

・コンタクトレンズによるアレルギー(巨大乳頭結膜炎)
巨大乳頭結膜炎を予防するためには、コンタクトレンズは高度管理医療機器であり、正しく使用することが何よりも大切です。次のことを心がけましょう。

・使用するコンタクトレンズに定められた洗浄や消毒方法で清潔に維持する
・定められた使用日数や使用時間を守る
・定期的に眼科で検査を受ける
・目の充血や目やにの増加、違和感など目に何らかの症状が現れた時は、コンタクトレンズの使用を一時中止し、症状が続く場合は早めに眼科を受診する


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