脳血管疾患

脳血管疾患

脳血管疾患は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など、脳の血管のトラブルによって起こる病気の総称です。脳の血管(動脈)に発生したトラブルによって脳の機能が失われ、言語障害や麻痺、記憶障害などの影響が現れます。そうした症状は後遺症として残ることもありますが、発症後、数時間以内に治療を行えば高確率で防ぐことができますし、正しく対策することで病気そのものの発症をできるだけ少なくすることも可能といわれています。

監修プロフィール
順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授 ほりえ・しげお 堀江 重郎 先生

日本Men’s Health医学会理事長。日本抗加齢医学会理事長。泌尿器がんの根治手術と男性医学を専門とし、全ての男性を元気にする医学を研究している。

脳血管疾患について知る


脳血管疾患の原因・症状

脳の血管が詰まったり、破れたりしてトラブルが生じる

脳血管疾患は脳卒中とも呼ばれます。日本人の死因の第4位で、女性よりも男性に多い傾向があります。2015年の人口10万人対死亡率では女性が21.0に対し、男性が37.6と、1.8倍近く多くなっています。

主な原因は脳の血管に生じるトラブルです。トラブルは大きく2つに分けることができます。ひとつは脳の血管が詰まること(脳梗塞)、もうひとつは脳の血管が破れること(脳出血、くも膜下出血)です。脳梗塞はさらに3タイプに分かれます。それぞれの原因や症状を詳しく見ていきましょう。

脳卒中の主な症状

脳血管疾患が起こりやすい年代とは

脳血管疾患の中でも、高血圧や動脈硬化が発症に大きく関わっている脳梗塞や脳出血は中高年~高齢者の発症が多い傾向にあります。厚生労働省が過去に行った調査によると、脳梗塞を発症した平均年齢は男性が68.7歳、女性が73.6歳というデータがあります。

くも膜下出血も発症が最も多いのは50~60代ですが、20~30代の若い世代にも発症のリスクがあるのが特徴です。


脳の血管が詰まり、運動、言語、感覚などに障害が現れる「脳梗塞」

脳梗塞は脳の血管が狭くなったり、詰まったりして血液の流れが滞ることで起こる病気です。脳は血液から酸素や栄養をもらっており、血流が滞ると詰まった先の脳細胞は最終的に壊死(えし)して、様々な症状を引き起こします。

脳梗塞は「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」「心原性脳塞栓症」の3つのタイプに分けられ、原因や症状はタイプごとに少しずつ異なります。

  • 脳梗塞のタイプ①:アテローム血栓性脳梗塞
     アテロームとは血液中の余分なコレステロールなどが血管壁にたまったもの。そのアテロームが脳の太い血管にでき、血液が流れなくなるなどして、アテローム血栓性脳梗塞を起こし、様々な症状を引き起こすことがある。糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が大きく影響している他、喫煙、肥満なども発症を促進する要因となっている。最も発症しやすいのは睡眠中で、梗塞を起こした部位や大きさによって症状が異なるが、片側の手足あるいは四肢、顔の麻痺、言語障害、失語、嘔吐、嚥下(えんげ)障害、意識障害などが起こる。中には一時的に片方の目が見えなくなることもある。
  • 脳梗塞のタイプ②:ラクナ梗塞
     ラクナとはラテン語で「小さな穴や空洞」を意味する言葉。脳の細い血管が、主に高血圧などによって動脈硬化を起こし、血流が途絶えることでラクナ梗塞は発症する。脳梗塞の中では比較的軽症で、症状を伴わない場合もあるが、梗塞をおこしている数が多いと認知症の原因になることも。睡眠中などの安静時に発症しやすい傾向にあり、朝起きた時に症状に気づくこともある。
  • 脳梗塞のタイプ③:心原性脳塞栓
     症心原性脳塞栓症とは、心臓でできた大きな血栓(血の塊)が脳に流れ、脳の血管を詰まらせる病気。心臓でできた血栓はフィブリンという凝固タンパクで固められていて、通常の血栓に比べて溶けにくいという特徴がある。従って心原性脳塞栓症になると重症化しやすい。日中の活動時に突然発症することが多く、手足の麻痺や感覚障害、意識障害などが一気に起こることもある。
脳梗塞のタイプ

高血圧が最大の原因で起こる「脳出血」

脳出血は脳内の細い動脈が破れて出血する病気で、脳内出血とも呼ばれます。出血した血液は脳内にたまり、血腫と呼ばれる塊をつくります。脳出血を起こすと血腫により脳が圧迫されて、しびれや麻痺、呼吸障害や意識障害などを引き起こすことも。脳出血の原因として最も多いのは高血圧で、高血圧によって動脈硬化が進んだり、血管に強い圧力がかかったりすることで出血しやすい状態になります。

高血圧以外の原因としては、アミロイドと呼ばれる異常なタンパクが脳の血管の内側に付着して起こるアミロイド血管症(アミロイドアンギオパシー)や、血栓の病気の治療で抗血小板療法、抗凝固療法などを行っている場合などが挙げられます。


死亡率が高い脳の病気「くも膜下出血」

脳を覆っている薄い膜のことを「くも膜」といいます。くも膜と脳の間(くも膜下腔)には脳に酸素と栄養を与えるための太い動脈が張り巡らされています。この動脈から出血が起こって、くも膜下腔に広がるのが、くも膜下出血です。くも膜下出血が起こると、くも膜下腔が血液で満たされ、頭蓋骨内部の圧力(頭蓋内圧)が上昇し、脳にダメージを与えます。その結果、呼吸停止や循環停止が生じ、最悪の場合、亡くなってしまうこともあります。くも膜下出血が起こる主な原因は、脳の動脈にできたこぶ=脳動脈瘤の破裂といわれています。脳動脈瘤自体は人口の約5%がもっているといわれますが、それが破裂するのはごくまれです。何がきっかけとなって破裂するのかはまだ分かっていませんが、生まれつきの動脈壁の弱さが関係していると考えられています。

くも膜下出血は脳血管疾患の中で最も死亡率が高いといわれており、発症が疑われる場合はすぐに救急車などを呼んで対処することが大切です。


脳血管疾患の対策

脳血管疾患のサイン「FAST」が見られたら救急車を手配

脳血管疾患の疑いがある場合、なるべく早く病院を受診しましょう。脳血管疾患は後遺症によって、その後の生活に支障を来すことが多々あります。発症後、早く治療を開始すれば後遺症を軽くすることも可能なため、できる限り早く病院を受診することが大切です。

脳血管疾患には「FAST」というチェック項目があり、この中で1項目でも該当するものがある場合、70%以上の確率で脳血管疾患の疑いがあるといわれています。下記に当てはまるものがあれば、速やかに救急車を手配しましょう。

  • 脳血管疾患のサイン「FAST」
     F(face):「イー」と言いながら口を横に開いたとき、顔の片方がゆがんでいるA(arm):目を閉じて両腕を上に上げたとき、片側が上がらない、または上がりにくいS(speech):短い文章なのに、滑らかに話せない、またはろれつが回らない脳血管疾患は、発症からどれくらい時間が経っているかも重要です。上記に加え、T(time):上記の症状が発症した時間」もチェックしておきましょう。

脳血管疾患の予防法

脳血管疾患の5大危険因子を避ける

脳血管疾患は、後遺症が残る可能性が高いことから、予防が非常に重要といわれています。予防には「脳血管疾患の5大危険因子」と呼ばれる、「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」「不整脈」「喫煙」の5つのリスクを避けることが効果的です。

そのほか、男性、高齢者、肥満、過度の飲酒、運動不足なども脳血管疾患の危険因子としてあげられます。当てはまる人は注意しましょう。

脳血管疾患の予防には、予防医療の基本である、規則正しい生活とバランスの良い食事、そして適度な運動を行うことが大切です。まずは生活習慣と食事の改善から始めてみるとよいでしょう。

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高血圧が最大の原因で起こる「脳出血」

脳出血は脳内の細い動脈が破れて出血する病気で、脳内出血とも呼ばれます。出血した血液は脳内にたまり、血腫と呼ばれる塊をつくります。脳出血を起こすと血腫により脳が圧迫されて、しびれや麻痺、呼吸障害や意識障害などを引き起こすことも。脳出血の原因として最も多いのは高血圧で、高血圧によって動脈硬化が進んだり、血管に強い圧力がかかったりすることで出血しやすい状態になります。

高血圧以外の原因としては、アミロイドと呼ばれる異常なタンパクが脳の血管の内側に付着して起こるアミロイド血管症(アミロイドアンギオパシー)や、血栓の病気の治療で抗血小板療法、抗凝固療法などを行っている場合などが挙げられます。


死亡率が高い脳の病気「くも膜下出血」

脳を覆っている薄い膜のことを「くも膜」といいます。くも膜と脳の間(くも膜下腔)には脳に酸素と栄養を与えるための太い動脈が張り巡らされています。この動脈から出血が起こって、くも膜下腔に広がるのが、くも膜下出血です。くも膜下出血が起こると、くも膜下腔が血液で満たされ、頭蓋骨内部の圧力(頭蓋内圧)が上昇し、脳にダメージを与えます。その結果、呼吸停止や循環停止が生じ、最悪の場合、亡くなってしまうこともあります。くも膜下出血が起こる主な原因は、脳の動脈にできたこぶ=脳動脈瘤の破裂といわれています。脳動脈瘤自体は人口の約5%がもっているといわれますが、それが破裂するのはごくまれです。何がきっかけとなって破裂するのかはまだ分かっていませんが、生まれつきの動脈壁の弱さが関係していると考えられています。

くも膜下出血は脳血管疾患の中で最も死亡率が高いといわれており、発症が疑われる場合はすぐに救急車などを呼んで対処することが大切です。


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