冷え症は、手足の先や体の表面温度が下がり、冷たく感じる状態を指します。「冷えは万病のもと」ともいわれるように、体が冷えると単に寒く感じるだけでなく、肩こりや腰痛、肌トラブルなど様々な不調を引き起こします。東洋医学では、冷え症は治療対象となる病気の1つで、冷えに伴う不快な自覚症状がある場合を「冷え症」といいます。冷えの感じ方は様々ですが、外見は血色もよく健康そうでも、本人が冷えを感じている場合は冷え症といえます。
1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。北里大学薬学部非常勤教員。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。
体には重要な臓器が集まる体の中心部を一定の温度に保とうとする働きがあります。外気温が低い時は、体温を維持するために自律神経が働いて、手先や足先など末端にまわる血流を減少させ、血液を体の中心に集めます。そのため、深部体温は下がりませんが、手先や足先などの末端には血液が行きわたらず、体感として冷えを感じるようになるのです。
また、寒い時でなくても、貧血や低血圧の方の場合、酸素や栄養素をきちんと手先や足先など体の末端に届けられなくなり、手先や足先が冷えて冷え症になる場合があります。
全身の血流を調整しているのは自律神経であるため、ストレスや不規則な生活によって自律神経が乱れると、血流が悪くなり末端が冷えて冷え症になる場合があります。また、女性ホルモンと自律神経は脳の視床下部でコントロールされていることもあり、更年期などで女性ホルモンの分泌(ぶんぴつ)が乱れると、自律神経にも影響を及ぼし、冷え症につながります。
血液は体の隅々の細胞まで酸素や栄養素を運び、二酸化炭素や老廃物を回収する働きをしています。冷えて血流が悪い状態では、血液が本来の働きができなくなるので、様々な不調を招きます。主に下記のような症状が起こり得ますが、他にも、むくみやアレルギーの悪化など、冷えは様々な不調につながります。
冷えた状態が続くと、深部体温も低下してしまいます。免疫機能が適切に働くのは、深部体温が37℃前後。体温計で測り35℃になるとかぜをひきやすくなるなど、様々な病気に感染しやすくなります。臓器の働きも悪くなるため、腸の働きが低下して便秘になることも。全身の機能が低下することで体力も衰えがちになります。
筋肉は体の熱をつくり出します。筋肉量は一般に男性のほうが多く、男性は女性よりも冷えにくいとされていますが、男性にも冷えている人は少なくありません。その原因の1つに、血流の滞りを招く動脈硬化が考えられます。勃起不全(ED)も動脈硬化が原因で起こりやすくなります。心当たりがある人は、一度検査を受けることをおすすめします。
冷えを感じたら、頭部や手足などの末端をマッサージして、全身の血行をよくしましょう。特に耳には、体を温める効果のあるツボやリンパ腺が密集しています。
手軽に体を温めるには、ホットドリンクが効果的。体の内側から温めてくれます。ただし、温かい飲み物でも、コーヒーのようにカフェインが含まれる飲み物は、摂り過ぎると体を冷やしてしまうので、ノンカフェインの物を選ぶようにしましょう。漢方薬を構成する生薬として使われているシナモンやしょうがは、血行促進作用に優れています。シナモンティーやしょうが紅茶など、ホットドリンクにプラスして摂るのがおすすめです。
冷蔵庫でキンキンに冷えたビールやジュース、アイスクリームなど、どの季節も冷たい飲食物であふれています。冷たい飲食物は急速に胃腸を冷やして冷えを助長することに。暑い夏でも冷え症になるのは、冷たい飲食物の摂り過ぎも一因しているのです。どうしても冷たい物を摂りたい時は、温かい飲み物と組み合わせるなどして、体を冷やさないようにしましょう。
体の熱の60%は筋肉でつくられているとされています。筋肉が多ければ多いほど基礎代謝が高く、体温は高くなる傾向に。特に、加齢と共に筋肉は減少してしまうので、それを防ぐためにも、日頃から筋肉を意識した運動を行うことが大切です。下半身の大きな筋肉が鍛えられるスクワットは特におすすめ。エスカレーターを使わず階段を上り下りするのも下半身の筋肉アップに有効です。
ストレスを受けると血管が収縮し、一気に血行が悪くなります。1日の最後はゆっくり入浴してリラックス。体を温めると共に、1日のストレスや疲れも解消してしまいましょう。40℃ほどのお湯で、20〜30分程度半身浴をすると血流がよくなります。家庭用の発泡性入浴剤を活用すると、温浴効果がさらに高まります。