header

更年期「気づけば太っていた……」の理由は?どう対処する?

更年期「気づけば太っていた……」の理由は?どう対処する?

更年期を迎えた女性から、「食べる量が変わらないのに太った」「体形が変わった」という声を聞きます。一般的に、男性も女性も40歳を過ぎる頃からいわゆる「中年太り」に悩まされる人が増えますが、特に女性は、更年期になるとホルモン分泌の変化や筋肉量の低下など様々な要因が重なって太りやすくなるのです。

女性の年代別平均体重と平均身長

年代

平均体重

平均身長

20~29歳

52.1kg
(n=119)

157.6㎝
(n=124)

30~39歳

53.9kg
(n=218)

158.4㎝
(n=225)

40~49歳

55.8kg
(n=274)

158.5㎝
(n=279)

50~59歳

56.4kg
(n=403)

157.5㎝
(n=406)

60~69歳

55.0kg
(n=404)

155.0㎝
(n=405)

(参考)厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」

体は年齢と共に変化していきます。更年期に太りやすくなるのもその変化の1つとして受け止め、原因と対策を知って、よりよい生活を送るために前向きに活かしていきましょう。

監修プロフィール
対馬ルリ子女性ライフクリニック/Addots GINZA おの・ようこ 小野 陽子 先生

聖路加国際病院女性総合診療部、東邦大学医療センター大森病院心療内科を経て、対馬ルリ子女性ライフクリニック勤務。Addots GINZA「女性のこころとからだのオンライン相談室」開設予定。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本心身医学会心身医療専門医、日本女性心身医学会認定医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医。心療内科、婦人科両面からのケアを行う。

更年期は主に4つの変化が重なって太りやすくなる!

女性は、更年期に体脂肪が増え、逆に筋肉量は減少して基礎代謝量が低下し、これまでと同じような生活や食事をしていても太りやすくなってしまうことが分かっています。その主な要因には、体や暮らしの4つの変化があります。

太りやすくなる要因① 女性ホルモンの分泌量の変化
更年期には女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が減少します。エストロゲンには様々な働きがあり、減少することで太りやすさに影響する場合があります。
●脂質を代謝する働きが低下する
エストロゲンには、動脈硬化などの原因となるLDLコレステロールを低下させたり、中性脂肪の値をコントロールしたりする働きがあります。そのため、エストロゲンが減少すると、脂質を代謝する働きが低下し、内臓脂肪が増加します。
●筋肉を合成・維持する働きが低下する
エストロゲンは、筋肉をつくったり維持したりすることにかかわるため、エストロゲンの減少によって筋肉量も減少し、基礎代謝量が低下します。
●食欲を左右する神経伝達物質などに関与し、食欲が増しやすくなる
エストロゲンは、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった食欲の増減に影響する神経伝達物質に作用します。また、食欲を抑える働きがあり「満腹ホルモン」「抗肥満ホルモン」とも呼ばれるレプチンの分泌にも関与します。そのため、エストロゲンの減少によって食欲が増してしまう場合があります。

女性ホルモンの分泌量の変化が、食欲を左右する神経伝達物質などに関与し、食欲が増しやすくなる。

●インスリンの働きが低下する
エストロゲンにはインスリン(血糖値を一定に保つホルモン)の働きを高める作用があります。エストロゲンの減少によりインスリンの働きが低下すると、血糖値の調整が乱れ、脂肪の蓄積や食欲増進につながる場合があります。

太りやすくなる要因② 筋肉量の変化
筋肉はエネルギーを消費するものであり、筋肉量が減ることで基礎代謝量も低下し、太りやすくなります。筋肉量のピークは20代。運動など何らかの対処をしていなければ、加齢に伴う成長ホルモンの分泌量の減少やタンパク質合成能力の低下などによって筋肉量は減少し、特に40代後半以降にそのスピードが加速します。また、エストロゲンの減少も筋肉量の低下に影響します。

太りやすくなる要因③ 脂肪の質の変化
加齢により脂肪細胞の質も変化します。更年期以降は脂肪細胞が硬く肥大化して脂肪をためやすくなり、脂肪が燃焼しにくくなります。また、脂肪細胞が肥大すると脂肪組織に慢性的な炎症が起きて生活習慣病を招いてしまうことがあります。

太りやすくなる要因④ 生活習慣の変化
ホットフラッシュやイライラなどの更年期症状や忙しさによって、睡眠不足になったりストレスが過度にたまったりすると、自律神経が乱れやすくなります。自律神経の乱れは、食欲の増進やむくみにつながる場合があります。また、睡眠不足になると、食欲を増進させるホルモンのグレリンの分泌が増え、逆に「満腹ホルモン」であるレプチンの分泌が減ることでも太りやすくなります。
更年期世代は働き盛りであり、忙しさやライフスタイルの変化によって、運動の機会が失われる場合もあるでしょう。さらに、徐々に体力や筋力の衰えを感じ始め、体を動かすことが面倒になってくる年代でもあります。このことも太りやすさの要因に挙げられます。

更年期にやせてしまう人も注意が必要
更年期を迎えた女性の中には、逆にやせてしまう人もいます。運動習慣があってやせているのであれば問題ありませんが、運動習慣もないのにやせているとしたら、以下のような何かしらの原因があるはずです。
・自律神経が乱れて胃腸の働きが低下し、食べた物を満足に消化吸収できていない。
・基礎代謝量の低下やストレスなどの影響で、十分な食事量を摂れなくなっている。
・悪性腫瘍や甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)など、何らかの病気の影響による。
やせた原因が何なのかを知るためにも、定期的に健康診断を受けて自らの健康状態を把握するようにしましょう。

肥満が更年期症状を悪化させる恐れも
肥満は、ホットフラッシュ、腟・外陰部の乾燥やかゆみ、尿もれ、抑うつ、関節痛などの更年期症状を悪化させるといわれています。また、閉経前に喫煙習慣があると、肥満による更年期症状への影響がより強まってしまいます。

更年期に増える内臓脂肪には要注意!

体の中で脂肪がつきやすいのは、内臓の周りのお腹の空洞(腹腔:ふくくう)と皮膚の下の2カ所で、内臓の周りにつく脂肪を「内臓脂肪」、皮膚の下につく脂肪を「皮下脂肪」といいます。女性の体はエストロゲンの働きによって、皮下脂肪がつきやすく、内臓脂肪は蓄積されにくくなっていますが、更年期を迎えエストロゲンの分泌量が減ると、内臓脂肪が増えていきます。

内臓の周りにつく脂肪を「内臓脂肪」、皮膚の下につく脂肪を「皮下脂肪」といいます。

内臓脂肪の脂肪細胞は、中性脂肪をためるだけでなく、生活習慣病を招いたり防いだりする物質を分泌する役割ももっています。脂肪をため込んで肥大化した脂肪細胞からは、生活習慣病を招く物質の分泌が増加し、逆に防ぐ物質の分泌が減少してしまいます。内臓脂肪が蓄積されると、まず食後高血糖、高血圧、脂質異常などが起こり、やがて生活習慣病(糖尿病[2型]、高血圧症、脂質異常症)のリスクを高め、動脈硬化や心臓病、脳卒中などへとつながっていきます。最近ではがんや認知症にも内臓脂肪が関係していることも分かってきました。
ただし、内臓脂肪は脂肪の一時的な貯蔵庫であるため、体についてしまっても減らしやすいという特徴があります。

内臓脂肪の詳細や肥満対策については、大正健康ナビ「30代からの内臓脂肪と肥満」もご覧ください。

更年期に太ることで生じるデメリット

脂質異常症や糖尿病のリスクが高まる
LDLコレステロールや中性脂肪の値が基準値を超えると脂質異常症と診断されます。また、血糖値の乱れは糖尿病のリスクも高めます。

血圧が上昇しやすくなる
肥満の人は肥満でない人に比べると高血圧になりやすい傾向があります。さらに更年期は、エストロゲンによる血管を広げる働きが低下したり、自律神経のバランスが乱れたりするため、血圧が上昇しやすくなります。

婦人科系の病気のリスクが高まる
肥満によって子宮体がんのリスクが上昇します。また、閉経後の肥満は乳がんのリスクを高めることも明らかになっています。定期的な婦人科健診は閉経後も継続しましょう。

膝に負担がかかる
体重増加によって膝への負担も増します。痛みが出て日常生活に影響したり、転倒・骨折のリスクが高まったりします。

体重増加によって膝への負担も増します。痛みが出て日常生活に影響したり、転倒・骨折のリスクが高まったりします。

肥満が更年期症状を悪化させる恐れも
肥満により内臓脂肪が増加すると、腹圧がかかって尿もれや骨盤臓器脱を起こしやすくなります。また、体重増加に伴い、汗をかきやすくなったり倦怠感が生じやすくなったりすることからも、更年期症状を悪化させる可能性があると考えられます。

更年期に太らないようにする暮らしのコツ

太らないために無理な食事制限をするのではなく、日々の暮らしの中でちゃんと食べてしっかり体を動かすことを意識しましょう。

運動を習慣化する
大切なのは、筋肉量を減らさないことです。筋肉量の低下を防ぐ「筋トレ」と脂肪を燃焼する「有酸素運動」を組み合わせ、日常生活に取り入れましょう。筋トレの後に有酸素運動を行うと脂肪燃焼効果がより高まります。運動は1日10分でも継続することが大切。ジムなどに通う時間がとれなくても、通勤や仕事、家事のついでや合間に「ながら運動」を行うなど、少しずつでも体を動かすことを意識してみてください。
また、座る時間が長いほど太りやすくなります。座りっぱなしにならないように、仕事中やリラックスタイムでも、30分に1度を目安に立ち上がるようにしてみてください。テレビのリモコンを使わない、飲み物のカップを小さめにする、別フロアのトイレを使うなど、自然と体を動かすような工夫をするとよいでしょう。
●器具を使わず気軽にできる筋トレ(自重トレーニング)例
スクワット、腕立て伏せ、クランチ(腹筋)、プランク

器具を使わず気軽にできる筋トレ(自重トレーニング)例:プランク

●日常的に取り組みやすい有酸素運動例
ウォーキング、ジョギング、踏み台昇降、ラジオ体操

食生活を見直す
栄養バランスを整えると同時に、高タンパク質・低脂質の食事を意識しましょう。中性脂肪を減らしたりコレステロールの吸収を抑えたりする、DHA・EPAを含む青魚、食物繊維を含む野菜や海藻、きのこ類などを摂るのもおすすめです。
また、食べ過ぎや早食いをしないように、テレビやスマートフォンを見ながらの食事は控え、よくかんで食べましょう。食べる前に水分を摂ったり、最初に食物繊維が豊富な野菜などを食べたりすると満腹感を得やすく、食べ過ぎの予防に有効です。

質が高い睡眠をとる
睡眠不足や睡眠の質の低下は食欲増進や脂質代謝に影響する他、心身が休まらず疲労やストレスの蓄積の原因にもなります。朝や夜の過ごし方を見直して、睡眠のリズムを整えましょう。
更年期の睡眠や改善する方法については、大正健康ナビ「眠れない、眠りが浅い……それって更年期のせい? まずは自分の睡眠を知ろう」をご覧ください。

医師に相談する
生活習慣の見直しに加え、医療機関での治療で状態を改善できることもあります。特に更年期症状がある場合は、婦人科でのホルモン補充療法や漢方療法などが有効です。血圧など他にも不調があるなら、内科に相談するとよいでしょう。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト