脳のエイジングケア
脳は加齢と共に神経細胞が減少し萎縮していきますが、脳の機能を維持することは可能です。食事による脳の老化対策で、いくつになってもクリアな思考をキープしましょう!
物忘れは、脳の認知機能が低下しているサイン
後天的な脳の障害によって起こる認知症とは異なり、脳神経細胞の減少など生理的な老化現象として起こるのが、認知機能の低下による物忘れです。
あなたは物忘れをすることがありますか?

20代
チャレンジ精神も旺盛で、脳の成長期といえる年代。スマホなどからの情報が過多となり、脳が疲れて認知機能に影響を与えるケースが見られる。
30代
脳細胞が徐々に減少し始める。女性の場合、出産によるホルモンバランスの変化や忙しさから一時的に認知機能が低下し物忘れがひどくなる場合もある。
40代
脳の前頭葉の萎縮が見られるようになり、物忘れを実感する人も増えてくる年代。仕事や子育て、家事に忙しく、そのストレスも認知機能が低下する要因となる。
50代
生活習慣病が増加してくる年代。生活習慣病による動脈硬化が脳の血流を悪化させ、認知症につながることもあるので、早めの予防とケアに努めたい。
脳が老化する原因とは?
物忘れに代表される脳の老化には生活習慣やストレスも影響しますが、加齢に伴う脳神経細胞の減少が大きな要因です。神経細胞が減少すると脳は萎縮します。しかし、細胞同士がネットワーク化し、情報のやりとりが活発な状態を維持すれば、老化の進行を抑えることはできます。
脳は体重の2%ほどの重さにもかかわらず、全身で使うエネルギー量の1/5を使います。脳の老化を防ぐには、細胞同士のネットワークを活性化する栄養素をしっかり摂り、脳を栄養不足にしないことが大切です。

脳の老化を防ぐには、次の栄養素をしっかり摂ることが大事
脳の神経細胞は形が複雑で、しかも様々な神経伝達物質を通じて情報のやりとりを行っています。そのため脳の老化を防ぐには、神経細胞や神経伝達物質の原料やエネルギー源になったり、その生成をサポートしたりする栄養素(下記参照)をしっかり摂ることが大切になります。

また、「第二の脳」とも呼ばれ、脳とは互いに情報のやりとりを行うなど密接な関係にある腸のコンディションも脳に影響します。腸のトラブルが脳のトラブルにつながることも。腸が健康であれば、脳に必要な栄養素の吸収もよくなるので、ストレスをため込まず、乳酸菌など多様な菌を摂って腸内環境を整えましょう。乳酸菌では、漬物などからいろいろな種類が摂取しやすい植物性乳酸菌がおすすめです。
脳の「糖化」にも注意が必要。甘い物の摂り過ぎには注意を
糖質を原料とするブドウ糖も脳の主たるエネルギー源です。だからといって糖質を過剰に摂り続けると「糖化」が起き、脳の機能低下やアルツハイマー型認知症の原因になるAGEs(終末糖化産物)がつくられます。血糖値の急激な変動も脳のストレスになるので、糖質を摂り過ぎず血糖値を安定させることが大切です。食後に集中力の低下や眠気を感じたら、糖質依存になっている可能性が。血糖値を上げにくい低GI 値の食品を選び、野菜から食べ始めることを心がけ、よくかんで食べるようにしましょう。


みぞぐちクリニック院長
溝口 徹 先生(みぞぐち・とおる)
1990年福島県立医科大学卒業後、横浜市立大学附属病院、国立循環器病研究センターを経て、96年辻堂クリニック、2003年日本初の栄養療法専門クリニックである新宿溝口クリニックを開設。『「脳の栄養不足」が老化を早める!』(青春出版社)、『ウイルスに強くなる「粘膜免疫力」』(同)など著書多数。