腹痛

腹痛

腹痛と一言で言ってもその原因は様々です。深刻な病気が潜んでいる可能性もあるので、市販薬で症状が治まらない場合は、必ず病院を受診しましょう。腹痛が起きるのが空腹時なのか食後なのか、腹痛以外の症状はあるかなども原因を見極める判断材料となります。なお、痛みの強弱は病気の重症度にはあまり関係していないため、軽い痛みだからとあなどらずに適切に対処しましょう。

監修プロフィール
江田クリニック院長 えだ・あかし 江田 証 先生

自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。

腹痛について知る


腹痛の原因・症状

胃潰瘍や急性胃炎など、胃の疾患の症状として現れることも

「胃潰瘍」によって起こる腹痛は食後に、「十二指腸潰瘍」によって起こる腹痛は空腹時に起こりやすく、食事をすると痛みが軽くなる特徴があります。いずれも腹痛の他に、初期段階では胸やけやゲップ、吐き気、嘔吐など、進行すると吐血、下血などの症状を伴うことが多いので、腹痛以外の症状も確認しておきましょう。

暴飲暴食などの刺激やストレスによって胃の粘膜がダメージを受け、急性の炎症が起こる「急性胃炎」では、強い腹痛の他、吐き気や嘔吐などの症状を伴います。また、初期症状はほとんどないといわれている「胃がん」ですが、上腹部に軽い痛みが起こるケースも見られます。

腹痛の原因

過敏性腸症候群の可能性もある

食事中や食後に感じる腹痛は、胃の痛みによるものと思われがちですが、実は「過敏性腸症候群」の可能性も高いのです。過敏性腸症候群は近年増えている疾患で、大腸内視鏡などの検査をしても腸には目に見える異常が見つからないのに、下痢や便秘などの便通異常が頻繁に起こり、腹部の不快な症状が続く病気です。過敏性腸症候群はストレスや食べ物の種類が関係しているため、まずは生活習慣を見直すことが大切ですが、なかなか改善しない場合や症状がひどい場合は、胃腸科や消化器科を受診しましょう。

過敏性腸症候群

女性の腹痛は婦人科系疾患も疑おう

女性は排卵後から月経前にかけて、女性ホルモンのプロゲステロンの分泌量が増えることにより、むくみやすくなり、血液の循環も滞りやすくなります。骨盤内もうっ血したりむくんだりするため、お腹の張りや痛みを起こしやすい時期です。

女性の腹痛では、「子宮筋腫」や「子宮内膜症」、「卵巣がん」といった婦人科系疾患の可能性も考える必要があります。婦人科検診を定期的に受け、自分の体をチェックしておきましょう。


膀胱炎や胆のう炎でも腹痛が起こる

「膀胱炎」の多くは尿道から大腸菌などの細菌が侵入、膀胱に感染し、膀胱に炎症が起こる病気です。女性に多く見られ、その症状の1つとして腹痛が起きる場合があります。腹痛の他には、排尿痛頻尿、尿のにごりなどの症状が現れます。

また、「胆のう炎」でも腹痛が起こる場合があります。胆のう炎による腹痛は、食後数時間して痛みが起き、背中まで響くような強い痛みがあるのが特徴です。高熱や吐き気、嘔吐なども伴います。胆石症と合併して起こることが多いので、速やかに医療機関を受診しましょう。

膀胱炎、胆のう炎

時間を追うごとに変化する「虫垂炎」による腹痛

盲腸の先端部にある虫垂に細菌が感染して起こる「虫垂炎」では、腹痛が起こる部位や痛みの程度が時間を追うごとに変わるのが特徴です。まず、みぞおちあたりに漠然とした鈍い痛みが起こります。痛みが始まってから12〜24時間後になると腹膜にまで炎症が及び、痛む部位が虫垂のある右下腹部になります。この時の痛みは突き刺すような鋭い痛みで、押すと痛みます。腹痛の他に、吐き気や嘔吐が起こることも。虫垂炎が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

虫垂炎

加齢などによる胃腸機能の低下が原因の腹痛

胃腸機能は加齢と共に衰えていくものです。胃腸の働きが悪くなると食べ物の消化・吸収がうまく行えず、消化不良を起こしやすくなったり、便秘になり腸内にガスがたまりやすくなったりしてし、お腹の張りや痛みが現れることも。また、不規則な生活やストレスにより自律神経が乱れることも、胃腸機能に悪影響を及ぼし腹痛の原因となり得ます。


腹痛の対策

腹痛はお腹周りを緩めることが大事

急な腹痛が起きた場合は、体を締め付ける下着やベルトなどを緩めて安静にしましょう。横になれる環境であれば横になり、頭に低めの枕、膝の下に座布団などを置くと、お腹周りの力が抜け、痛みが軽減されることもあります。

なお、激しい痛みが続いたり、嘔吐などを繰り返したりする場合は、緊急性の高い病気の可能性もあるため、速やかに医療機関を受診しましょう。


市販の「胃腸薬」を使う時の注意点

腹痛と一口にいっても上記で述べたように原因は様々で、胃腸ではなく他の部位に原因がある場合もあります。そのため、市販薬を購入する際は、薬剤師に症状を伝え、適切な薬を選んでもらうことをおすすめします。

腹痛以外にも胃腸症状があり、それほど強い症状ではない場合は、幅広い胃の症状に対応した「総合胃腸薬」や、生薬を原料とした「漢方胃腸薬」を使うのも一案です。

胃の不快な症状に

効果 種類 主な成分
胃のもたれ、胃の不快感、食欲不振に 健胃薬 ウイキョウ、ゴシュユ、センブリなどの生薬が多い
漢方薬 安中散、芍薬甘草湯など
胃の痛み、胸やけ、むかつきに 制酸剤 炭酸水素ナトリウム(重曹)、水酸化アルミナマグネシウムなど
H2ブロッカー 塩酸ラニチジン、シメチジン、ファモチジン
胃粘膜保護薬 ソファルコン、スクラルファートなど
食べ過ぎや消化不良に 消化酵素剤 ビオジアスターゼ、プロザイム、ニューラーゼなど
キリキリするさしこみや胃痛に 鎮痛鎮痙薬 塩酸ジサイクロミン、塩酸パパベリン

便秘

効果 種類 主な成分
回数は少ないけれど、硬く太い便が出る便秘に 刺激性下剤 ピコスルファートナトリウム、センノシドなど
塩類下剤 酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムなど
コロコロの硬い便が出る便秘に 膨潤性下剤 食物繊維、プランタゴ、オバコなど

下痢

効果 種類 主な成分
食あたりによる下痢に 収れん剤 タンニン酸アルブミンなど
吸収剤 活性炭など
消化不良や寝冷えによる下痢に 腸管運動抑制剤 ロートエキスなど

腹痛の予防法

規則正しい生活で胃腸の働きを整えよう

腹痛の原因は様々ですが、胃腸機能を整えることは腹痛予防の第一歩。それには「規則正しい生活」が基本中の基本です。「決まった時間に起きて、決まった時間に寝る」「朝昼晩の3食を規則正しく摂る」といった生活を送ることで自律神経が整い、腸の働きも整います。

この他、ストレスをためこまずにこまめに解消する、ウォーキングなどの運動を習慣化するなど、自律神経を乱さないための心がけも大切です。

腹痛の予防法

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