じんましんは、皮膚が局部的に赤く盛り上がり(膨疹:ぼうしん)、30分から24時間ほどで跡形もなく元の状態に戻ることを繰り返す病気です。かゆみを伴うことが多く、症状は全身のどこにでも現れます。4、5人に1人は一生のうちに一度はじんましんを経験するといわれています。
症状の重さや頻度は人それぞれで、6週間以内に治まる急性じんましんと、6週間以上続く慢性じんましんがあり、慢性じんましんは大人に多く見られます。
じんましんは、基本的に皮膚症状だけですが、のどの粘膜が腫れると呼吸が苦しくなることも。身の周りにある様々なものが引き金となって発症し、約70%は原因が分からないとされる厄介な病気でもあります。
アレルギー専門医、小児科専門医、医学博士。京都大学医学部を卒業後、大阪府済生会中津病院小児科、免疫・アレルギーセンター部長などを経て現職。『じんましんの「真」常識』(医薬経済社)、『アトピー・かゆみ・じんましん 皮膚とアレルギーの名医が教える最高の治し方大全 聞きたくても聞けなかった146問に専門医が本音で回答!』(文響社)、『アレルギー疾患・非アレルギー疾患を見極める鑑別診断』(丸善出版)など、著書・共著書多数。
●じんましんの種類
じんましんは病気の症状として現れるものでもあり、種類によって治療が大きく異なり、緊急性の判断やその病気のタイプを正しく特定することが大切です。そのため、じんましんは主に次の4つに分類されています。
①特発性のじんましん
特発性のじんましんは原因不明で、特定の刺激などがなくても起こるじんましんです。6週間以内に治まる急性じんましんと、6週間以上続く慢性じんましんがあります。
②刺激誘発型のじんましん
刺激誘発型のじんましんは、特定の刺激や負荷によって起こるじんましんです。アレルギー性のじんましんと非アレルギー性のじんましんがあります。
③血管性浮腫(けっかんせいふしゅ)
通常のじんましんが皮膚の浅いところで起こるのに対し、血管性浮腫は皮膚の深いところで起こるため、皮膚の盛り上がりが少なく、赤みやかゆみがありません。
④じんましん関連疾患
他の病気が原因で起こるじんましんや、じんましんをきっかけに起こる他の病気を指します。具体的には、じんましん様血管炎や色素性じんましん、シュニッツラー症候群およびクリオピリン関連周期熱症候群などが該当します。
●じんましんが起こるメカニズム
じんましんの発症から症状が消えるまでの間、体の中では次のようなことが起こっています。
①何らかの刺激や負荷によって皮膚(真皮)にある肥満細胞(マスト細胞)が活性化し、肥満細胞内からヒスタミンなどの炎症やアレルギーを起こす物質が放出される。
②ヒスタミンの働きで皮膚内の血管が広がり、血流量が増えることで皮膚に赤みが現れる。また、血液中の成分が血管から漏れてたまりやすくなり、血液中の血漿(けっしょう)が染み出して皮膚に膨らみが生じる。
③ヒスタミンが神経を刺激するため、かゆみが生じる。
④ヒスタミンが体内で分解・処理され、症状が徐々に落ちついていく。
ただし、血管性浮腫の場合は、通常のじんましんと同様のメカニズムで起こるものの他に、遺伝的にC1インヒビターという血液中のタンパク質の働きが弱いために起こるものもあります。
●刺激誘発型じんましんの原因
肥満細胞を刺激してじんましんを引き起こす原因は様々で、主に次に挙げるものが考えられます。しかし、同じ条件下で同じ症状が繰り返し起これば原因は特定しやすいのですが、複数の原因が重なって起こることや、主だったもの以外の原因もあるため、特定が難しく、約70%は原因不明とされています。
<アレルギーによるじんましん>
じんましんには、アレルゲン(アレルギーを起こす物質)がIgEというタンパク質を介して肥満細胞を活性化させて起こる「アレルギー性じんましん」と、IgEを介さない「非アレルギー性じんましん」があります。アレルギー性じんましんは比較的原因の特定がしやすいといえます。アレルギーによるじんましんには、主に次の原因があります。
じんましんの種類 |
原因 |
| 食物アレルギーや口腔アレルギーによるじんましん | 小麦や卵、乳製品、ナッツ、果物、スパイスなど |
| アスピリンアレルギーによるじんましん | アスピリンをはじめとするNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を配合した解熱鎮痛薬やかぜ薬 |
| コリン性じんましん | 汗 |
| 体に触れる物に対するアレルギーによるじんましん(接触性じんましん) | アクセサリーやゴム手袋、化粧品、植物など |
| 日光じんましん(光過敏症) | 日光 |
| 昆虫アレルギーによるじんましん | 蚊・蜂・蟻など |
<刺激によるじんましん>
アレルギー以外にも、主に次のような刺激によって生じるじんましんがあります。
じんましんの種類 |
原因 |
| 温熱じんましん | 暑さ・熱い物 (夏の高い気温やお湯など) |
| 寒冷じんましん | 寒さ・冷たい物 (冬の低い気温や冷たい水など) |
| 振動じんましん | 皮膚への振動 (マッサージなど) |
| 機械性じんましん 遅延性圧じんましん |
圧迫・摩擦 (衣類やバッグ、ひっかき傷など) |
| 肥満細胞に対する直接的な刺激で起こるじんましん | 香辛料 (とうがらしやからしなど) |
<その他に原因として考えられるもの>
じんましんには、アレルギーや皮膚への刺激以外の原因で起こるものもあります。
じんましんの種類 |
原因 |
| アセトアルデヒドの蓄積や血管拡張作用によって起こるじんましん | アルコール |
| ウイルスや細菌に対する免疫反応として起こるじんましん | 感染症(かぜなど) |
| 体内の炎症物質が過剰につくられて起こるじんましん | 特定の解熱鎮痛薬やサリチル酸を含む食品など |
これらの原因以外にも、じんましんの原因となるものはあります。また、ストレスや疲労は、直接的にじんましんを引き起こすのではなく、免疫機能の低下などでじんましんを起こりやすくします。
じんましんの主な症状は、皮膚にかゆみを伴う赤い盛り上がり(膨疹:ぼうしん)で、30分から24時間程度で元の状態に戻ることを繰り返します。膨疹の大きさは1、2mm程度のものから大きなものまで様々で、形も、円形のものから線状のものまでいろいろあります。体のあらゆるところに生じ、消えても別の場所に現れたり、徐々に広がったりつながったりすることもあります。
のどの粘膜や気道が腫れるのも症状の1つであり、その場合は息が苦しくなったり血圧が低下したりすることがあるので注意が必要です。また、涙やくしゃみ、咳、吐き気、腹痛などが起こることもあります。
血管性浮腫の症状が現れやすいのは、眼やまぶた、唇など顔面ですが、手や腕、足などにも見られます。また、一般的なじんましんとは、皮膚の盛り上がりが少なく赤みやかゆみがない、消えるまでに2、3日かかるといった違いがあります。
●慢性じんましんの場合、生活に支障を来すことも
慢性じんましんでは長期にわたって症状が現れるため、かゆみによってストレスがたまったり睡眠不足になったりすることがあります。服薬期間が長くなることを負担に感じる人も。ストレスや睡眠不足が症状の悪化につながってしまうケースも見られます。
●じんましんと間違えやすい皮膚のトラブル
じんましんと似たような皮膚症状が出た場合、何日も症状が続いたり、水疱(すいほう)や膿疱(のうほう)、全身症状などを伴ったりした場合は、他の病気の可能性もあります。
<症状が似ている皮膚のトラブル>
・虫刺され
蚊やダニ、ムカデなどの虫に刺されると、皮膚が赤く盛り上がりかゆみを感じます。症状は数日続きます。
虫刺されについては、疾患ナビ「虫刺され」も参考にしてください。
・あせも
皮膚に赤い盛り上がりが出て、軽いかゆみを感じることがあります。じんましんとは異なり、症状が短時間で消えることはありません。
あせもについては、疾患ナビ「あせも(汗疹)」も参考にしてください。
・多形滲出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん)
単純ヘルペスウイルスやマイコプラズマの感染、薬剤のアレルギーなどにより、中心が白い的のような同心円状の紅斑(皮膚の赤み)が現れます。かゆみがある場合とない場合があり、症状は2、3日続きます。
・接触皮膚炎
接触皮膚炎はいわゆるかぶれのことで、化粧品などが皮膚に触れたことにより、触れた部分に湿疹が生じます。接触性じんましんとは発症のメカニズムが異なり、水ぶくれなどがゆっくりと現れ、症状は数日続きます。
じんましんの症状の範囲が広い、かゆみが強い、じんましんの影響で眠れない、集中できないといった場合や、じんましん以外の症状がある場合は医療機関の受診をおすすめします。皮膚科やアレルギー科への受診がおすすめですが、子どもの場合はかかりつけの小児科でもよいでしょう。
●じんましんの診断
まずは問診で、いつから、どこに、どんな時に、どんな環境で、どの程度の、どのような症状が出たのかなどを確認します。食べ物や身に着ける物などが原因となる場合もあるので、発症時の記録を残すとよいでしょう。患部の写真も撮影しておくと、医師に症状を伝えやすくなります。
その後、必要に応じて血液や皮膚の検査、誘発検査(物理的な刺激を与えて症状が現れるかを確かめる検査)、負荷検査(原因と考えられる物質の摂取や行動を行うことで症状が現れるかを確かめる検査)などを行い、発症や悪化の原因を調べます。
●じんましんの治療
じんましんは原因を特定できれば、それを除去することで治りますが、症状が改善しない場合は抗ヒスタミン薬の内服治療が行われます。かゆみを和らげるために外用薬が用いられる場合も。また、原因や症状に応じてステロイド薬や抗菌薬が使われることもあります。血管性浮腫も抗ヒスタミン薬などによる治療が中心ですが、C1インヒビターが関与している場合はその補充療法が行われます。また、じんましん関連疾患では炎症を抑える治療が中心になり、主にステロイド薬で治療が進められます。
慢性じんましんの場合、薬の内服が6カ月ほど続く場合もありますが、医師の指示に従い、途中で服薬を止めないことが大切です。
●じんましんで特に注意が必要な症状
注意すべきは重いアレルギー反応です。次のような症状がある場合は早急に医療機関を受診しましょう。
・息苦しさやのどの締めつけ感
・ゼーゼーと荒い息
・声のかすれ
・のどや舌、唇の腫れ
・飲み込みにくさ
・めまいや意識障害
●じんましんの症状が出ている時のセルフケア
じんましんの症状が出ている時は、その原因が特定できていればそれを避け、皮膚への刺激を減らすことで悪化させないことが大切です。
<セルフケアのポイント>
・原因となるものを避ける
じんましんの原因となっている特定の食べ物や薬、環境は避けましょう。
・患部を冷やす
冷やしたタオルやタオルで包んだ保冷剤などを5から10分ほど患部に当てると、かゆみが和らぎます。氷や保冷剤を直接皮膚に当てると、刺激となってかえって症状を悪化させてしまうので注意しましょう。
・体を温めない
熱いお湯や長時間の入浴は避け、ぬるめのお湯で短時間入るようにしましょう。激しい運動やサウナ、アルコール、香辛料も、症状が落ち着くまでは控えてください。特に、温熱じんましんは体を温めると症状が悪化します。
・寒冷じんましんの場合は体をゆっくり温める
寒冷じんましんは、他のじんましんとは異なり、体を冷やすと症状が悪化します。急激に体を温めるのも刺激となるため、暖かい場所に移動するなどして、ゆっくりと体を温めるとよいでしょう。
・患部をかかない
患部をかくと、その刺激でかゆみが増してしまいます。膨疹が消えてもかゆみが残ることがありますが、かいてしまうと膨疹が再び現れたりするので注意しましょう。
・締めつけの少ない服を着る
ゆったりした衣類を選び、ベルトやゴムなどで皮膚を圧迫しないようにしましょう。
・運動を控える
コリン性じんましんの場合、運動による発汗で症状が悪化します。症状が出ている時は運動を控えましょう。
・心身を休める
症状を悪化させないためにも、睡眠をしっかりとって心身を休め、ストレスをためないように過ごすことが大切です。
●じんましんは市販薬が有効な場合も
じんましんだけで他の症状が出ていない場合や、症状が軽い場合は市販薬での対処も可能です。ただし、市販薬でじんましんに使用されることが多い第1世代の抗ヒスタミン薬は、眠くなりやすいという特徴があります。薬剤師や登録販売者に相談し、第2世代の抗ヒスタミン薬を選ぶとよいでしょう。
全てのじんましんを予防することはできませんが、繰り返し発症し、原因が分かっている場合は、それらを避けることで再発のリスクを低減させることは可能です。また、皮膚に過度な刺激や負担を与えないようにし、生活のリズムを整え健康維持に努めることも有効です。
●じんましんの予防のポイント
・予防の基本は規則正しい生活、バランスのとれた食事、ストレスフリー
疲労やストレスの蓄積、睡眠不足などで発症しないように、規則正しい生活で十分な休息をとり、バランスのとれた食事を心がけ、ストレスもためないようにしましょう。
・じんましんの原因を把握し、避ける
病院の受診や症状が出た日時や食べた物、服用した薬、運動、体調などを記録しておくと、じんましんの原因が把握しやすくなります。医療機関を受診してアレルギー物質も特定するとよいでしょう。把握できたら、生活の中でそれらとの接点を避けるようにしてください。
・皮膚のバリア機能を低下させない
皮膚のバリア機能が低下していると、症状が出やすくなります。洗浄力の強い石けんで顔や体をゴシゴシ洗う、皮膚が乾燥した状態のままでいる、強い紫外線を浴び続けるなど、皮膚のバリア機能を低下させる行動は避けてください。
・慢性じんましんの場合は医師の指示通りに服用する
原因が特定できないことも多い慢性じんましんの場合、症状がなくても医師の指示に従って抗ヒスタミン薬を継続して服用します。薬によってうまく症状をコントロールしていけば、多くの場合は少しずつ薬の量を減らすことができ、やがて薬を中止できるようにもなります。
じんましんの症状が出ている時は、皮膚への刺激は厳禁。顔や体を洗う時はなるべく石けんや洗顔料を使わず、使う場合はしっかりと泡立ててこすらずに洗いましょう。乾燥はかゆみを強めてしまうので、低刺激性のスキンケア用品での保湿も忘れずに。
皮膚への刺激をできるだけ減らすため、爪は短く切っておきましょう。就寝用の手袋を着けたり、患部をガーゼや包帯などで覆ったりするのもおすすめです。また、体が温かくなった状態ではかゆみも増します。入浴後すぐに布団に入ったり、就寝時の室温を高く設定したりするのも避けるとよいでしょう。
寒冷じんましんや血管性浮腫は、一部遺伝するものがあることが明らかになっています。アレルギー性のじんましんも遺伝する場合がありますが、アレルギーは生活習慣で決まっていく面もあるため、一概に遺伝するとはいえません。また、どのじんましんであっても人にうつることはありません。
妊娠中や授乳中の場合、じんましんの原因を避けても症状が改善しない場合は、胎児や新生児への影響がないことが確認されている抗ヒスタミン薬の内服薬が使われます。局所的な症状にはステロイドの外用薬が使われることも。症状が出たらかかりつけの産婦人科医または皮膚科に相談してください。
血液検査ではアレルギーの有無やアレルゲンが分かりますが、IgEが陽性になった物質がじんましんの原因であるとは限りません。血液検査を行ったからといって原因が特定できるわけではないため、血液検査は医師が必要と判断した場合に行います。特に、1度きりで軽度のじんましんであれば、血液検査は不要と考えます。