目のかゆみ

目のかゆみ

目のかゆみは、目に何らかの炎症が起きていることで現れる症状の1つです。原因は、アレルギーや感染症、ドライアイ、異物の混入など様々で、治療法もそれぞれ異なります。目のかゆみはつらいですが、我慢できずにこすってしまうと目を傷つけてしまうため、こすらずに市販の目薬などでセルフケアを行い、それでもかゆみが治まらない場合は受診しましょう。

監修プロフィール
久喜かわしま眼科 副院長 かわしま・もとこ 川島 素子 先生

1998年慶應義塾大学医学部卒業。同大学医学部研修医、東京都済生会向島病院、慶應義塾大学医学部助手を経て2012年より久喜かわしま眼科勤務、18年より現職。日本眼科学会専門医。専門は、角膜、ドライアイ、および眼表面を中心とした前眼部疾患。

目のかゆみについて知る


目のかゆみの原因

目のかゆみを引き起こす主な原因には、次のようなものがあります。

●アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどのアレルゲン(=アレルギーの原因物質)によって引き起こされる目のかゆみです。特定の物質に触れるとかゆみが生じたり、季節性の場合は毎年かゆみを繰り返したり、長く続いたりします。
・季節性アレルギー(花粉症)
季節性アレルギーは、スギやヒノキ、シラカバ、イネ科のカモガヤ、キク科のヨモギ、ブタクサなどの花粉が原因でかゆみが引き起こされます。
・通年性アレルギー(ハウスダスト)
ハウスダストとは家の中のちりやほこりのことで、その中にはダニ、カビ、細菌、花粉、繊維のくず、人の垢や皮膚片、フケ、ペットの毛など様々な物が含まれます。

花粉やハウスダストで目のかゆみがある女性のイメージイラスト

●感染性結膜炎(ウイルス感染・細菌感染)
感染性結膜炎は、ウイルスや細菌への感染で目に炎症が起こり、かゆみが引き起こされることがあります。以下のような感染症がありますが、かゆみは必ずしも強いわけではありません。
・流行性角結膜炎(はやり目)
流行性角結膜炎(はやり目)は、アデノウイルス8型、19型、37型、53型等の感染が原因です。感染力が極めて強く、時に大きな流行を引き起こすため「はやり目」とも呼ばれます。
・咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)は、アデノウイルス3型、4型、7型、11型等の感染が原因で、子どもの「三大夏かぜ」の1つとして知られ、「プール熱」とも呼ばれます。
・急性出血性結膜炎(AHC)
急性出血性結膜炎(AHC)は、エンテロウイルス(70型)やコクサッキーウイルス(A24変異型)の感染によって起こります。
・細菌性結膜炎
細菌性結膜炎は、インフルエンザ菌や肺炎球菌、淋菌、クラミジアに感染して起こります。

感染性結膜炎は、ウイルスや細菌への感染で目に炎症が起こり、目のかゆみがある男性のイメージイラスト

※結膜炎に関して詳しくは、疾患ナビ「結膜炎」も併せてご覧ください。

●ものもらい(麦粒腫:ばくりゅうしゅ)
ものもらいの原因は、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌など、皮膚の表面に存在する常在菌です。常在菌は普段は悪影響を及ぼしませんが、体の抵抗力が落ちると増殖し、マイボーム腺やまつ毛の毛穴に感染して、ゴロゴロしたかゆみを引き起こすことがあります。常在菌のため、人から人にうつることはありません。

マイボーム腺

※ものもらいに関して詳しくは、疾患ナビ「ものもらい」も併せてご覧ください。

●眼瞼炎(がんけんえん)
まぶたのかゆみが、目のかゆみとして感じられることがあります。眼瞼炎はまぶたの炎症の総称で、ウイルスや細菌への感染、皮脂の過剰分泌、アレルギーなどが原因になります。高齢者やアトピー性皮膚炎の患者などに起こりやすい炎症です。

●ドライアイ

涙はムチン層、水層、油層の3層からできており、目の表面を滑らかに覆って目を守っています。この涙の層が不十分になってしまった状態がドライアイです。ドライアイによって、目のかゆみが引き起こされることがあります。

涙はムチン層、水層、油層の3層からできており、目の表面を滑らかに覆って目を守っています。この涙の層が不十分になってしまった状態がドライアイです。

※ドライアイに関して詳しくは、疾患ナビ「ドライアイ(目が乾く)」も併せてご覧ください。

●マイボーム腺機能不全(MGD)
マイボーム腺機能不全(MGD)は、マイボーム腺の機能が低下し、油の分泌がうまくできなくなることで、涙の油の層が不十分になり、乾燥やかゆみを生じます。ドライアイの人の80%程度にマイボーム腺機能不全が関与しているといわれ、加齢などが原因で起こります。

●コンタクトレンズの装用によるかゆみ(巨大乳頭結膜炎)
コンタクトレンズの汚れが細菌感染の原因になったり、酸素不足で目が乾燥したりしてゴロゴロ感やかゆみが出ることがあります。また、コンタクトレンズに付着した汚れやコンタクトレンズそのものの材質などが原因で起こる、上まぶたの裏側に起きるアレルギーを「巨大乳頭結膜炎」といい、特に長期装用タイプのソフトコンタクトレンズを使用している人に多く見られます。

●その他の原因
まつ毛やごみなどの異物や、メイクや洗顔料などが目に入ることで、かゆみが引き起こされることもあります。


目のかゆみの症状(原因別)

目のかゆみの原因ごとに、症状を見分けるポイントをご紹介します。

●アレルギー性結膜炎の症状
アレルギー性結膜炎による目のかゆみは、アレルゲンに近づいたり、花粉の場合はそれが飛ぶ季節に発症したりするなど、特定の状況下で起こります。激しい目のかゆみが特徴で、主に次のような症状が現れます。
・目…強い目のかゆみ、目の充血、涙目、まぶたの腫れ
・鼻…くしゃみ・鼻水
・のど…かゆみ、イガイガ感
・皮膚…花粉が肌に付着することによって花粉皮膚炎になることがあり、まぶたや目の周り、あごや首のような皮膚の薄い部分などに、肌荒れや湿疹が現れることがあります。
・発熱…花粉症が原因で悪寒(おかん)を感じたり微熱が長く続いたりすることもあります。

●感染性結膜炎の症状(ウイルス性・細菌性)
感染性結膜炎の場合、かゆみは強くないことが多いですが、目のゴロゴロ感がかゆみとして感じられることもあります。また、目やにが多く出ること、その色が黄色や緑色がかっていることなどが、アレルギー性結膜炎とは異なります。
・流行性角結膜炎(はやり目)
流行性角結膜炎(はやり目)の症状は、目の充血、多量の目やに、涙の増加、目のゴロゴロ感や痛みなど。また、耳の前やあごの下のリンパ節の腫れを伴うこともあります。最初は片目のみの発症でも、数日中にもう一方の目にも感染して症状が出るケースもあります。
・咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)は、目の充血、目やに、涙の増加などの目の症状に加え、のどの痛み、39℃前後の発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状を伴うのが特徴です。片目に発症し、続いてもう一方の目に起こることもあります。
・急性出血性結膜炎(AHC)
急性出血性結膜炎(AHC)は、結膜から出血しているような強い充血が突然起こるのが特徴です。目やにや目のゴロゴロ感を伴います。
・細菌性結膜炎
かゆみがあまりないことが多いのが細菌性結膜炎です。目が充血し、黄色や緑色、または灰色がかったクリーム状の膿性の目やにが出ます。淋菌やクラミジアによる結膜炎では、男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎や尿道炎を併発します。片目から始まることが多いです。

●ものもらいの症状
ものもらいは初期にはまぶたに赤みが出て、軽いかゆみなどを感じます。症状が進行するのに伴い炎症が強まり、赤み、腫れ、痛みが強くなり、目がゴロゴロしたりします。やがて皮下に膿がたまり、自然に破れて膿が出ることもありますが、その後は回復に向かいます。

●眼瞼炎(がんけんえん)の症状
眼瞼炎は、まぶたの皮膚、まつ毛の生え際、目尻などにかゆみが起こります。皮膚が赤くなったり、腫れてしこりができたり、痛みやかさぶたのようなものができることもあります。

●ドライアイ・マイボーム腺機能不全(MGD)の症状
ドライアイやマイボーム腺機能不全(MGD)では、軽いかゆみや目の疲れ、目の乾き、かすみ、ゴロゴロ感、目の重苦しさや見えにくさ、充血といった症状が出ます。また、ドライアイという名前とは逆に、常に涙目になる場合もあります。これは涙の層が十分ではないために、目の表面が傷ついて刺激を受けやすくなって涙が出たり、マイボーム腺機能不全によって油分が減り、水分で補おうとして涙が増えたりするためです。涙が出ずに目が乾くだけでなく、唾液も出にくくなる場合はシェーグレン症候群が疑われます。
※シェーグレン症候群に関して詳しくは、疾患ナビ「シェーグレン症候群」も併せてご覧ください。

●コンタクトレンズによるかゆみ(巨大乳頭結膜炎)
目のかゆみや充血、目やに、まぶたの腫れなどが起こる他、まぶたの裏側に乳頭と呼ばれるブツブツとした隆起が幾つもでき、まばたきの度に角膜に触れて目がゴロゴロすることがあります。乳頭が直径1mm以上になった場合には巨大乳頭結膜炎と呼ばれ、コンタクトレンズを装用すると乳頭にレンズが引っ掛かり、レンズが上にずれやすくなります。

●その他の原因
異物が入った場合は、異物感を伴うかゆみがあります。


目のかゆみの治療・対処法

目のかゆみは、原因によって治療法が異なります。原因が分かっている場合は市販薬で対処できます。原因が分からないかゆみは医師に相談しましょう。

●アレルギー性結膜炎による目のかゆみの治療・対処法
花粉症やハウスダストアレルギーなど、原因となるアレルゲンがすでに分かっている人は市販薬でも対処できます。薬局・薬店では「抗アレルギー剤配合」などの表示がある物を選びましょう。市販薬には、医療用医薬品の中から安全性の高い成分を転用(スイッチ)した「スイッチOTC」など、医療用と同成分の物もあります。

原因となるアレルゲンが分からない場合は、まずは病院で血液検査などを行い、アレルゲンを調べます。病院では抗アレルギー目薬の他、かゆみの症状がひどい場合には、低濃度のステロイド点眼薬が処方されることもあります。また、必要に応じて抗アレルギー、抗ヒスタミンの内服薬の併用や、舌下免疫療法(アレルゲンを含んだ経口薬を少しずつ投与して体をアレルゲンに慣らし、症状を緩和する療法)などもあります。

●感染性結膜炎による目のかゆみの治療・対処法(ウイルス性・細菌性)
ウイルス性の結膜炎の場合、ウイルスに対応する目薬はないため自然治癒を待ちますが、治癒までの間の細菌感染(二次感染)を防ぐため、抗菌剤(抗生物質)入りの抗菌目薬や炎症を抑える目薬の点眼などが行われます。

ウイルス性結膜炎は子どもの間で流行しやすいことから、「学校保健安全法」で以下の出席停止期間が決められているので注意しましょう。
<ウイルス性結膜炎の出席停止期間>
・流行性角結膜炎(はやり目)
…感染の恐れがないと医師が認めるまで。
・咽頭結膜熱(プール熱)…主な症状が消えて2日後か、感染の恐れがないと医師が認めるまで。
・急性出血性結膜炎(AHC)…感染の恐れがないと医師が認めるまで。

細菌性の結膜炎の場合は、抗菌目薬で対処します。多くの場合、点眼治療によって症状が治まり、3日から1週間程度でよくなります。

市販薬では、細菌の二次感染を予防し、充血や目やになどの症状を緩和する効果が期待できる「抗菌剤・抗炎症剤配合」の表示がある物を選びましょう。

●ドライアイによる目のかゆみの治療・対処法
ドライアイによる目のかゆみは、涙の成分である塩化カリウムと塩化ナトリウム、さらに目に潤いを与えるヒアルロン酸などの成分が含まれた人工涙液の目薬で対処します。市販の目薬では「ドライアイ用」と書かれた物を選びましょう。ただし、市販の目薬を使用してもよくならない場合は、眼科の専門医の治療を受けるようにしてください。スマートフォンの見過ぎなど、ドライアイを起こしやすくなる生活習慣を改めることも大切です。

●コンタクトレンズの装用による目のかゆみの対処法
コンタクトレンズによる目のかゆみは、コンタクトレンズの装用を控えて、目薬などで治療していきます。治療後、コンタクトレンズの装用を再開する場合、レンズを変更することもあるため、コンタクトレンズによるかゆみは、まずは眼科医に相談しましょう。

●目のかゆみの応急処置とセルフケア
<目のかゆみは冷やす? 温める?>
目のかゆみの対処法としては、目を冷やしたほうがよい場合と、温めたほうがよい場合があります。
・目を冷やしたほうがよい場合…アレルギーなどで起こる急性の目のかゆみの場合は、目を冷やしましょう。冷たいおしぼりなどで冷やすと、かゆみを軽減できます。逆に温めると血流がよくなり、かゆみが強くなります。
・目を温めたほうがよい場合…ドライアイやマイボーム腺機能不全などによって起こる慢性的なかゆみや目のゴロゴロ感がある場合は、蒸しタオルなどで目を温めましょう。目を温めることでマイボーム腺から油分が分泌され、症状の軽減につながります。

<目薬の正しい差し方>
目薬の正しい差し方を知っておきましょう。
➀手を石けんと流水できれいに洗い、清潔なタオルやペーパータオルで拭く。
➁目薬のキャップを外したら上を向き、下まぶたを軽く引いて点眼。この時、点眼ボトルの先端がまつ毛につかないように注意する。
➂点眼後は軽く目を閉じ、薬液が目全体に広がるようにする。薬液があふれたら、清潔なティッシュで軽くぬぐう。
➃使用後はキャップを固く閉め、直射日光の当たらない冷暗所で保存する。

目薬の正しい差し方。①手を清潔にする②まつ毛につかない距離から点眼③目を閉じ、薬液のぬぐう④冷暗所で保存

目のかゆみの予防法

目のかゆみを予防するために、日常生活の中で目を守る習慣をつけましょう。

●アレルゲンを寄せつけない
花粉の飛散時期などには、「防ぐ」「持ち込まない」「洗い流す」を意識しましょう。
・防ぐ…外出時はメガネやゴーグルなどで目に花粉が入るのを防ぎ、マスクや衣服などでも対策しましょう。
・持ち込まない…家に入る前に衣服の花粉を払うなど、花粉を室内に持ち込まないようにしましょう。こまめな掃除や空気清浄機の活用なども大切です。
・洗い流す…帰宅後はすぐに顔を洗って目の周りの花粉を洗い流しましょう。帰宅後すぐにシャワーを浴びるのも効果的です。

●デジタル機器を長時間見過ぎず、深いまばたきを意識する
目のかゆみにつながる乾燥やドライアイを防ぐために、スマートフォンなどのデジタル機器を長時間見過ぎないことも大切です。例えばデジタル機器を20分使用するごとに、20秒間、20フィート(約6メートル以上)離れた場所を見る「20-20-20ルール」を覚えておくと目を休める目安になります。

目のかゆみにつながる乾燥やドライアイを防ぐために、デジタル機器を長時間見過ぎないことも大切。デジタル機器を20分見たら、20フィート(約6メートル)離れた場所を、20秒見る。

また、スマートフォンなどを凝視するとまばたきが減り、ドライアイにつながるため、目をぎゅっと閉じて数秒間保つ「深いまばたき」を意識して行うようにしましょう。

●毎日のリッドハイジーン(眼瞼清拭:がんけんせいしき)で目を清潔に
「リッドハイジーン」とは、目の周り、特にまつ毛の生え際やまぶたの縁を清潔に保つケアのことです。毎日、歯磨きをするように、目の周りやまつ毛を洗うことにより、目やまぶたの炎症のリスクを低下させることができます。その際、顔を拭くタオルは家族で共用しないようにしましょう。
また、お化粧をする人はアイメイクにも注意が必要です。アイラインを引く時はマイボーム腺を塞ぐようなインサイドラインは避け、メイク落としの際は目の周りにメイクが残らないようにしましょう。

目のかゆみは、目が炎症を起こしているサインの1つです。炎症には理由があります。かゆみを放置せず、炎症の原因に合った対処をしていきましょう。


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