肥満症は病院で治療できます

[7]肥満症は病院で治療できます

[7]肥満症は病院で治療できます

「肥満は自己管理の問題だから、医療を受ける対象ではない」と思い込んでいませんか? 以下の「肥満症」の判定に当てはまる人は、早期に病院での治療が必要な状態です。肥満症と、病院での治療について知っておきましょう。



医学的な治療が必要な「肥満症」とは?

肥満と肥満症の違いについてのチャート。肥満は、BMI25以上だが、11の健康被害はない。肥満症は、BMI25以上で11の健康被害が1つ以上ある、または、内臓脂肪型肥満である。そのうち、BMI35以上を高度肥満症と呼ぶ。肥満症は減量による医学的治療が必要な状態である。

肥満(BMIが25以上:BMIの計算方法は「知ってる? 肥満・肥満症の違い」の記事へ)で、なおかつ以下の肥満による「11の健康障害(合併症)」が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい「内臓脂肪型肥満」である場合は「肥満症」と診断され、減量による医学的治療が必要な状態です。BMIが35以上の場合、「高度肥満症」となります。

●11の健康障害(合併症)
1. 糖尿病(2型)
2. 脂質異常症
3. 高血圧
4. 高尿酸血症・痛風
5. 狭心症・心筋梗塞
6. 脳梗塞
7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
8. 月経異常・女性不妊
9. 睡眠時無呼吸症候群
10. 膝・股関節・背骨・手指関節の障害
11. 肥満関連腎臓病


肥満症は、医療機関を受診しましょう

健康診断などで上記の健康障害を指摘され、肥満症だと考えられる場合は、肥満症専門医のいる医療機関や認定肥満症専門病院を受診しましょう。以下の日本肥満学会ホームページから確認することができます。

●肥満症専門医についての情報
http://www.jasso.or.jp/contents/authorization/specialist.html

●認定肥満専門病院を探すための情報
http://www.jasso.or.jp/contents/wod/hospitals.html

該当する受診先が近くにない場合は、かかりつけ医や内科医に相談してみましょう。

肥満症の検査と治療とは?

肥満症では、医師や肥満症生活習慣改善指導士(食事や運動について科学的な指導を行う看護師と管理栄養士)といった専門家が、一人ひとりの健康状態とライフスタイルに適した生活指導を行っていきます。
肥満症の治療の基本は減量で、食事と運動による生活改善が基本となります。減量といってもBMI を25以下にするのが目的ではなく、内臓脂肪を減らして肥満によって起きる11の健康障害(合併症)を予防・改善することを目的にした治療を行っていきます。

肥満症の検査と治療について、診察のイメージイラスト。

●検査と治療法
①詳しい検査を行い、減量目標と治療プランを立てる
肥満症の治療は、血液検査やCTスキャンで、内臓脂肪の蓄積の状態や合併症の検査をした後、具体的な治療プランと目標を医師や肥満症生活習慣改善指導士と相談して、治療に取り組みます。
体重の3%の減量で血圧、血糖、コレステロールなどの値が改善することが分かっています。そのため、まずは3から6カ月で現在の体重を3%以上(高度肥満症の場合は5から10%)減らすことを目標にする場合が多く、目標が達成された後に再び検査をして数値を確かめ、新たな目標を決める……というように、段階的に取り組んでいきます。ただし、高度肥満症の場合や合併する疾患によって、治療の目標や進め方は異なります。

➁肥満症治療の基本は、ライフスタイルの改善(行動療法・食事療法・運動療法)
●行動療法
肥満症治療における行動療法は、患者が自分の生活習慣を振り返って肥満につながる行動を見つけて改善し、やせやすい行動を続けるために行うもので、食事療法や運動療法を続ける前向きなモチベーションを保つために必要です。
例えば、毎日の体重測定を習慣化してグラフにしたり、日常生活や食べた物とカロリーを記録したりすることなどが行動療法に当たります。行動療法は今の減量はもちろん、肥満症に戻らないための一生の仕組みづくりに役立ちます。

●食事療法
食事療法は減量治療の基本となる療法です。肥満症生活習慣改善指導士のサポートの下、基礎代謝量を確認し、一人ひとりのライフスタイルに合わせて行っていきます。「食事の量」の改善はもちろんのこと、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養をしっかり摂る「食事の質」、1日3食規則正しく食べる「時間」の改善なども食事療法に含まれます。

●運動療法
運動療法は、それ自体が減量に作用するというよりも、減量した体重を維持することに役立ちます。特別な運動ではなく、日常生活の中で座り過ぎを減らしたり、家事などの身体活動を増やしたりしてエネルギー消費を増やしていくのが継続のコツです。積極的な運動療法は、合併症の進行具合や膝・腰など関節の痛みがないかどうかなどを確認した上で、理学療法士や健康運動指導士など、専門職のサポートの下で行います。

③高度肥満症や合併症に応じて行われる治療
●薬物療法
ライフスタイルの改善を行っても効果が不十分な場合に、医師の判断で併用が検討されます。食欲抑制薬(マジンドール)や肥満症治療薬(セマグルチド)、合併症に応じた薬などが使用されます。

●外科療法
高度肥満症の人で、内科治療で改善が見られず、一定の条件を満たす肥満の場合に限り、胃の一部を切除する外科手術が検討されます。

肥満症の治療は、血液検査やCTスキャンで、内臓脂肪の蓄積の状態や合併症の検査をした後、具体的な治療プランと目標を医師や肥満症生活習慣改善指導士と相談して、治療に取り組みます。行動療法、食事療法、運動療法によるライフスタイルの改善と、薬物療法と外科療法を行います。

自分1人では肥満症の改善が難しくても、医師や専門家がチームとなって治療を行うことで、肥満症とそれに伴う合併症の改善がしやすくなります。まずは相談してみましょう。