のど(咽頭:いんとう、喉頭:こうとう)の痛みの原因には、大きく分けて「感染症(特にウイルス感染)」「のどへの負担」「それ以外の病気」があります。中でも最も多いのは、かぜなどのウイルスによる感染症です。細菌による感染症が原因となることもあります。のどにはウイルスや細菌など病原体の侵入を防ぐ重要な役割を担っており、病原体に対する免疫反応によって炎症が起こると、痛みにつながります。
この記事では、のどの痛みの原因や症状、治し方、家庭でできる対処法、医療機関を受診する目安、予防法について解説します。
のどの痛みは、ウイルスや細菌などへの免疫反応によって、のどに炎症が起こることで生じます。のどには、病原体を体に侵入させないための2つのバリア機能があります。
① 物理的バリア(粘液と線毛運動)
気道(鼻腔・上咽頭・気管・気管支)の粘膜には「線毛」と呼ばれるミクロな毛が隙間なく生えています。鼻や口から入ってきたウイルスなどの病原体や異物は、粘液がキャッチして線毛が大玉送りのように外のほうに運び出し、咳(せき)や痰(たん)、くしゃみと共に体外へ排出しています。
② 生物的バリア(リンパ組織)
のどには、全体をぐるりと防御するようにリンパ組織が発達しています。これらは「ワルダイエルのリンパ輪(咽頭輪)」と呼ばれ、侵入してきた病原体などを認識し、免疫反応にかかわります。
このように、のどには免疫を担うリンパ組織が多く、ウイルスや細菌などと戦う際に免疫反応として炎症を起こしやすいため、痛みにつながりやすいのです。
ボイスクリニックなど声に特化した外来で、のどの病気や声にまつわる疾患、悩みについての治療、指導を行う。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医・耳鼻咽喉科専門医研修指導医、日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医、日本気管食道科学会認定気管食道科専門医、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定喉頭形成手術実施医、日本音声言語医学会認定音声言語認定医、痙攣性発声障害ボトックス施行医。共著に『誤嚥性肺炎を自力で撃退するNo.1療法』(マキノ出版)。
のどの痛みの原因で、最も多いのはかぜなどのウイルス感染です。ウイルスの場合は咳や鼻水など、体の他の症状も同時に出やすく、細菌感染では扁桃が腫れることが多いという特徴があります。また、のどの乾燥や刺激、アレルギー性鼻炎、逆流性食道炎などが原因になることもあります。
のどの痛みを引き起こす代表的な感染症には以下のようなものがあります。
<全世代に多い感染症>
・かぜ(急性上気道炎)
最も多いのどの痛みの原因。様々なウイルスによって起こり、のどの痛みに加えて、鼻水、鼻づまり、咳、発熱などを伴います。
※かぜについて詳しくはこちら
・インフルエンザ
インフルエンザは、突然の発熱、悪寒、頭痛、関節痛、倦怠感などの全身症状が比較的急速に現れるのが特徴です。
※インフルエンザについて詳しくはこちら
・COVID-19(新型コロナウイルス感染症)
発熱、咳、鼻水、のどの痛み、倦怠感など、かぜに似た症状が現れます。症状だけで他の呼吸器感染症と区別することは困難です。
・扁桃炎・咽頭炎
細菌感染が原因の場合と、ウイルス感染が原因の場合があります。強いのどの痛み、飲み込むと痛い、倦怠感などが特徴です。細菌では溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)、インフルエンザ菌(常在菌の1つ。インフルエンザウイルスとは異なる)、肺炎球菌などが原因となり、ウイルスではアデノウイルスなどが原因となります。のどが赤く腫れたり、白い膿が付着したりするのが特徴です。
・口内炎
口内の粘膜に起こる炎症の総称です。頬や唇の裏側、のど、舌など口内のあらゆる粘膜にできます。免疫力が低下している時に発症しやすく、感染症などもきっかけになります。
※口内炎について詳しくはこちら
<子どもに多い感染症>
・溶連菌感染症
溶連菌感染症はA群β溶血性連鎖球菌が原因で、突然39℃前後の高熱が出て、咽頭炎や扁桃炎のような「のどかぜ」の症状が出ます。幼児・学童期に多く発症しますが、大人もかかることがあります。発熱、強いのどの痛み、飲み込む時の痛み、扁桃が赤く腫れる、前頸部(首の前側)のリンパ節が腫れるなどの症状がありますが、咳や鼻水は比較的目立たないことが多いのが特徴です。
※溶連菌感染症について詳しくはこちら
・咽頭結膜熱
咽頭結膜熱(いわゆるプール熱)はアデノウイルスによる感染症で、発熱、咽頭炎(のどの腫れと痛み)、結膜炎の3つの症状が出るのが特徴です。
※咽頭結膜熱について詳しくはこちら
・ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは高熱が出ると同時に、のどの入り口の周りや上あごの辺りに直径1、2mm、大きいものでは5mm程度の、赤みを帯びた小さな水疱ができます。
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・手足口病
手足口病は、手のひら、足の裏や甲、口の中などに小さな水疱状の赤い発疹ができる病気で、生後6カ月から4、5歳の乳幼児に多い感染症です。
※手足口病について詳しくはこちら
<緊急性が高い感染症>
・扁桃周囲膿瘍(のうよう)
扁桃炎が悪化して、扁桃の周りの組織にまで炎症が波及して膿がたまった状態です。強いのどの痛みやリンパの腫れ(特に片側の強い痛み)、唾液が飲み込めない、声がこもる、口が開きにくくなったりするなどの症状があれば、すぐに病院を受診しましょう。
・急性喉頭蓋(こうとうがい)炎、喉頭浮腫(ふしゅ)
のどの奥にある「喉頭蓋」などが炎症により急激に腫れ上がります。気道を塞ぎ、窒息を引き起こす緊急性の高い病気です。水も飲めないほどの強いのどの痛みや、息苦しいなどの症状があれば、すぐに救急外来を受診してください。
声を出した後に痛む、乾燥した環境で悪化するなど、環境の原因が明らかな場合は、のどへの負担で炎症を起こしている可能性が考えられます。
・大声を出す、長時間話す、歌い過ぎなど、のどに負担をかけることをした
・飲酒、喫煙、辛い物を食べた
・固い物を飲み込んで、のどの粘膜に傷がついた
・熱い物を食べたり飲んだりして、やけどをした
・咳や咳払いによる物理的な刺激が加わった
・空気の乾燥
…などが原因になります。
のどの腫瘍の他、アレルギー性鼻炎や逆流性食道炎など、「のど」が直接の原因ではないこともあります。
・のどの腫瘍(しゅよう)
腫瘍には良性と悪性がありますが、痛みが続いている場合は、悪性腫瘍の疑いがあります。悪性腫瘍には、咽頭がんや喉頭がんなどがあります。
・アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、後鼻漏(こうびろう)
鼻づまりで口呼吸になることで、のどが乾燥して痛みや違和感につながったり、花粉などのアレルゲンによって、のどのイガイガ感が出たりすることもあります。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎による後鼻漏(鼻水が喉に流れ込む状態)も、のどの痛みや違和感につながります。
※アレルギー性鼻炎について詳しくはこちら
※副鼻腔炎について詳しくはこちら
・逆流性食道炎・胃食道逆流症(GERD)
胃の内容物が食道へ逆流することによって、のどに違和感や痛み、飲み込みにくさを感じることもあります。
※逆流性食道炎・胃食道逆流症(GERD)について詳しくはこちら
のどの痛みの症状は、原因によって異なります。かぜでは鼻水や咳、発熱などを伴うことが多く、扁桃炎などでは、飲み込む時の強い痛みや扁桃の腫れが見られます。息苦しさや唾液が飲み込めない症状がある場合は、直ちに救急外来を受診してください。
かぜの場合は、のどの痛みだけでなく、鼻や気道の症状(鼻水・鼻づまり・咳など)を伴うことが多いのが特徴です。
<かぜの主な症状>
・のどの奥の痛み、イガイガ、違和感
・鼻水、鼻づまり
・咳、たん、声がれ
・発熱、頭痛、倦怠感…など
のどの炎症が強い場合には、扁桃炎や細菌性咽頭炎などが考えられます。「のどの痛みが強い」「飲み込むと特に痛い」「扁桃が腫れている」などがポイントです。
<扁桃炎や細菌性咽頭炎の主な症状>
・強いのどの痛み
・強い嚥下痛(えんげつう=飲み込む時に痛い)
・扁桃の赤み・腫れ
・扁桃の白い付着物
・発熱
・首のリンパ節の腫れ・痛み
・頭痛
・耳に響く痛み
・強い倦怠感
呼吸や飲み込みに異常がある場合は要注意です。特に急性喉頭蓋炎や喉頭浮腫では、突然の強いのどの痛みと嚥下困難が起こり、よだれや呼吸症状を伴うことがあります。気道を塞ぎ、窒息の危険があるため、直ちに救急外来を受診してください。
<危険を伴うのどの痛みの症状>
・急激に強い痛みになり、あっという間に悪化している
・息苦しい
・のどの奥が大きく腫れている
・呼吸する時にヒューヒューという音がする
・唾液を飲み込めない(よだれが出る)
・声がくぐもる
・水分が摂れない
のどの痛みは、原因となっている病気によって治療法が異なります。かぜなどによる軽いのどの痛みは、休養や水分補給、加湿などのセルフケアや、必要に応じた市販薬で症状を和らげることができます。一方、強い痛みや飲み込みにくさなどがある場合は、医療機関で適切な診断と治療を受けることが大切です。
●のどの痛みの検査
ファイバースコープなどを使ってのどを診察し、必要に応じて採血やCT検査を行うこともあります。
●のどの痛みの治療法
一般的なウイルス性のかぜなどでは、症状を和らげながら自然に回復するのを待つ対症療法が基本です。また、細菌感染が原因の場合は抗菌薬が必要になる場合があります。強い痛みには解熱鎮痛薬などが処方されることもあります。
かぜなどウイルスが原因の場合、抗菌薬は使用しません。しかしながら、細菌感染の疑いがある場合や、肺炎や副鼻腔炎など二次的な細菌感染症を併発している人、重症化リスクが高い人の場合などには処方されることもあります。
●のどの痛みに使われる市販薬の成分
のどの痛みは身近な症状であり、かぜなどの症状だと考えられる場合には、市販薬が有効なことも多くあります。市販薬でのどに効く成分には、主に次のようなものがあります。
成分 |
主な働き |
使用される市販薬のタイプ |
扁桃炎、咽頭炎、口内炎などに伴う腫れや痛みなどを改善する |
のど用内服薬、かぜ薬、口内炎治療薬など |
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炎症・痛み・発熱を抑える |
解熱鎮痛薬、かぜ薬など |
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痛みや発熱を抑える |
解熱鎮痛薬、かぜ薬など |
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殺菌・消毒を目的とする |
トローチ、のどスプレーなど |
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抗炎症作用を期待して使用される |
のど用内服薬、トローチなど |
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アズレンスルホン酸ナトリウム |
のどなどの粘膜の炎症を抑える |
うがい薬、口腔・咽喉用薬など |
痰を出しやすくし、粘膜を修復して線毛運動を助ける |
かぜ薬、咳止め薬など |
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痰を出しやすくし、粘液を増やして線毛運動を助ける |
かぜ薬、咳止め薬など |
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葛根湯(かっこんとう) |
かぜのひき始めに使われる代表的な漢方薬 |
漢方薬 |
桔梗湯(ききょうとう) |
のどの腫れや痛みを鎮め、咳や痰を改善する漢方薬 |
漢方薬 |
<市販薬を使用する際の注意点>
用法・用量を守り、複数のかぜ薬・解熱鎮痛薬などを重ねてのまないようにしましょう。また、持病があったり、妊娠・授乳中、他の薬を服用していたりする場合は薬剤師・登録販売者などに相談してください。
急激に悪化してきた、息苦しい、唾液も飲み込めない、水分が摂れないなどの場合は、急性喉頭蓋炎などの疑いがあるので、直ちに受診してください。その他の場合でも、市販薬を数日のんでも症状が改善しなかったり、1週間程度経っても症状が続いていたりする場合は、医療機関を受診しましょう。
●のどの痛みを和らげる方法
のどが痛い時は、次のようなセルフケアに努めましょう。
・十分に休養する
最も大切なことは、睡眠・休養をとり、体の回復を助けることです。
・こまめに水分を摂る
のどが痛いと、「飲み込むのがつらくて水分を摂りたくない」と考えがちですが、脱水につながるため、無理のない範囲でこまめに水分摂取しましょう。熱くなく、冷たいほうが痛みを感じにくい場合もあります。刺激の少ない飲み物を選びましょう。
・のどを乾燥させない
直接蒸気を吸うスチーム吸入器や、のど用のミストスプレーなどが役立ちます。室内が乾燥している時は、加湿器を使ったりマスクをつけたりして乾燥を防ぎましょう。
・うがいをする
うがいによって、のどの不快感を和らげることができます。
・のどあめ・トローチを利用する
のどあめやトローチは唾液の分泌を促し、のどの乾燥や不快感を和らげてくれます。
・刺激物を避け、のどを休ませる
喫煙、アルコール、刺激の強い食べ物や飲み物など、のどを刺激するものは避けましょう。また、大声や長時間の会話、歌唱なども控えてください。
のどの痛みを防ぐためには感染症を防ぎ、のどに負担をかけない生活を送ることが大切です。手洗いや換気、こまめな水分補給、室内の加湿、十分な休息などを心がけましょう。
・感染症を予防する
感染症を防ぐために、手洗い、うがい、マスク、換気、咳エチケットを行いましょう。予防接種を受けることも大切です。
・のどを乾燥させない
水分補給や適度な加湿を行いましょう。口呼吸をしていると、のどを乾燥させてしまいます。鼻づまりなど、口呼吸につながる病気は治療しましょう。
・のどを酷使せず、刺激物を避ける
大声を出す、長時間の会話、無理な発声は控えましょう。香辛料など、のどへの刺激になる嗜好品にも気をつけましょう。
・禁煙する
たばこは、タールやニコチンなどの有害物質がのどの粘膜を傷つけ、のどの荒れや痛みにつながります。禁煙がすすめられます。
・のどの痛みにつながる他の病気を放置しない
鼻づまりや鼻炎がある人は治療して鼻呼吸をしやすくしたり、寝る直前の食事を避けて胃酸の逆流を防いだりするなど、のどの痛みにつながる他の病気や症状を放置しないようにしましょう。
・十分な休息をとる
免疫力が低下していると、感染症にかかりやすくなったり口内炎などもできやすくなったりします。しっかりと睡眠をとり、生活リズムを整えて体を健康にしておくことが、のどの痛みの予防にも大切です。
その他、のどの白い付着物、首のリンパ節の腫れが主症状の場合は扁桃炎の可能性があります。
激しくうずくような痛み、食事が摂れないほどの痛み、扁桃の腫れ、口を開けられない、くぐもった声、首のリンパ節が大きく腫れている、強い声がれ…などがある場合は、すぐに受診してください。
また、1週間程度経ってものどの痛みが改善しない、徐々に悪化する、血が混じる…などがあれば受診を検討しましょう。他にも、黄色や緑色の膿のような鼻水が出る場合も耳鼻咽喉科を受診してください。
かぜによるのどの痛みの場合は、通常は1週間程度で改善します。1週間以上長引いたり、のどの痛みを繰り返したりする場合は扁桃炎の可能性があります。数週間以上続くのどの痛みは、悪性腫瘍の可能性もあるため、1週間経っても改善しなければ受診しましょう。
発熱、咳、全身症状など感染症全般を診察してもらいたい場合は、内科の受診もすすめられます。
生活習慣では、喫煙や受動喫煙に加え、睡眠不足や過労などによって体調を崩していると、感染症などによるのどの痛みにつながることがあります。また、空気が乾燥した環境では、のどの粘膜が乾燥して刺激を受けやすくなるため、注意が必要です。
職業では、声をよく使う人や歌手などは、日常的にのどに負担がかかるため、のどを痛めやすいといえます。発声方法が悪く、より負担がかかっている場合もあります。他にも、感染症の患者と接する機会が多い仕事や、不特定多数の人と対面する仕事では、感染症にかかる機会も多くなるため、のどの痛みに注意しましょう。
さらに、のど以外の病気が、のどの痛みにつながることもあります。例えば、鼻炎や鼻づまりがあると口呼吸になりやすく、のどが乾燥して痛みが生じることがあります。逆流性食道炎によって、胃酸がのどまで逆流することが、のどの痛みの原因になる場合もあります。こうした病気や症状がある場合は、適切な治療や対処を行うことが大切です。