マグネシウム

骨の形成や心臓、神経の働きに深くかかわる

どんなミネラル?

マグネシウムは健康維持に欠かすことのできない必須ミネラルの1つで、カルシウムやリンと共に骨や歯を形成している栄養素です。体内では主に細胞内に存在し、300種類以上の酵素の働きを助ける補因子として働き、エネルギー産生や代謝、細胞内外のナトリウム、カリウム、カルシウム濃度の調節など様々な活動をサポートしています。

また、筋肉の収縮、神経系の機能維持、心機能の維持などにも不可欠です。さらに、交感神経を抑制する他、カルシウムの作用と拮抗し血管を拡張することで血圧を下げるカルシウム拮抗作用があり、“天然のカルシウム拮抗薬”と呼ばれます。体内に存在するマグネシウムは60~65%が骨に含まれており、不足すると骨から遊離し、このような体に重要な様々な働きに利用されます。

過不足があるとどうなる?

マグネシウムが不足すると、集中力や記憶力の低下、こむら返りなどの筋肉のけいれんが起こることがあります。また、直接的な原因が分かりにくい不調としては、疲労感、倦怠感、食欲不振、気分の落ち込み、イライラ、頭痛、不眠、不整脈などが知られています。長期にわたりマグネシウム不足が続いた場合は、骨粗鬆症や高血圧、心筋梗塞、動脈硬化などのリスクが高まることが様々な研究により示唆されています。アルコールの過剰摂取や利尿剤の長期服用、精神的ストレスなどによっても体内から排出されるマグネシウムの量が増え、不足を招いてしまいやすいので注意が必要です。

一方、マグネシウムは多く摂っても腸管からの吸収量が調整されるため、通常の食事では摂り過ぎによる問題はまず起こりません。ただし、サプリメントや医薬品などで過剰に摂取した場合、下痢や軟便を引き起こすことがあります。マグネシウムは、緩下剤としても利用されています。

どのくらい摂ればいい?

マグネシウムの食事摂取基準は、推奨量が下記のように設定されていますが、現状では男女共にこの数値を満たしておらず、50~100㎎のマグネシウムが毎日不足していると考えられています。現代の日本人はストレスがあったり、アルコールをたくさん摂取したり、精製された白い米やパンを食べる機会が増えたりしているため、多くが潜在的なマグネシウム欠乏状態にあるともいわれます。そのためマグネシウムが多く含まれる食品を知っておき、意識して食事に取り入れる工夫が重要です。特に、ストレスの多い人、肉、加工食品、アルコールを多く摂る人、生活習慣病や骨粗鬆症を予防したい人は、積極的な摂取をおすすめします。

マグネシウムは、種実類(ごまやアーモンド、カシューナッツなど)、海藻類(アオサや青海苔、ワカメなど)、豆類・大豆加工食品(豆腐や納豆、油揚げ、味噌、きなこなど)に多く、煮干しや小麦胚芽、米ぬか、切干大根、ほうれん草などにも含まれます。

●マグネシウムの1日の食事摂取基準(推奨量)

男性

18〜29歳:340㎎
30〜64歳:370㎎
65〜74歳:350㎎
75歳以上:320㎎

女性

18〜29歳:270㎎
30〜64歳:290㎎
65〜74歳:280㎎
75歳以上:260㎎

●耐容上限量(※)

成人:350㎎

※サプリメントおよび薬に含まれるマグネシウムの上限量です。一般的な食品からの上限量は設定されていません。

効率よく摂るポイント

マグネシウムは海水を煮詰めて作った塩や、豆腐を固めるのに使用される「にがり」にも含まれているので、これらを利用するのもおすすめです。確実に補給したい場合は、摂取量に注意しながら栄養補助食品、栄養機能食品、サプリメントなどを利用するのもよいでしょう。

竹谷 豊先生

徳島大学医学部医科栄養学科臨床食管理学 教授

竹谷 豊先生

1992年徳島大学医学部栄養学科卒業、1994年徳島大学医学部・助手、1998年博士(栄養学)取得、1999年米国University of Texas Southwestern、Medical Center at Dallas,Department of Cell Biology、Postdoctoral Fellow(2001年3月まで)、2003年徳島大学医学部・助教授、2014年徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・教授、2015年徳島大学大学院医歯薬学研究部・教授。日本ビタミン学会、日本病態栄養学会、日本腎臓学会など多数所属。