カリウム

体の恒常性の維持と高血圧予防に働くミネラル

どんなミネラル?

カリウムは健康維持に欠かせない必須ミネラルの1つです。体内には体重の約0.2%のカリウムが存在し、そのほとんどは細胞の中の細胞内液に含まれています。カリウムは、細胞内液の浸透圧の維持、心臓などの筋肉の収縮や神経の情報伝達にもかかわる他、体液のpH(ペーハー:酸性・アルカリ性の程度)を一定に保つなど、体の恒常性維持に大切な役割を果たしています。

さらに、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑えて体内の余分なナトリウムの排泄を促し、血圧を下げる作用があります。そのためナトリウム(食塩)の過剰摂取によって起こる高血圧や、高血圧によって起こる動脈硬化や心臓病、脳血管疾患などの予防・改善効果につながります。また、食塩の摂り過ぎによるむくみの改善や、夏場の疲労感の改善にも有効とされています。

過不足があるとどうなる?

糖尿病などで尿量が増えたり利尿剤を長期に使用したりすると、カリウムの排泄量も増えて不足することがあります。また、激しい下痢や嘔吐などでもカリウムは失われてしまいます。その場合は、脱力感、無気力、食欲不振、不整脈などの症状が起こりやすくなります。

余分なカリウムは腎臓で処理された後に尿中に排泄されるため、食事で摂り過ぎても過剰症は起こりません。ただし、腎臓の機能が低下して尿への排泄が難しくなると、血中のカリウム濃度が高くなり過ぎて高カリウム血症を起こす場合があり、疲労感、ふらつき、不整脈などの症状が現れます。命にかかわるケースもあるので、腎臓の持病がある人は、カリウムの摂取量については医師の指示に従うようにしましょう。

どのくらい摂ればいい?

カリウムの食事摂取基準は、目標量が下記のように設定されていますが、現状を見るとほぼ全年代が目標量に達していません。特に20代、30代の若年層の摂取量が少ないのが目立ちます(令和元年「国民健康・栄養調査」の結果より)。2012年に公表されたWHOのガイドラインでは、生活習慣病の予防の観点から男女とも1日当たり3,510㎎の摂取を推奨しています。健康維持のために、目標量を目安とし、意識的な摂取を心がけましょう。特に、食塩の摂取量が多い人、高血圧の予防・改善をしたい人、夏バテしやすい人などは、多めの摂取をおすすめします。

カリウムは刻み昆布、干しひじきなどの海藻類、ほうれん草、たけのこ、アボカドやバナナなどの野菜・果物、ナッツ類、イモ類、豆類、きのこ類に多く含まれます。

●カリウムの1日の食事摂取基準(推奨量)

男性

成人:3,000㎎以上

女性

成人:2,600㎎以上

効率よく摂るポイント

カリウムは魚介類や肉類、乳製品などにも広く含まれていますが、特に豊富に含まれるのは植物性食品です。カリウムは水に溶けやすい性質のため、水にさらしたりゆでたりすると、多くが流出してしまいます。野菜などはできるだけ新鮮な物を選んで生で食べるか、煮汁やスープごと食べられる料理にすると効率よく摂取することができます。果物やドライフルーツはカリウムのよい供給源ですが、血糖値を上げやすい果糖を多く含むので、食べ過ぎには注意しましょう。なお、腎臓の機能が低下している方は、カリウムの摂取量に注意する必要があるので、主治医に相談してください。

竹谷 豊先生

徳島大学医学部医科栄養学科臨床食管理学 教授

竹谷 豊先生

1992年徳島大学医学部栄養学科卒業、1994年徳島大学医学部・助手、1998年博士(栄養学)取得、1999年米国University of Texas Southwestern、Medical Center at Dallas,Department of Cell Biology、Postdoctoral Fellow(2001年3月まで)、2003年徳島大学医学部・助教授、2014年徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・教授、2015年徳島大学大学院医歯薬学研究部・教授。日本ビタミン学会、日本病態栄養学会、日本腎臓学会など多数所属。