ビタミンD
カルシウムの吸収を助け、
強い骨や歯をつくるビタミン
どんなビタミン?
ビタミンDは脂溶性ビタミンの1つで、化学名を『カルシフェロール』といいます。ビタミンDの大きな特徴は、食事で摂取される以外に、紫外線(UV-B)に当たることにより、皮膚でもつくられることです。皮膚で産生されたビタミンDは、体内のビタミンDの80~90%を占めるといわれています。
ビタミンDは体内で、カルシウムのバランスを調節する働きをします。カルシウムは骨の材料となるだけでなく、筋肉や心臓を正常に動かすために重要な成分で、常に血液に乗って体中を巡っています。血中のカルシウム濃度が低下すると、ビタミンDは各種ホルモンと協力して骨からカルシウムを溶かして血液に届け、カルシウム濃度を高めます。また、食事で摂ったカルシウムやリンの吸収を促し、血液中のカルシウムやリンの濃度を高め、骨や歯の健康を維持します。
ビタミンDは、免疫細胞を活性化させたり、過剰な活性化を抑えたりする働きももつことから、免疫機能を調節する栄養素としても注目されています。
過不足があるとどうなる?
ビタミンD欠乏症としては、小児のくる病、成人の骨軟化症が知られています。いずれも血液中のカルシウム濃度が低下し、骨の石灰化が障害されて起こるもので、くる病では成長障害や骨の変形、脊柱の弯曲、関節の腫れなどが、骨軟化症では骨の痛みや筋力低下、脊柱の変形などが生じます。近年は、欠乏症に至るケースは稀ですが、ビタミンDが潜在的に不足している人は少なくないといわれています。ビタミンDの血中濃度が低い状態が続くと、骨密度の低下や骨折のリスクが高まることが指摘されています。
一方、ビタミンDは脂溶性のため、摂り過ぎると体内に蓄積され、過剰症を起こす危険があります。過剰症では血中のカルシウム濃度が高くなり過ぎて高カルシウム血症を招いたり、血管壁や臓器にカルシウムが沈着して動脈硬化や腎機能障害を起こしやすくなったりします。こうした過剰症はビタミンDを含む薬剤やサプリメントを大量に、かつ長期的に摂取した場合に起こるケースがほとんどです。
どのくらい摂ればいい?
ビタミンDの食事摂取基準(目安量)は、成人で1日8.5㎍とされていますが、現状では日本人の多くがこの基準を下回り、特に若い年代での不足傾向が目立ちます。体の機能の維持と将来の骨粗鬆症の予防のために、十分に摂取するよう心がけましょう。特に、皮膚でのビタミンD産生能力が低下する高齢者、骨粗鬆症のリスクが高まる閉経後の女性、日光に当たる機会が少ない人、妊娠中の人や授乳の人は、積極的な摂取がすすめられます。
ビタミンDはサケ、イワシなどの魚介類や、乾燥きくらげ、干しシイタケに多く、牛乳や卵にも含まれます。なお、皮膚でのビタミンD産生のためには、夏の日中の日照なら1日15~20分程度、日に当たれば十分とされています。
ビタミンDは過剰症による健康障害を考慮して、上限量が設定されています 。通常の食事では過剰症の心配は少ないとされていますが、サプリメントを利用している人や病気の治療でビタミンDやカルシウムの含まれた薬剤を使用している人、腎疾患のある人などは注意が必要です。
●ビタミンDの1日の食事摂取基準(推奨量)
成人:8.5㎍(マイクログラム)
●耐容上限量
成人:100㎍
効率よく摂るポイント
ビタミンDは脂溶性のため、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。調理なら、炒める、揚げるといった方法がおすすめです。ビタミンDというと、きのこ類がよく知られていますが、魚介類の方が多く含み、効率よく摂取できます。
きのこ類の場合は、食べる際にひと手間かけるのがポイント。きのこ類に含まれるエルゴステロールという物質は、紫外線に当てるとビタミンDに変わり、栄養が大幅にアップするため、生でも乾燥きのこでも、調理前に2~3時間でも日光に当てるとよいでしょう。栄養補助食品、栄養機能食品、サプリメント、ビタミンD強化食品などを利用する場合は、ビタミンDの含有量を確かめ、過剰摂取にならないように気をつけてください。
徳島大学医学部医科栄養学科臨床食管理学 教授
竹谷 豊先生
1992年徳島大学医学部栄養学科卒業、1994年徳島大学医学部・助手、1998年博士(栄養学)取得、1999年米国University of Texas Southwestern、Medical Center at Dallas,Department of Cell Biology、Postdoctoral Fellow(2001年3月まで)、2003年徳島大学医学部・助教授、2014年徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・教授、2015年徳島大学大学院医歯薬学研究部・教授。日本ビタミン学会、日本病態栄養学会、日本腎臓学会など多数所属。