ビタミンE

強い抗酸化作用をもつ、
老化を防ぐビタミン

どんなビタミン?

ビタミンEは脂溶性ビタミンの1つで、化学名を『トコフェロール』といいます。ビタミンEには強力な抗酸化作用があり、活性酸素の害から体を守る働きをします。活性酸素は通常の呼吸でも発生し、体内では細菌やウイルスを撃退する役目をしていますが、増え過ぎると正常な細胞も酸化させ、細胞の老化を進めてしまいます。

ビタミンEは細胞膜に多く含まれる不飽和脂肪酸が酸化して有害な過酸化脂質に変わるのを防ぎ、細胞や血管の健康維持、老化予防に力を発揮します。血中のLDLコレステロールの酸化を防ぐ働きにより、動脈硬化や心疾患、脳卒中などの生活習慣病を予防する効果も期待されています。さらにビタミンEには、血液の循環をスムーズにする働きや、ホルモンバランスを整える働きもあり、血行不良が原因で起こる肩こりや冷えといった体の不調の改善、月経不順や更年期障害など女性特有のトラブルの改善、妊活のサポートなどにも役立つとされています。

過不足があるとどうなる?

ビタミンEはあらゆる組織の細胞膜に分布しているため欠乏症は起こりにくいとされていますが、胆汁の分泌障害などによる脂肪吸収障害や未熟児、遺伝性疾患(家族性ビタミンE単独欠損症)などの特殊な状況では、溶血性貧血や運動失調などの神経症状を起こすことがあります。

過剰症としては、大量摂取すると血が止まりにくくなることが知られていますが、ビタミンEは脂溶性ビタミンの中では比較的体内に蓄積されにくいことから、通常の食事では過剰症の心配はありません。ただし、ビタミンEを含む薬剤やサプリメントを摂り過ぎた場合、健康障害が起こる可能性が指摘されています。最近では、サプリメントなどで長期的に大量に摂取した場合、骨粗鬆症のリスクが高まる、出血性の脳卒中による死亡リスクが高まるといった報告も出され、過剰摂取に対する警鐘となっています。

どのくらい摂ればいい?

ビタミンEの食事摂取基準(目安量)は、成人男性で1日に6.0〜7.0㎎、成人女性で5.0〜6.5㎎とされ、現状ではほとんどの人がこの量を満たしています。ただし、紫外線、大気汚染、食品添加物、精神的ストレスなどにより活性酸素の害にさらされる機会の多い現代人にとって、ビタミンEは多めの摂取を心がけたい栄養素といえるでしょう。

ビタミンEは綿花油、サフラワー油、ひまわり油などの植物油や、アーモンドやヘーゼルナッツなどのナッツ類、小麦胚芽、ブロッコリーやかぼちゃなどの緑黄色野菜に多く含まれます。ビタミンEは過剰症による健康障害を考慮して上限量が設定されています。通常の食事では心配ありませんが、サプリメントを利用している人は注意が必要です。

●ビタミンEの1日の食事摂取基準(推奨量)

男性

18〜49歳:6.0㎎
50〜74歳:7.0㎎
75歳以上:6.5㎎

女性

18〜29歳:5.0㎎
30〜49歳:5.5㎎
50〜64歳:6.0㎎
65歳以上:6.5㎎
妊婦:6.5㎎
授乳婦:7.0㎎

●耐容上限量

男性

18〜29歳:850㎎
30〜49歳:900㎎
50〜74歳:850㎎
75歳以上:750㎎

女性

18〜29歳:650㎎
30〜64歳:700㎎
65歳以上:650㎎

効率よく摂るポイント

ビタミンEは脂溶性のため、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。調理なら、炒める、揚げるといった方法がおすすめです。植物油にはビタミンEが多く含まれますが、酸化しやすい欠点があるので早めに使い切るようにしましょう。

ビタミンEはビタミンCを一緒に摂ると、相乗効果で抗酸化効果がアップします。β-カロテンやミネラルのセレンなども同じく抗酸化作用をもつので、一緒に摂るとよいでしょう。栄養補助食品やサプリメントなどを利用する場合は、ビタミンEの含有量を確かめ、過剰摂取にならないように気をつけてください。

竹谷 豊先生

徳島大学医学部医科栄養学科臨床食管理学 教授

竹谷 豊先生

1992年徳島大学医学部栄養学科卒業、1994年徳島大学医学部・助手、1998年博士(栄養学)取得、1999年米国University of Texas Southwestern、Medical Center at Dallas,Department of Cell Biology、Postdoctoral Fellow(2001年3月まで)、2003年徳島大学医学部・助教授、2014年徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・教授、2015年徳島大学大学院医歯薬学研究部・教授。日本ビタミン学会、日本病態栄養学会、日本腎臓学会など多数所属。