パントテン酸

ストレスを感じる人におすすめのビタミン

どんなビタミン?

パントテン酸は水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種で、『ビタミンB5』とも呼ばれます。パントテン酸の名は「いたるところに存在する酸」という意味のギリシャ語に由来し、その名のとおり、植物性、動物性を問わず幅広い食品に含まれています。

パントテン酸はコエンザイムA(CoA)という補酵素をつくる成分となった後、様々な代謝にかかわります。中でも、脂質や糖質のエネルギー代謝には不可欠な成分です。コレステロールからつくられる抗ストレス作用をもつ副腎皮質ホルモンの合成にも関与し、心身の健康を根底で支える大切なビタミンといえます。

過不足があるとどうなる?

パントテン酸は様々な食品に含まれているため、通常の食生活で欠乏が起こることはなく、これまでにはっきりした欠乏症の報告はありません。ただし、極端に偏った食事で栄養失調状態になると、成長障害や手足の感覚異常、疲労感、食欲不振、不眠など、パントテン酸欠乏が疑われる症状が現れることがあります。

どのくらい摂ればいい?

パントテン酸の食事摂取基準(目安量)は成人で1日5~6㎎とされ、現状は男女共にこれを満たす量が摂取できています。パントテン酸は体にためておけないため、毎日コンスタントに補給することが大切です。特に、疲れを感じやすい人やストレスの多い人、かぜをひきやすい人、妊娠中や授乳中の人などは、多めに摂るよう心がけましょう。

パントテン酸が多く含まれる食品は、納豆、レバー、肉類、魚介類、きのこ類、卵黄、牛乳などです。パントテン酸は多く摂っても不要な分は尿中に排出されるため、過剰症の心配はまずありません。

●パントテン酸の1日の食事摂取基準(推奨量)

男性

18〜49歳:5㎎
50歳以上:6㎎

女性

18歳以上:5㎎
妊婦:5㎎
授乳婦:6㎎

効率よく摂るポイント

パントテン酸は熱や酸、アルカリで分解されやすく、食品が加工される過程で多くが失われてしまいます。そのためインスタント食品や冷凍食品、缶詰などからの補給はほとんど期待できません。新鮮な食品を選び、家庭料理で、しかもできるだけシンプルな調理方法にすると、効率よく摂取することができます。確実に補給したい場合は、栄養補助食品、栄養機能食品、サプリメントなどを利用するのもよいでしょう。ストレスへの抵抗力をつけるためには、ビタミンB1・B2・B6など他のビタミンB群や、ビタミンC、マグネシウム、タンパク質なども必要です。

柴田克己先生

甲南女子大学 医療栄養学部 医療栄養学科 教授

柴田克己先生

農学博士。京都大学大学院農学研究科食品工学専攻博士課程修了。ビタミン・バイオファクター協会理事、日本トリプトファン研究会会長、文部科学省学校給食摂取基準策定に関する調査研究者協力会議委員、日本人の食事摂取基準策定委員会委員(2005年版、2010年版、2015年版、2020年版)、滋賀県食の安全・安心審議会会長などを歴任。日本ビタミン学会、日本栄養・食糧学会などに所属。滋賀県立大学名誉教授。ビタミンB研究委員会委員長。