ナトリウム

体の水分量やミネラルバランスの調整役

どんなミネラル?

ナトリウムは健康維持に欠かせない必須ミネラルの1つで、体の水分(体液)の恒常性を維持するために重要な栄養素です。主に食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取され、小腸で吸収されます。体内のナトリウム量を調節しているのは腎臓で、過剰分は尿中へ排泄されます。

体内には体重の0.1~0.2%のナトリウムが存在し、細胞外液(血漿、リンパ液、間質液など細胞を取り囲む液体)に多く含まれています。ナトリウムは、細胞外液の浸透圧を調整すると共に、体内の水分量を常に一定に保つ働きをします。その他、pH(ペーハー:酸性・アルカリ性の程度)の調整、筋肉の収縮、神経の情報伝達、栄養素の吸収・輸送などにも関与し、胃や腸、すい臓などの消化液の成分にもなっています。

過不足があるとどうなる?

ナトリウムは通常の食生活を送っている限り欠乏することはまずありません。しかし、多量の発汗や激しい下痢・嘔吐などによって体の水分が失われると、同時にナトリウムも失われ、疲労感や食欲不振が生じることがあります。血中のナトリウム濃度が極度に低下した場合は、筋肉のけいれんや激しい頭痛などの症状が現れ、さらにショック状態に陥り、死に至るケースもあります。近年、熱中症が問題になっていますが、熱中症対策としては水分だけでなく適度な食塩の摂取が必要です。

一方、ナトリウムを摂り過ぎると体液のバランスが崩れ、むくみ、口の渇きなどが現れます。また、血中のナトリウム濃度が高くなると、それを薄めようとして血管内に水分を引き込むため、血液量が増加して、血圧が上昇します。そのためナトリウムの過剰摂取は、高血圧や動脈硬化を進め、心臓病や脳血管疾患の発症リスクを高めることにつながります。また、ナトリウムの摂り過ぎにより、胃がん、食道がんのリスクが高くなるという報告もあります。

どのくらい摂ればいい?

ナトリウムの食事摂取基準は、目標量が下記のように設定されています。しかし現状を見ると、日本人の1日当たりの平均塩分摂取量は男性約10.9g、女性約9.3gで、依然として摂り過ぎの傾向が続いています(令和元年「国民健康・栄養調査」の結果より)。本来、健康維持に必要な摂取量は1日当たり1.3~2g程度とされており、できるだけ摂取を抑えたい栄養素といえます。ナトリウムはハム、ウインナー、練り製品、インスタントラーメンなどの加工食品、梅干し、漬物、イカ塩辛などの塩蔵品、しょうゆ、みそなどの調味料に多く含まれます。また、外食や市販の総菜は塩分を多く使用する傾向があるので注意が必要です。

●ナトリウムの1日の食事摂取基準(推奨量)

男性

成人:食塩相当量7.5g未満(※)

女性

成人:食塩相当量6.5g未満

高血圧および慢性腎臓病の重症化予防のためには、男女共に6.0g未満

※食塩相当量はナトリウム量に2.54を掛けて算出します。
例)ナトリウム量600㎎の場合:0.6×2.54≒1.5g(食塩相当量)

適切に摂るためのポイント

日頃から塩分量を意識した食事をし、薄味を心がけましょう。食塩は汁物にも多く含まれるので、ラーメンなど麺類を食べる時は汁を半分残すなどの工夫をしましょう。日本人はしょうゆ、みそ、塩などの調味料からのナトリウム摂取が多いため、減塩調味料を利用するのも有効です。また、カリウムや食物繊維を多く含む野菜や果物、海藻類、豆類、イモ類を一緒に摂ることで、ナトリウムの排泄を促進することができます。ただし、腎臓の機能が低下している方は、カリウムの摂取量に注意する必要があるので、主治医に相談してください。

竹谷 豊先生

徳島大学医学部医科栄養学科臨床食管理学 教授

竹谷 豊先生

1992年徳島大学医学部栄養学科卒業、1994年徳島大学医学部・助手、1998年博士(栄養学)取得、1999年米国University of Texas Southwestern、Medical Center at Dallas,Department of Cell Biology、Postdoctoral Fellow(2001年3月まで)、2003年徳島大学医学部・助教授、2014年徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・教授、2015年徳島大学大学院医歯薬学研究部・教授。日本ビタミン学会、日本病態栄養学会、日本腎臓学会など多数所属。